自然のおもしろクイズ
回答編\
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おもしろクイズの解答と解説について
内容については私なりに様々な書籍やネット上の資料を調べて書いています。しかし、本にしろネット上の資料にしろ必ずしも科学的に正しいとは限りません。また、書かれた時点では通説とされていても、その後より妥当性のある説が発表されいている可能性があります。
私が調べた時点でも、異なる説が見つかる場合が多いです。その場合、私の判断で確からしい内容を正解として書かせてもらっています。私自身は専門家ではないので、所詮素人判断といえます。
このクイズを参考して色々と判断されることはかまいませんが、それぞれの判断と責任でご利用ください。


QUIZ29  の不思議な性質


(1)水はどの状態の時が一番重い(密度が高い)のでしょう
a.水蒸気(気体)の時
b.水(液体)の時
c.氷(固体)の時

解答:b.水(液体)の時
解説:通常ほとんどの物質の重さ(密度:g/cm3)は気体<液体<固体となります。ところが、水は液体の水よりも固体である氷の方が重い(密度が高い)のです。このような性質をもつ物質はとても少ないわけです。(水だけがこのような性質を持つという解説を見かけますが、誤りです。例えば、ゲルマニウム、シリコン、アンチモン、ビスマス、ガリウムなどがあります。ただし、水以外は自然界にはそんなにたくさん存在しません)
もしも、水よりも氷の方が重かったら(密度が高かったら)どうなるでしょう。
海の水も池の水も底から凍ってゆく(少なくとも氷になると沈んでゆく)でしょう。しかも底には太陽の光は届きにくいので、溶けにくいから・・・さあ大変。池では冬になるとは魚たちは段々上にしか住めなくなって・・・ついには氷の上にということになってしまいます。生命を産み出した海でも・・・。そもそも人間は存在しないことになってしまったでしょう。

 もしも、氷が水より重いと起こることを考えてみると面白いですよ。

水の不思議問題(2)へ

(2)水が一番重い(密度が高い)のは何度の時?
a.絶対零度( -273.15℃)の時
b.0℃の時
c.4℃の時
d.100℃の時

解答:c.4℃の時
解説:物質の温度は、物質の熱振動が作り出します。従って、ほとんどの物質はその温度が下がるにつれて運動量が減り、必然的に密度が高く(=重く)なります。ところが、固体である氷が水より密度が低い(=軽い)のでまずこの原則が崩れます。それなら、0℃の時が一番密度が高い(重い)のかというとそうでもない。不思議なことに水は4℃の時にもっとも密度が高い(重い)のですそ。おかげで、冬で池全体が凍っているよう見えても、池の底は4℃で、魚などが生きてゆけるのです。
この性質は不思議で、どうしてそうなるのかわからないのだという説明がされていることがありますが、その説明はとても難解ですが、一応解明されています。(この難解な説明に挑戦してみようという人は最後に水素結合の解説に挑戦しましょう。)

水の不思議問題(3)へ

(3)氷を冷やしてゆくと膨張するの?縮小するの?
a.膨張する
b.縮小する
c.温度では変化しない

解答:b.縮小する
解説:ほとんどの人が、膨張すると考えたのではないでしょうか。問題(1)では、水より氷が軽いことは経験的に知っていますし、容器に入れた水が膨張して、しばしば容器を破裂してしまうことがあることを知っているからです。でも実は、これは液体から固体(氷)に変化するときに起こることで、氷(個体)になってしまうと普通の物質のように、冷えると縮小(暖めると膨張)するのです。
 この性格が、諏訪湖の御神渡り(おみわたり)を起こします。

御神渡りの不思議については

水の不思議問題(4)へ

(4)圧力をかけると水の融点(固体←→液体の時の温度)はどうなるの
a.下がる
b.上がる
c.圧力と融点は関係ない

解答:a.下がる
解説:通常の物質では圧力をかけると融点はあがります。すなわち押しつぶされて固体になりやすくなるのです。ところが、水は違います。(1)の問題のからもわかるように氷(固体)になると体積が大きくなってしまうので。圧力をかけると凍りにくくなるのです。
ただし、とてつもない圧力をかけると事態は変わってきて逆に融点が上がり出すのですが・・・その解説は次の問題で。

