父は空 母は大地

150年前、
土地を追われることになったアメリカ先住民・シアトル首長が、
ときの大統領に伝えてほしいと語った言葉――“Chief Seattle's Speech”。

ワシントンの大首長へ そして 未来に生きる すべての兄弟たちへ

1858年アメリカの第14代大統領
フランクリン・ピアスはインディアンたちの土地を買収し
居留地をあたえると申し出た。
1855年インディアンの首長シアトルはこの条約に署名。


これは シアトル首長が大統領に宛てた手紙である。


はるかな空は 涙をぬぐい
きょうは 美しく晴れた。
あしたは 雲が大地をおおうだろう。
けれど わたしの言葉は
星のように変わらない。

ワシントンの大首長が
土地を買いたいといってきた。

どうしたら
空が買えるというのだろう?
そして 大地を。
わたしには わからない。
風の匂いや 水のきらめきを
あなたはいったい
どうやって買おうというのだろう?

すべて この地上にあるものは
わたしたちにとって 神聖なもの。
松の葉の いっぽん いっぽん
岸辺の砂の ひとつぶ ひとつぶ
深い森を満たす霧や
草原になびく草の葉
葉かげで羽音を立てる
虫の一匹一匹にいたるまで
すべては
わたしたちの遠い記憶の中で
神聖に輝くもの。

わたしの体に 血がめぐるように
木々のなかを 樹液が流れている。
わたしは この大地の一部で
大地は わたし自身なのだ。


《中略》


わたしが立っている この大地は
わたしの祖父や祖母たちの灰からできている。
大地はわたしたちの命によって 豊かなのだ。

それなのに 白い人は
母なる大地を 父なる空を
まるで 羊か 光るビーズ玉のように
売り買いしようとする。
大地を むさぼりつくし
後には 砂漠しか残さない。


《中略》


わたしには あなたがたの望むものがわからない。

バッファローが殺しつくされてしまったら
野生の馬がすべて飼いならされてしまったら
いったい どうなってしまうのだろう?
聖なる森の奥深くまで
人間の匂いがたちこめたとき
いったい なにが起こるのだろう?

獣たちが いなかったら
人間は いったい何なのだろう?
獣たちが すべて消えてしまったら
深い魂のさみしさから
人間も死んでしまうだろう。

大地は わたしたちに属しているのではない。
わたしたちが 大地に属しているのだ。



 《中略》



どうか 白い人よ
わたしたちが 大切にしたように
この大地を 大切にしてほしい。
美しい大地の思い出を
受け取ったときのままの姿で
心に 刻みつけておいてほしい。
そして あなたの子どもの
そのまた 子どもたちのために
この大地を守りつづけ
わたしたちが愛したように
愛してほしい。 いつまでも。

どうか いつまでも。

「父は空 母は大地
 インディアンからの手紙
 FATHER SKY, MOTHER EARTH」
寮 美千子 編・訳 篠崎正喜 画
 パロル舎 刊
『父は空 母は大地』は、1854年、アメリカ先住民の首長シアトルが、アメリカ14代大統領フランクリン・ピアスに向けて行ったスピーチを元にしてつくられ絵本です。スピーチの内容には、いくつかの異なるバージョンが伝わっているようです。それらを収集し切り貼りして、1995年寮美千子氏が、編集し翻訳されて出版されたものです。ですから、上記の内容そのままの「原典」は存在し無いと言うことです。

全文については寮 美千子さんのHPをご覧ください。
http://ryomichico.net/seattle.html#about


その元となったいくつかの原文他の一つの中には、土地を二束三文で買いたたき、先住民を追いやった「白い人」たちへの恨みの言葉もあったそうです。
寮氏が採用したのは、むしろ、彼らがどのようにその土地を愛し、豊かな恵みに感謝して暮らしてきたかという部分です。
「そもそも大地とは、売ったり買ったりできるものなのか? 人間と大地との、願わしいつきあいかたが、生きるということがどういうことなのか、その根本が、そこには描かれています。」


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