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シーン8アンクルトムの小屋(p15〜16)

0)旅人は 綿畑で黒人奴隷による綿花つみの作業が行われています。自由の保障こそアメリカという国の建国の理念・合衆国憲法の理念からして、あってはならない奴隷制ですが、南部には厳然として存在していました。(第二次世界大戦後も差別は残り、キング牧師等を中心に壮絶な公民権運動が繰り広げられるわけです)
旅人が通りかかったのは、まだ奴隷制度が残る頃のようです。そんな中、ハリエット・エリザベス・ビーチャー・ストウ(Harriet Elizabeth Beecher Stowe:ストウ夫人)は『アンクル・トムの小屋 (Uncle Tom's Cabin)』を、著します。この本はアメリカの良心を揺り動かし、奴隷解放戦争(南北戦争)の、動機の一つになります。南北戦争中の1862年にハリエットがエイブラハム・リンカーンと会ったとき、リンカーンは「あなたのような小さな方が、この大きな戦争を引き起こしたのですね 」と挨拶したのだそうです。
ここでは、アンクルトムの小屋にちなむエピソードが多くちりばめられています。

1)左下 男の子と女の子が寄り添っています。『トムソーヤの冒険』のトムと憧れのベッキーです。
仲直りをしたトムとベッキーは友だちと洞窟探検に行きます。ところが、洞窟の中で迷ってしまいます。けなげにベッキーを励ますトムですが、内心どきどきです。
4シーン連続で、この位置でトムソーヤの冒険からのエピソードが続きましたが・・・これで終わり??

2)子どもが薪を集めおじいさんが火をおこしています。これは、ユリー・シュルヴィッツの絵本『よあけ』からです。翻訳も良いですね。たとえば・・・

おーるのおと、しぶき、/みおをひいて……/そのとき/やまとみずうみが みどりになった。

読み語りで、子ども達に読んでいても、自ずとゆっくりそして静かな声になります。



by forest-door さん
シュルヴィッツはポーランド生まれのアメリカ移民。この絵本は唐の詩人、柳宗元の「漁翁」という漢詩にインスピレーションをうけて作られています。静かに語られる文章、そしてだんだん明けて
いくよあけの色を描いた絵。それらが見事にあっていてすばらしい絵本となっています。
ちなみにその漢詩とは…

      漁翁
  漁翁夜傍西巌宿
  暁汲清湘然楚竹
  煙銷日出不見人
  欸及一聲山水緑
  廻看天際下中流
  巌上無心雲相逐

読みはこちら。

  漁翁 夜 西巌に傍うて宿り    ぎょおう よる せいがんにそうてやどり
  暁に清湘を汲んで楚竹を然く   あかつきに せいしょうをくんでそちくをたく
  煙銷え 日出でて 人を見ず   けむりきえ ひいでて ひとをみず
  欸之一聲 山水緑なり       あいだいいっせい さんすいみどりなり
  天際を回看して中流を下れば  てんさいをかいかんして ちゅうりゅうをくだれば
  巌上 無心に雲相逐う       がんじょう むしんにくもあいおう

   (欸之…舟をこぐときのかけ声。)
なんだか、高校の漢文の授業を思い出しました。
でも声を出して読んでみると、音の響きがなんとも心地よく、イメージが広がります。

3)少し離れて、池の上のボートの2人もこの『よあけ』からです。

『よあけ』は、その美しさだけで素晴らしい絵本で。
その静かな語り口も素晴らしい。その素晴らしさを十分に承知した上で、深読みをしてみたいと思います。

安野さんがこのページに『よあけ』を選んだ、願いのもう一つの側面・・・。夜明けは、島崎藤村の『夜明け前』を想起させます。暗い夜明け前の世界でも、静かに時は過ぎ、時がくれば夜明けを迎える。今がどんなに苦しくとも、あけない夜はない、夜明けは必ず訪れる。
 奴隷制の夜も、いつの日か明ける時がくる。そんなメッセージも、込めておられるように思うのです。例によって、わたしの思いこみといえるかも知れませんが、『よあけ』に明日への希望を感じる読者は多いようです。

 何より、『よあけ』の作者のユリー・シュルヴィッツは、1935年にポーランドのワルシャワに生まれています。そして、第二次大戦にあって各地を転々とした後、戦後イスラエルに移って教員養成機関で学び、24歳でアメリカに渡ったとのことです。とすれば、彼はユダヤ系の人物と考えて良いでしょう。悪名高い強制収容所アウシュヴィッツのあったポーランドで、その幼少期がどんなにか厳しいものだったかは想像できます。その彼にとって、終戦は夜明けであったと思います。