水の不思議問題(5)へ

(5)一番冷たい水(液体)は何度?
a.1℃〜0℃の間
b.0℃
c.0℃〜−1℃の間
d.−22℃

解答:d.−22℃
解説:水の融点は0℃ですから、0℃の時に氷と水があるので、ふつうに考えるとbの0℃の時が正解になるでしょう。ところろが、圧力がかかると融点が下がるのです。1000気圧で−8℃になります。さらに圧力を加えていくと2115気圧で融点が−22℃になってしまいます。
ところが、これ以上圧力を加えると氷の結晶の仕方に変化が生じるて、逆に融点が上がり始めるので・・・−22℃がもっとも冷たい水と言うことになります。

2115気圧を超えて圧力を加えたときの融点については

水の不思議問題(6)へ

 
(6)水が他の物質と同じようなら常温では液体じゃないって本当?
a.その通り気体になるはず
b.そう、固体になるでしょう
c.そんなこと無い液体である

解答:a.その通り気体になるはず
解説: 似たような物質から類推すると、−100℃で凍り−80℃で沸騰(ふっとう)するはずです。常温では気体になることになります。もしそうなっていれば・・・現在のような地球は存在しませんね。

この類推の根拠については

水の不思議問題(7)へ


(7)次の物質の中でもっとも熱しにくくさめにくいものは?
a.アルミニウム(固体)
b.鉄(固体)
c.炭素(固体)
d.氷(固体)
e.水(液体)
f.液体アンモニア(液体)
g.酢酸(液体)
h.水銀(液体)

解答:f.液体アンモニア(液体)
解説:ただし、液体アンモニアは天然には有りませんからそれをのぞくと水(液体)がもっとも熱しにくくさめにくい物質なのです。ですから水の有るところは・・・温度の変化がゆるやかになります。

比熱(1gの物質を1℃あげるのに必要なカロリー数)という数値があります。これで比べてみましょう。それぞれの比熱は、厳密には温度によって微妙に異なりますのであくまでおおざっぱな数字と考えてください。

a.アルミニウム(固体)0.21〜0.244
e.水(液体) 
1.0
b.鉄(固体) 0.11〜0.12
f.液体アンモニア(液体)
1.1
c.炭素(固体)
0.15〜0.22
g.酢酸(液体)
0.47〜0.51
d.氷(固体)
0.51
h.水銀(液体)
0.03


固体でも液体でも水の比熱は他の物質に比べて格段に大きいのです。液体アンモニアは唯一の例外のようです。
なぜこんなにも水は特別に比熱が高いのでしょう。
仕組みが知りたい人は水素結合の解説に挑戦しましょう。

水の不思議問題(8)へ

(8)雨粒の形は
a.丸い粒状
b.細長い棒状
c.先のとがった菱形

解答:a.丸い粒状(解答を修正しました (^^ゞ
解説:「そんなこと無い、私は棒状で降っている雨を見た!」とか「棒状で降っている雨の写真がある」という人いませんか。それは、よく見ていると思います。確かに降っている雨は落下方向に棒状に降っているように「見えます」。でも、もし雨が棒状に降っているとすると・・・・横風でも吹こうものなら・・・・水平に棒状の雨やら、風が巻いているところではあっちこっち向いている雨が有るはずです。
棒状に見えるのは、ある程度の時間に粒状の雨を移動している状態を見ているからです。写真もシャッタースピードがあるので・・・.。野球のボールも横から見ると線上に見えてしまいます。でも、バッターボックスに立ってみると○に見えます。そうです、進行方向から見るとちゃんと○が確認できます。雨も、見上げる状態でしっかり見ると、一つ一つの粒々を見ることができます。今度挑戦してみましょう。
ちなみに、雨粒が空気抵抗が有るにもかかわらず球に近い形を保っていられるのは・・・表面張力が非常に大きいせいです。
なぜ、水の表面張力が大きいのかは最後に・・・水素結合の解説に挑戦しましょう。

水の不思議問題(9)へ

(9)10m以上もある高い木の上まで水が上がるのは何故。
a.葉っぱの蒸散作用で上に水分が無くなるので・・・吸い上げる力が働く
b.根っこのところで浸透圧の違いで水を吸い込み・・・その力で押し上げている
c.毛細管現象で上がってゆく
d.水を運ぶ虫と共生している
e.水には高いところに行きたがる性質がある

解答:c.毛細管現象で上がってゆく
解説:実のところ木の上に水が上がるのはいろんな力が働いています。aの蒸散作用による吸い上げる力ももちろんあります。ただ吸い上げる力は最大でも真空状態まで(それは不可能)です。その場合でも・・・1気圧分しか吸い上げられないので・・・10mが限界。bの根の部分から押し上げる力もあります。でもこれも、力の源泉は浸透圧ですから。これで10mも押し上げるだけの力は無い・・・。両方の合わせ技で、10m位は上がるのだろうか?どうも無理のようです。でも樹高10m
を遙かに超える木が存在しています。
この不思議を解決するのが、毛細管現象です。毛細管現象はその通り道が細いほど高く上がりますし、液体の表面張力が大きいほど、高くあがります。従って、水の表面張力が非常に大きいことが高い木が生きてゆける条件になっている。

水の不思議問題(10)へ

(10)水の粘度(粘りけ)は圧力を加えるとどうなるの
a.増加する
b.減少する
c.変化しない

解答:b.減少する
解説:ちなみに、粘度(粘りけ)は分子の形に影響されると考えられます。色々な原子がつながって枝分かれしているような分子は、この枝が引っかかって粘度が生じると考えられる。この点、水は比較的単純な形(長い枝が無いという意味です)なのでそんなに粘度は高くありません。(ただ、これも形状から想定される粘度よりかなり大きいのですが)
通常粘度は、分子と分子の摩擦によって起こるので圧力を加えると増加することになります。ところが水の場合は粘度が減少するのです。これはどうしてでしょう。この仕組みが知りたい人は水素結合の解説に挑戦しましょう。

水の不思議問題(11)へ

(11)より多くのものを溶かすことができるのはどれ
a.水
b.アルコール
c.エーテル

解答:a.水
解説:なんとなくアルコールやエーテルの方がよく溶かすイメージを持っている人が多いと思います。実のところ有機物に限ればアルコールが一番よく溶かします。ところが、無機物については水が圧倒的によく溶かします。(アルコールやエーテルには溶けないものが多いのです)。水は無機物も有機物もコンスタントに溶かすので、全体的には一番なのです。
また、種類の多さだけではなく、溶かし込む量についても非常に優れています。
 水の溶解力がず抜けて高いことが、陸地の多様な物質を溶かし込み海へ運ぶことになっています。海水には塩だけでなく、金や銀などホントに多種多様なものが溶け込んでいるのです。

290種の化合物についての集計です

無機化合物数
183種のうち
有機化合物数
107種のうち
両方の合計
290種のうち
水に溶けるもの 89(49%)52(49%)141(49%)
アルコールに溶けるもの40(22%)84(79%)124(43%)
エーテルに溶けるもの20(11%)65(61%) 85(29%)


水の不思議問題(12)へ

(12)電子レンジでよく暖まるのはどんなもの
a.電子をよくキャッチできるように金属が含まれているもの
b.電子をよくキャッチできるように炭素の含まれたもの
c.電子をよくキャッチできるように水を含んだもの
d.電子をよくキャッチできるようにできるだけ丸いもの
e.電子をよくキャッチできるようにできるだけでこぼこしたもの

解答:c.電子をよくキャッチできるように水を含んだもの
解説:水や水が含まれたものが、よく暖まります。水以外のものでも暖まるのですが
金属や炭素ではだめですね。そして、水が一番よく暖まるようです。
暖める原理は、電子で分子を揺するのですが・・・水の分子はとても揺すぶられやすい構造をしているのです。

仕組みが知りたい人は水素結合の解説に挑戦しましょう。

水の不思議問題(X)へ


(特別X)スケートはなぜ滑るの
a.氷は硬くてツルツルだから
b.摩擦(まさつ)熱で氷が溶けた水が潤滑剤(じゅんかつざい)の役目をするから
c.スケートの乗った圧力で氷が溶けた水が潤滑剤(じゅんかつざい)の役目をするから
d.氷には未知のパワーが有ってものを浮き上がらせるから

解答:(^_^;) 実はよく分からない(確定的なことが言えない)
解説:硬いということでは例えば氷などよりガラスの方が硬いし板ガラスなら氷よりツルツルです。でも氷のようには滑りません。硬いもの同士で摩擦(まさつ)が生じてるのでそんなには滑りません。
 ということで、氷が溶けて潤滑剤の役割をするからよく滑ると考えられています。

でも、この解答は間違いかもしれません。bの摩擦熱でと言う説も有りますし、第3の説もあります。 そこで、この原理の説明と異論を読みたい人はスケートは何故滑るのか?へ