おーるのおと、しぶき、/みおをひいて……/そのとき/やまとみずうみが みどりになった。

そして、日の出。

 もちろん、作品は老人と孫との心の通い合い、刻々と変化する自然、一瞬に変化する自然に重点があるとは思いますが。作者の体験からすればそのようなものが奥にしまい込まれていても不思議では無いと思うのです。
 さらに、作者のインスピレーションの元となった『魚翁』の作者である柳宗元(りゅうそうげん)は、優秀な文学者にして政治家であったものの、改革派の一員として政治犯の汚名を着せられ、若くして(33歳)地方へ左遷されたのです。中央復帰の夢は叶わぬまま47歳で無くなっています。夜明けを願っていた柳宗元の思いがこの漢詩の深いところに流れているように思います。

(『魚翁』現代語訳)
 老いた漁師は夜を西の岩陰で過ごし、
 夜が明けたら清らかな湘江の水を汲んで竹を燃やす。
 もやが消えて日が出るが、そこには人影は見て取れない。
 山と水の緑の景色の間に漁師の歌う船歌が寂しく聞こえる。
 はるかに天の果てを顧みつつ流れを下れば
 岩の上から雲が無心に迫ってくる。
                    (松枝茂夫「中国名詩選」)

4)右の建物のところでは、トランプをする人がいます
5)チェスをする人とそれをパイプを加えて見ている人
6)飲み物(ビール?)を飲む人と給仕をする人がいます

7)椅子に座って子熊を抱いている母さんクマがいます。これは E・H・ミナリックの『こぐまのくまくん』からです。絵は モーリス・センダック が描いています。センダックの絵は後でも出てきます。
中には4つのお話が入っていますが、いずれも明るくユーモラスで暖かく、子どもの心理をうまくとらえる内容です。

8)運河にボートが浮かんでいます。細長い形で、イギリスで産業革命期に発達したナローボートです。建設費を節約するために、運河の幅を狭くしそのために細長い船体になっています。また、運河の上にかける橋の高さをあまり高くしなくて良いように、船の高さを抑えてあります。本場イギリスでは、鉄道や車の発達で一時は衰退していましたが、最近では観光用に復活しているようです。アメリカではどうなんでしょうか?

イギリスのナローボートの旅の様子が紹介してあるHP
http://www.ris.ac.jp/shimazu/port.html
上記から第96便〜第100便を見るとナローボートや運河の事がとてもよくわかります。

9)ボートの上にバケツを持った人と杖をついた人が立っています。これは、前のシーンで汽車を見ていた2人と重なります。

10)ナローボートは、昔は人力や馬の力で引いていました。ここでも、2頭の馬で引いています。馬に乗っている人は、前のシーンでもこの位置で、馬に乗っていました。

11)馬の前にカバンを持って立っている女性は、向こうの川の方を見て、とても驚いている様子です。13)の様子を見て驚いているのですね。

12)運河の閘門(ロック)でハンドルを回している人がいます。運河は、その水位を調整するためにこのようなロックを設けています。今、左側の水位が高いので、その船を右側に行かせるためには、ここのロックを開けて、水を下流に流すことで左側の水位が下がって同じ高さになりますから出て行けます。
逆に上流に移動するときには、ロック内に入ってからロックを閉めて、上流側のロックを開けて水を入れることで上流を水面をそろえることになります。

13)川の上を子どもを抱いた女性が歩いています。こちら側では、男の人が手を広げて待っています。これは、奇跡でしょうか。
これは、『アンクルトムの小屋』の有名なシーンの一つです。
 主人に恵まれて、奴隷としては幸せな生活を送っていたアンクルトムですが、経済的危機に陥った主人は、トムと女奴隷イライザの幼い息子ハリイを売り払う契約をしてしまいます。息子と引き離されることを知ったイライザは、カナダへの逃亡を決意し、トムを誘いますが、トムは世話になってきた主人に迷惑がかかるからと拒否します。それでも、イライザ親子が逃げることには賛成します。
 奴隷商人のハーレイから逃げるイライザ母子は、オハイオ川にたどり着きます。川向こうのオハイオ州は奴隷制度の無い州です。しかし、無情にも川には大きな氷の固まりが流れ渡し船が動きません。そうしているうちに追っ手が迫ります。ついに、イライザは意を決して、氷の筏から筏を飛んで行くのです。

14)こちら側にいるのは、たまたま居合わして、イライザの勇気に心を動かされ、手助けするシムズです。

15)向こう岸の左側に、棒を持っている奴隷商人ハーリイと乗ってきた馬(にしては随分小さいですが)、そして後ろの白いシャツの男は、ハーリイの追跡を巧妙に妨害してきた奴隷のサムでしょう。

B案:馬にしては随分小さいようですので、犬かもしれません。犬だとすると別のシーンが考えられます。トムの3度目の主人レグリイはとても残酷な人です。その主人の奥さん役をさせられている女奴隷キャシーは、イライザの母親です(ここでも前の持ち主の死によって親子が引き離されていたのです)。酷薄なレグリイに母親から引き離されて買い取られたエメリーンと共に、レグリイの所から逃げる巧妙な計画を立てます。沼地に逃げたと見せかけて、家に隠れるのです。レグリイはいつも乗馬鞭を振り回していて、逃げた奴隷をどう猛な犬で追い立てます。そのときのシーンんの可能性もあります。


16)左上 倉庫の前で演奏会です。演奏者のほとんどは黒人のようです。当然ジャズということになると思います。何故か一人、屋根の上で演奏している人がいます。観客もアラブ風の人まで含めて32人熱心に聞いています。

17)右側の倉庫の壁にSIGNSとあります。サインの複数形?何を意味するのでしょうか??何か意図があると思うのですが思い当たりません

18)綿畑では、綿花の収穫の最中です。
左の、William Aiken Walker (1838-1921) の「The Big B Cotton Plantation」という絵がモデルです。
クーリェ・アンド・アイブスCurrier and Ivesの版画会社から『ミシシッピーの綿花プランテーション』"A Cotton Plantation on the Mississippi,"として複製が出版されています。
巨大な農場の様子です。絵には遠景に、ミシシッピー川を行く蒸気船も描かれています。安野さんはその部分ははぶかれています。安野さんの絵は遠くを小さく描く遠近法を採用されていませんから、絵の遠景が広がるように書き換えられているのがよくわかります。平面から見て上から見たように描くなど、安野さんの頭の中はすごい置き換え装置があるようです。
「旅の絵本の秘密」には、「わたつみ」(ニューヨーク市立美術館所蔵・右中央)とあります。
William Aiken Walkerの原画がニューヨーク市立美術館にあるのでしょうか?

19)畑の中に帽子をかぶって縦いる人と綿の籠を担いでいる人がいます。奴隷なんでしょうね。
20)綿を山盛りに積んだ荷車を馬がひいています。
21)高いレンガ造りの煙突の下の黒いタンクは何が入っているのでしょう。
22)畑の中を歩く人がいます
23)綿を摘む二人の女奴隷と、頭に籠をのせて摘んでいる女奴隷がいます
24)集めた綿花を箱に詰めている奴隷がいます
25)綿花の品定めをしている男性がふたり
26)頭に綿を入れた籠を担ぐ女奴隷が二人います
 こうして摘んできた綿花の重さが量られます。規定量に達していないと、ひどい目に遭わされます。3番目のひどい主人の下で、トムは体調が悪くて集めきれない人に、自分の摘んだ綿花分けてあげます。それが見つかって、トムが罰を加えることを要求されますが、断固拒否します。

27)乾し草の山?のところに黒く描かれている人はなに、そもそも人でしょうか???

28)煙突のある小屋は、下のポスターに書かれているものとそっくりです。アンクルトムの小屋のようです

29)ということは、脇に綿を入れた籠を置いて座っているのは、アンクルトムでしょうか。

30)トムの下の畑の所では、籠を一杯にして担いでいる人がいます。
31)向かい合って綿を摘んでいる人がいます。男性の方は、籠を綿の木の向こうに置いてつみ取っています。
32)親子連れ?3人がいます。奴隷は結婚することが認められています。ただし、できた子どもも主人の「持ち物」です。親と引き離して、売ってしまうことも可能です。ひどいものです。

33)旅人の後ろでは白いドレスの女性と紳士が縦います。この農場の持ち主でしょう。
 これも、上記綿花プランテーションの絵に描かれています。それはそれとして。
 アメリカの印象派の画家、ホイッスラー James Abbott McNeill Whistlerはマサチューセッツ州で生まれています。彼の作品に、『白のシンフォニーNo.1 ― 白衣の少女』があります。41)の黒衣の画家の母の像と対照的です。ということで、安野さんそのことも意識されたのではないかと?