御神渡り(おみわたり)の不思議

氷も、冷えると縮小、暖めると膨張するという性質が・・・諏訪湖などで起こる御神渡り(おみわたり)を引き起こします。これは、真冬、湖が全面結氷し更に寒気が襲ってくると、 湖面に亀裂が入り轟音とともに氷がせり上がる現象です。この現象の説明は、「氷は冷えると膨張する」とする考え(誤解)から、夜間の冷え込みのために盛り上がると考えられてしまい勝ちです。でも、氷は冷えると縮小するのですから、この説明は事実と違います。
では、本当のメカニズムはというと。
@氷点下の日が続き、そして氷点下10度前後の日が何日にもわたると、湖の全面が凍結。すると、水面からの蒸発がなくなり、空気へのエネルギー供給が途絶えるため気温はさらに低下して氷は次第に厚さを増して行きます。
A 夜になって更に冷え込むと「氷が収縮して」湖の氷の面積が不足します。
B そのため氷は音を立てて割れ(引き裂かれて)、細い水面ができますが、(とても寒いので)すぐに弱い薄い氷が張ります。
C翌日気温が上昇すると、逆に氷が膨張し表面積が過大になるため、そのエネルギーが薄くて弱い氷の部分に集中し、大きな音を立てて数qにわたって立ち上がるのです。
(※気温が1度上昇すると1qの氷板につき5p伸びます。5度上昇すると10qの氷板は2mも伸びることになります。)

(おまけ)さらに一度御神渡りができると、再び水面が現われるので夜には氷が張ります。そして日中になると湖全体の氷が膨張するので、割れ目に張った氷は押し上げられます。最低気温がマイナス10℃以下の寒い日が続いている間は、割れ目の氷は次々と盛り上がり成長してゆくのです。

諏訪湖でのこの現象を、諏訪大社上社の男神が下社の女神に会いに行くための道であると考えて、御神渡り(おみわたり)と称して来たのですが、同じような現象は寒冷地の湖なら他でも起こりそうです。寒いところと言えば・・・・日本では北海道。ということで、北海道にはいくつかの湖でこの現象が現れるようです。特に屈斜路湖は周囲57qもあり日本一の御神渡り(諏訪湖以外でのこの現象をこのように言っていいのかは疑問がありますが)が出来ます。

《参考》
諏訪湖の御神渡りの解説と画像。
http://www.city.suwa.nagano.jp/scm/dat/special/omiwatari/index.htm
屈斜路湖の御神渡りの画像
http://www1.ocn.ne.jp/~kussie/omisoku.htm
21世紀の技術で「御神渡り」を科学する
http://www.seis.nagoya-u.ac.jp/~kimata/omiwatari.html
2115気圧を超えて圧力を加えたときの融点は

3000気圧で通常の氷の結晶がなくなり・・・−18.4℃、3530気圧でさらに新しい結晶の氷が現れだして−17℃、4000気圧でこの結晶の氷だけになって(もちろん液体の水もある)−13.7℃、さらに6380気圧でさらに次の段階の結晶が生じるようになって・・・0.16℃、8000気圧になるとこの結晶の氷だけと水になって・・・12.8℃、以下はどんどん圧力が上がるに従って融点が。上がってゆきます。12000気圧で・・・37.9℃、16000気圧で57.2℃、20000気圧で何と73.6℃にもなってしまいます。(こんな高圧の中で人は生存不能ですが、もしこんな氷にさわったらやけどをしてしまう・・・。)さらに圧力をかけるとさらに融点は上がるようなのですが・・もう資料が見つかりません。(汗)

水が本来なら気体の状態であるというのは

化学の教科書の見開きに書いてあった「周期律表」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%A8%E6%9C%9F%E8%A1%A8を思い出してください。あの表で縦に並ぶ元素はよく似た性質を示します。水は水素(H)と酸素(O)の化合物(H2O)ですね。酸素(O)の上下に並んでいる元素はイオウ(S)やセレン(Se)やテルル(Te)です。これと水素(H)の化合物はよく似た性質を示すはずです。ところが硫化水素(H2S)は融点−82.5℃、沸点−62℃です。セレン化水素(H2Se)は融点−66.0℃、沸点−42℃です。テルル化水素(H2Te)は融点−55.0℃、沸点0℃です。一般に分子が重いほど融点も沸点も高くなります。分子同士が引き合う力が重いほど強くなるので、固体→液体→気体になりにくくなるからです。上記3つの化合物は硫化水素が分子量34,セレン化水素81,テルル化水素130ですからこの原則に従っていると言えます。ところが、水の分子量は最小の18ですから・・・この原則に従えば融点−100℃、沸点−80℃くらいになるのが妥当になるというわけです。


分子量
融点
沸点
水(H2O)
18
0℃
(-100℃)
100℃
(-80℃)
硫化水素(H2S)
34
−82.5℃
−62℃
セレン化水素(H2Se)
81
−66.0℃
−42℃
テルル化水素(H2Te)
130
−55.0℃
0℃

 実は、私たちの身近で、常温で固体・液体・気体の3つの状態を示す物質はきわめてまれです。ありふれた物質である水は氷(固体)と水(液体)と水蒸気(気体)の状態を普通に見ることができることだけでも非凡です。
 ある理科表にでている357種類の物質中、水に近い融点(ゆうてん)・沸点(ふってん)を示すのは、酢酸(CH3COOH分子量 60.1)、ベンゾール(C6H6. 分子量78.11)、ギ酸、シクロヘキサンの4種類だけでした。それぞれ・・・酢酸は融点16.7℃沸点118.5℃、ベンゾールは融点5.48℃沸点80.2℃、ギ酸は融点8.0℃沸点100℃、シクロヘキサンは融点6.0℃沸点80℃です。

ちなみに、ヘキサンは融点−94.3℃で沸点69.0℃、メチルアルコールは融点−97.8℃沸点64.6℃、グリセリンは融点−20℃沸点290℃といった具合です。いずれも水とは比べものにならないくらい大きな分子量でなのですが。

水が常温で気体であったら、・・・海も存在しなかったんですね。

スケートは何故滑るのか?

 氷が溶けて潤滑剤の役割をするからよく滑るのであれば、なぜとけるか。これは、上記の問題のように圧力を加えると融点が変化することによります。これがもし摩擦熱によるものだとすると・・・そんな熱が発生するほど摩擦が起これば滑らない!!。ただ重いものを置くだけで融点が変化して水になり滑るようになるのです。しかもこれは温度が上がらずに水が生じていて、スケート(のブレードが)が通り過ぎると圧力が無くなるので・・・直ちに氷にもどるのです。
水が潤滑剤の役割をしているのだからといって、ガラスの上に水をまいてスケートをするとどうなるでしょう・・・。(実験したことが無いのですが)これもそんなには滑らないはずです。スケートが水を押しのけて結局ガリガリしてしまうことになるからです。この点、氷の上のスケートは違います。圧力を加えると水が生じるのですから・・必ずスケートと氷の間にとけた水が潤滑油として存在することになるからです。
 
 ところが、この「c.スケートの乗った圧力で氷が溶けた水が潤滑剤(じゅんかつざい)の役目をするから」というのも怪しい部分があるのです。
圧力で溶けるとすると・・・1000気圧でー8℃が融点になると言うわけですから。氷の温度が低すぎると、通常の圧力では融けなくなって、滑らなくなるはずです。事実リンクにおいてもあまり冷やしすぎると滑りが悪くなるようです。また、カナダなどの厳冬期に凍結した道を普通の自転車が普通に走る様子を見ました。
ところが、リンクではー10℃よりさらに冷やしていても、十分に滑るというのです。圧力で溶けるとすると1000気圧を超す圧力がかかっていることになります?そんなことが有るのでしょうか。

スケートの摩擦については、スケートの摩擦について研究されている対馬勝年さんが、興味深い説(凝着説)を紹介されています。リンク整備についての専門家が書かれているものですので信憑性が高いだろうと思います。

「化学の質問ありませんか」
http://www.chemistryquestion.jp/index.htm
の中のスケートはどうして滑るのですかへ
http://www.chemistryquestion.jp/situmon/shitumon_kurashi_kagaku62_ice_skate.html

ただ、これはこれで、私には納得できない(まだ理解できない)ことが有ります。

・本当にスケートリンクの氷の温度がー20℃とかー30℃にも下がっているのだろうか?
スケートリンクでの氷の作り方は、下の面から冷やしています。このー何十℃というのは、その冷やしている面での温度だろうと思います。通常利用者のいる室内スケートリンクで室温を氷点下に設定することは無いでしょうから・・・池などの氷と違って、一番上の面の温度が一番高いであろうと言うことです。「圧力融解説」にしても「摩擦融解説」にしても融かす必要があるのは表面のいわば皮一枚の部分だけでしょうから・・・。表面の「皮一枚」の温度がどうなっているかが仮説の前提条件になるはずです。(カナダなど野外で氷点下30℃でも滑るということなので・・・・この疑問はクリアーですかね。)

・凝着説 によれば、「表面の突起部が接触し、接触面の大部分は隙間である」ということですから、その極小の接触面での圧力はどうなっているのでしょうか。圧力は接触の面積が小さければかなりの高圧という風に考えても良いのでは無いのか、また、極小の接触ならば、そこを溶かすだけなら極めて小さな熱でも溶けると言うことは無いのでしょうか。