34)三頭立ての馬車です。先頭の馬はラバのような気もします。
35)馬の脇で話している人、荷車に寝ころんでいる人。荷物の袋はやはり綿花なんでしょう。
36)倉庫の前で変なのが話していて、ゴミ箱の中からも何かのぞいています。
TV番組『セサミストリート(SESAME STREET)』のキャラクターです。ゴミ缶にいるのがオスカー(OSCAR THE GROUCH) 、あとはアーニー(ERNIE)とクッキーモンスター(COOKIE MONSTER)だろうと思います。
『セサミストリート』の由来は、アラビアンナイト(千夜一夜物語)の『アリババと 40 人の盗賊』の中に出てくる「開けゴマ(open sesame)」からきており、「宝物が隠されている洞窟が『開けゴマ』の呪文によって開いたように、この番組によって子供たちに新しい世界や知識の扉をひらいてほしい」という願いが込められている。というとです。



37)ゴミ缶の後ろに何か丸いものがあります??何でしょう??

38)倉庫の奥から女の子がのぞいています。セサミのキャラクターを気にしているのでしょうね。どんな気持ちで見てるのでしょう。怖いのかな、不思議なのかな、わくわくしているのかな?

39)倉庫の前には荷車があります。
40)二人乗りの馬車がおいてあります。

41)黒い服を着て、座っている女の人は・・・
ホイッスラーが病気の母を描いた『グレーと黒のアレンジメント 画家の母の肖像』の絵ですね。
ただ、ストウ夫人のイメージも重ねているのではないかと思います。彼女の写真は、右の写真のように多くの場合黒い服を着たもののようですし、上のポスターのストウ夫人の髪の色が白いですし。

『グレーと黒のアレンジメント 画家の母の肖像』
ストウ夫人


42)後ろの家は、ストウ夫人が夏に使っていた家のように思います。(フロリダにあります)

43)茶色の箱があります。何か書いてあるようにも思えますが、全く不明。この箱はいったい何なのでしょうか
 41)の画家の母の絵を見てみると、額に飾った絵が描き込まれています。ちょうど、この位置ですから、そのつもりでここに書き込んであるのだろうと思います。

44)ニワトリにエサをやっている女の人がいます。それを見ている犬は、ブルドッグのようですが、何か物語があるのではないかと思います。不明。

45)丸い桶のようなものの上にハンドルのついたものがあります。何をする道具でしょうか。
46)手押しポンプがあります。

47)女の子がカエルを見ています。
マリー・ホール・エッツの絵本『わたしとあそんで』からです。
「カエルさん、遊びましょ。」わたしが つかまえようとすると、・・・
かえるも ぴょんぴょんはねていってしまいました。

48)馬が二頭います。何もしないのかな??

49)川岸にも『わたしと遊んで』からです。カエルだけではなくて、今度はカメもいます。石垣の石にカモフラージュしているみたいです。
わたしが そのまま 音を たてずに じっとしていると、だあれもだあれも もう こわがってにげたりは しませんでした。
自然との向き合い方を教えてくれる。そして、人との関わり方であるかも知れません。

50)果物?を籠に入れて担いでいる人と、桶を天秤で担いでいる人がいます。

51)船に乗って、竿を差している人がいます。この人は、前のシーンでは大きな草刈鎌を持っていました。その前のシーンでは太ったおじいさんと話をしていました。

52)棒を持ってアヒルを追っている女の人がいます。この人前のシーンでも同じように猫を連れてアヒルを追っていました。たくさんのアヒルが同じ位置にいますが、半分は水の中ですね。


このシーンは、シーン全体に共通したメッセージがあるように感じます。

アンクルトムは、奴隷という酷薄な運命の中にあっても、神を信じ仲間の黒人を愛し、白人をも愛します。自身の妻や子どもを愛すると同時に主人の子ども達を愛します。
そのことは、白人の子ども達にもしっかり伝わっていて、2度目の主人の娘エバは自身の死の床にあってトムを最も信頼していますし、最初の主人の息子ジョージはトムを救おうと、お金を貯め探してやってきます。トムも死の間際にあって、ジョージが来たことに大きな喜びを感じます。
 子どもを抱えて、氷の筏の上を飛び移るイライザは、子どもに対する深い愛と、引き裂かれまいとの強い決意で、文字通り決死的行動にでます。
 『よあけ』では、おじいさんと孫との心のつながりがあります。
 『こぐまのくまくん』もお母さん熊の子熊に対する深い愛と、子熊の母熊に対する深い信頼を感じます
 ストウ夫人の姿とも重ね合わしてある『グレーと黒のアレンジメント 画家の母の肖像』も、画家のホイッスラーと病気の母との深いつながりを感じます。その愛を感じるからこそ、黒い服を着ていても暗くないイメージなのだと思います。