水素結合の解説に挑戦しましょう。
水の物質的特性は不思議なことばかりでした

1.水は個体になると軽くなる
2.水は4℃の時が一番重たくなる
3.水は小さな分子なのに融点沸点が常温近くにある
4.水の気化熱・融解熱は異常に高い
5.水の比熱は極めて大きい
6.水の表面張力はとても大きい
7.水の粘度は圧力を加えると減少する
8.水は非常にものをよく溶かす
9.水は電子レンジによく反応する

これらのことは、神秘的で科学の力でも解明されないなどという解説を時々見ます。しかし、説明は素人向きではないにしても、ほとんど解明されています。もちろん、人間が科学的に説明できていることは自然現象のほんの一部なんでしょうが、だからといって分かっていることまでなにもかにも「神秘」にしてしまうのは怪しいと思います。
ということで、いささか難解ですが、つきあってみてください。理解不能な場合は読み飛ばしてください。まあ、一応説明できるのだと言うことを知っておくだけでもいいでしょう。
(以下の説明は高校レベルの化学の基礎知識を前提にさせてもらいます)

上記特性の原因は「水素結合」にある

原子はその核に電気的に+の陽子と電気的に中性の中性子を持ちその周りを電気的に−の電子が周りを回っている。その陽子の数や電子の数でどのような原子か決まってくるわけです。(電子が1個なら水素原子、2個ならヘリウム原子、8個なら酸素原子、13個ならアルミニウム原子というふうに)
原子と原子が結びついて分子を構成しています。このとき外側(電子は何層かに分かれて存在する)の電子の数が一定の数になるように働きます。一番内側は2個の電子があると安定し、その外側は8個で安定そのまた外側も8個で安定・・・・以下同じでした。そこで、水素は1個しか電子がありませんから、2つの原子がくっついてお互いの電子を共して水素分子(H2)になります。原子核と電子はとても遠く離れている(原子核の直径は原子の直径の10万分の1)のですが、それぞれの核の距離は保ったまま、双方の電子が両方の核を覆うように回り出します。ピーナツ型になると思ってください。このように安定するために電子を共有することで結合することを「共有結合」といいます。
酸素の場合は、内側に2個外側に6個の電子があるので外側の6個の内2個ずつを共有して4個が両方の周りを回り残りの4個はそれぞれの原子の周りを回ることで一つの核にとって外側が8個になって安定して酸素分子(02)になります。酸素分子もピーナツ型です。

この他に、電子が一方から一方に貸しだされて安定する形も有ります。例えば塩化ナトリウム(NaCl)です。Naの一番外側の1個の電子がClに行くことで一番外側が8個になって安定、Clの側は1個もらって外側が8個になって安定、その結果Na側は電気的に+にCl側は電気的に−になるので引き合って分子を構成する。このような結合を「イオン結合」といいます。

さて、水素と酸素の化合物である水(H2O)も共有結合です。酸素原子の外側の6個の電子の内1個が一つの水素原子と電子を共有し、別の1個がもう一つの水素原子と電子を共有します。こうして1個の酸素原子に2個の水素原子がくっついた水の分子(H2O)ができます。酸素原子は電子の層が2層になってるので1層しかない水素原子より大きいです。すると、大きな酸素原子に小さな水素が2個くっついている形になります。このとき、水素原子核と酸素原子核を結ぶ角度は「105度」になります。この105度というのがくせ者です。2つの水素原子は酸素原子を挟んで向かい合っているのではなく片方の側に偏ってくっついているのです。水分子全体で10個の電子が使われていますがその内6個は酸素原子の周りを回り、2個は酸素原子と1個の水素原子の周りを回り、残り2個はもう一つの水素原子の周囲を回っています。すると・・・2個の水素原子がくっついている側は、電子が少ししか存在せず反対側は電子が比較的多く存在することになります。電子の分布が不均一になるのです。このような状態を双極子といいます。水素分子や酸素分子は電気的分布がずれていないので無極性分子です。(ほとんどの分子は無極性あるいは極性が弱いといえます)
双極子である水分子が隣り合うとどうなるでしょう。電子(−)の多い酸素原子側(−)と電子の少ない水素原子側(+)の一方が引き合うようになります。これを「水素結合」といいます。共有結合に比べると極めて弱い結合で、イオン結合と比べても弱い結合です。水素結合は広い意味では化合と言えるかもしれませんが、通常は化合とは言いません。しかし、水素結合のおかげで水分子は自由に存在することができず、お互いの水分子を引きつけ有って存在しているのです。
ちなみに1個の水分子で(+)になるのは2カ所有ってそれぞれが105度の離れ方をしている、(−)になるのは1カ所・・・この条件で適当に何個かの水分子がくっついて存在しているわけです。

物質の双極子モーメント
物質名
化学式
双極子
モーメント

メチルアルコール
四塩化炭素
ベンゾール
アンモニア
塩化水素
硫化水素
酢酸
H2O
CH3OH
CCl4
C6H6
NH3
HCl
H2S
CH3COOH
1.94
1.47


1.468
1.12
1.02
-


前置きが長くなりましたが、この「水素結合」とそれに伴う水分子同士のくっつき具合が、水の不思議な性質の原因なのです。


水分子の場合水素原子が105度でくっついていることから、水素結合を「立体的(3次元)」に規則的に並べると6角形(3次元)になります。立体としては6角形になる角度は109度なのですが、近いのでこのように並びます。このように規則正しく結びついているのが氷です。このように結晶した氷は、隙間がいっぱいになります。隙間が多いということは、密度が低くなります。ということで、液体の水の時より規則正しく並んだ氷の方が軽くなってしまうのです。
これで、「1.水は個体になると軽くなる」という特殊な性質になるわけです。

この氷を熱する、つまり揺り動かすとどうなるか・・・分子内の結合はしっかりしているのでびくともしませんが、水素結合は弱いのでゆるみ出す・・・・すなわち融けだすことになります。融けだしても氷の中のような配列構造は全部一度には無くなりません。部分的に残っています。その間に他の分子が流れ込んで密度が高くなるわけです。温度が高くなるにつれて、流れ込む度合いがどんどん高くなるので密度が増して行きます。一方、温度が上がるにつれて分子の運動が活発になりますから分子と分子の隙間が広がってゆきます。流れ込んでゆくことで密度が高くなることと分子運動が活発になることで隙間が広がることが釣り合うのが4℃というわけです(厳密には3.98℃)。これより高い温度では、隙間が広がる効果の方が高いので、普通の物質のように温度が上がるにつれて密度が低くなる(軽くなる)わけです。
「2.水は4℃の時が一番重たくなる」という性質はこうして起こります。

4℃以上でも水素結合は無くなりません。普通分子同士がくっつく度合いは万有引力によるので、重い分子ほど結びつく力が強くなるわけです。結びつく力が強いほどそれを振り切って融けたり沸騰したりするには高いエネルギーがいる。すなわち高い温度になるはずです。ところが、水の場合には水素結合の力があるので、分子量に比べて融点や沸点が高くなるのです。その結果、
3.水は小さな分子なのに融点沸点が常温近くにある」という性質になりました。

「4.水の気化熱・融解熱は異常に大きい」という性質もそうです。
水の気化(蒸発)熱の539.8cal/gも融解熱79.7cal/gも他の物質と比べて並はずれて大きい。(これはモル単位で見た場合緩和されますがそれでも非常に高い。)
これも、この水素結合によります。引き合う力の強さのため融点や沸点が高くなるだけでなく、最後に切り離すときのエネルギーも高くなるのです。

「5.水の比熱は極めて大きい」という性質はどうでしょう
比熱とは1gの物質の温度を1℃上げるのに必要な熱量です。温度というのは物質の分子のゆり動く活発さの度合いですから、比熱が高いということは、揺り動かされにくいということになります。水素結合によって分子同士が強く引き合っているので揺り動かすことが難しいのです。このため、比熱が極めて高いのです。
ところで、問題の中でも取り上げましたが「液体アンモニア」は水以上に比熱が高かったですね(約1.1)。これはどうしたことでしょう。実は、アンモニア(NH3)は原子番号7の窒素1個と、原子番号1の水素が3個が共有結合しているのです。この結果アンモニア分子にも、窒素原子側(−)と水素原子側(+)という双極性が表れしかも水の時より強いので、その水素結合も強いのです。従って、水以上に比熱が高くなるわけです。
ちなみに、双極性を示す分子は水や液体アンモニアだけではありません。例えば、硫化水素(H2S)だって同じく双極性を示します。ただしこの場合イオウ(S)原子番号は16ですから電子の数も16個です。コブ状にとびだしている水素の部分の+の部分の影響が比較的小さくなってしまうのです。従って、水素結合はするのですが、その力はぐっと弱くなってしまいます。

 実は、水の比熱については、目立ちませんがもう一つ不思議があります。問題の解説でも少しふれましたが、普通物質は、温度が高いほど比熱が大きくなります。ほぼ比例的に上昇します。これは、動きの少ないものをさらに動かすよりも、動きの大きなものをさらに動かす方がよけいにエネルギーいるからと考えればいいのでしょう。ところが水は・・・30℃〜40℃あたりがもっとも比熱が小さいのです。

温度比熱
0℃
10℃
20℃
30℃
40℃
50℃
60℃
70℃
80℃
90℃
100℃
1.0079
1.0019
0.9994
0.9986
0.9986
0.9991
0.9999
1.0012
1.0029
1.0049
1.0075


新たな謎です。
ですが、これについては4℃で水の密度がもっとも高くなる時の説明で有ったように氷の時の結晶構造は4℃以上になっても無くなるわけではない、どうもこの30℃〜40℃までは結晶構造が残っていていて、それが徐々に少なくなることで比熱が小さくなるようです。そして結晶構造が無くなると通常の物質のように振る舞い出すということのようです。

「6.水の表面張力はとても大きい」のも水素結合が原因です
表面張力はどうしてできるのか、分子同士がお互いに引っ張り合うことから起こります。たくさんの粒々が互いに引っ張り合っていると考えてください。固まりの中に有る粒は周囲(上も下も右も左も前も後ろも)から引っ張られていることになります。でも、固まりの一番外側はどうでしょう。周りから引っ張られているのですが・・・外側からは引っ張られません。すると、内側へ引っ張ってもらうことになります。これが表面を小さくしようと作用します。これが表面張力になります。となれば、水素結合によって分子同士の引き合う力が強い水は、表面張力も大きくなるのです。

「7.水の粘度は圧力を加えると減少する」のも水素結合だから
 問題の中でも説明したように、粘度は分子間の摩擦の強さのようですから、分子の形状に起因するところが大きいと思います。枝が短い水の分子の形状からすると、実は大きい方です。これも、水素結合で引き合う力が働くので摩擦が増大し粘度が生じていると考えられます。
 圧力を加えると形状面からはいくらか粘度が増すのでしょうが、それ以上に隙間の多い水の隙間が縮まることになります。これも粘度が増大しそうですが・・・縮まると言うことは隙間の多い構造を保つ水素結合が切れるということです。ということは、水の場合粘度の主役をつとめるのは水素結合なので、圧力を加えると通常とは逆に粘度が減少するのです。

「8.水は非常にものをよく溶かす」のも水素結合で有ること、あるいは双極子であることが大いに関係しています。
 水素結合であることで、分子間に隙間が多いので溶かし込みやすいといえます。
また、イオン結合の物質、例えば塩化ナトリウム(塩 NaCl)は、Na+とCl−が交互に並んでがっちりと結晶している(当然固体)。これを溶かすとすると、この+と−を引き離さなければならないわけですから、とても溶けにくいはずです。ところが、水分子は双極子であるために、Na+のまわりに水分子の酸素側が接するように取り囲み、Cl−の周囲には水素側が取り囲むことでNa+とCl−をバラバラにできるのです。だからNaCl(食塩)は水によく溶け込むわけです。

「9.水は電子レンジによく反応する」のは水の分子が双極子で有ることによります。
電子レンジでものを温めようとすると、よくあったまるものと、なかなか暖まらないものがあります。基本的には、それが水をよく含んでいると温まりやすいのです。
何故、水は温まりやすいのか・・・それは水の分子が双極子すなわち、分子一つ一つに+と−が存在するからです。電子レンジは電磁波を出します。すると電波は波ですから電気の方向が常に逆転しています。それに合わせて、水分子の+と−が反応して動くのです。分子一個一個があっちに向いたりこっちに向いたり・・・揺り動かされる・・・つまり熱運度になるというわけです。
ちなみに、例えばアルコールも双極子ですから、アルコールも電子レンジにかければ温まります。(水ほどではありませんが)
ところで、電波は何も電子レンジの中だけにとんでいるわけでは有りません。TVだってラジオだって携帯だって電波をとばしまくっています。もし電波が目に見えたら周り中電波だらけのはずです、ところがそれで私たちの体がむくむくと熱くなったり、池の水温が勝手に上昇したりということが無いのは何故でしょう。
実は、水分子が電波に共鳴して震えて熱を出すといっても、どんな電波にも共鳴すると言うわけでは有りません。水分子を動かしやすい波長が有るのです。電子レンジは水をターゲットにした電波を出しているのです。ちなみに2450メガヘルツ位だそうです。
というわけで、TVや携帯電話をいくら使っても・・・私たちの体の温度が上昇していくということは無いようです。


水に関わるHPを紹介します

「水の話」 : 水の化学的特性について極めて詳細な解説がしてあるHPです。
http://www.con-pro.net/readings/water/


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