さらに、その思いでシーン全体を見渡してみると
 『トムソーヤの冒険』もここでは、トムとベッキーが愛を確認しあっています。
 『わたしとあそんで』も女の子と多様な生き物たちとの心の通い合いです。

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シーン9 ニューオリンズ(p17〜18)




0)旅人は 南部ルイジアナ州のニューオリンズ(New Orleans)にやってきました。ミシシッピ川の下流に位置し、メキシコ湾に通じる港湾都市です。
「新しいオリンズ」のオリンズとは、フランスのオルレアン(ジャンヌダルクによる解放で有名ですね)の英語読み。と言うことで、もともとはフランス領だったところです。
当時は、奴隷労働によるサトウキビのプランテーションを行っていたようです。さらに、綿花の栽培での奴隷労働と続き、前のシーンのアンクルトムやトムソーヤの冒険でも、たびたび登場します。
 2005年のハリケーン「カトリーナ」では、堤防を越えた水が低地に流れ込み、市内の8割が浸水し、市民に多くの犠牲が出ました。もちろんこの絵本が書かれる頃には、そんなこと夢にも思ってなかったでしょう。

01)左上 ジャズの演奏をしています。前のシーンでもジャズを演奏していました。ジャス発祥の地で、お葬式でもジャズが演奏されるのだとか。ここでは、黒人だけではなく、白人の演奏者もたくさん加わっています。

02)後ろの建物に「PRESERVATION  HALL」と看板が掲げられています。
ジャズを聴くならここと、おすすめのスポット。ドアのデザインもちゃんと表してあります。
このホールのある建物は、フランスやスペインの植民地時代の建物が多く残るフレンチ・クォーターにあります(1794年の大火事でフランス植民時代の多くの建物が消失しているので、現存するのはスペイン時代のものが多いようです)。
このホール、もともとは、1750年に建てられた民家、それが写真屋、そして画廊に変わり、この時客寄せに高齢のベテランミュージシャンを集めてジャズの演奏を始めたらら、音楽だけを目的で人が来るようになったそうで。1961年に伝統的なニューオリンズ・ジャズを保存する目的でジャズ・ホールとなったのだそうです。飲食物なしダンスなしで、とても入場料が安いのだそうです。予約なしなので、空きができるまで外で行列を作って待つのだそうで、その客のためにミュージシャン達が演奏をすることもあるとか。
ドアの上にも何か書いてあります。[PR ***VATION**]?実際のドアの上にも書かれています。やはりプリザベーションと書いてあるようです。公式HPを参考にしましょう。
http://www.preservationhall.com/home.htm

02)演奏をしている、右から2人目
ニューオーリンズ出身のルイ・アームストロング (Louis Daniel Armstrong)ではないか?と言う説があります。サッチモ(Satchmo)、ポップス(Pops)という愛称でも知られています。ジャズだけでなく、20世紀を代表するミュージシャンです。

03)演奏を聴いている聴衆は、前のシーンとほぼ同じように並んでいます。確認してみましょう。
足を抱えて座っている二人は、前のシーンと同じ
04)腕を組んで立っている人と後ろの二人。ポケットに手を突っ込んでいる人は、前のシーンでは鞄を持っていました。
05)白髭のおじいさんとその後ろの4人。シルクハットをかぶった黒人の男の人は、前のシーンでは帽子をかぶっていない白人でした。
06)アラブ風のかぶり物をした人から左に7人は、ほぼ同じ。
07)この絵では手前の家の煙突が描かれているところには、前のシーンでは帽子を家母ぶっている男のひとがいました。
08)煙突から左の、5人並んでいます。前のシーンでも5人並んでいましたが、性別などが変わっている人もいます。

09)その左の9人もほぼ同じ位置に立っています。性別や服装が替わった人もいるようですが。

10)ホールの建物の右に、樽が4つ並んでいて、一番右の樽に女の子が手をかけています。樽には何が入っているのでしょう?

11)テーブルの上にビンとなにやら機械が並んでいます。何の機械でしょう?ジューサーでしょうか

12)果物やさんのようです。並んでいるのは、レモン?・パインアップル・バナナ・オレンジ?でしょうか

13)帽子をかぶった馬が引く観光馬車が通っています。フレンチ・クォーターは、アメリカの観光地の中で、もっとも馬車の似合う街という評価をしている人がいました。町並みを見るのに、馬車の上からがベストなんだそうです。そして、本当に、帽子をかぶせられた馬もいるようです。

14)スケッチブックを持って手を振っている人がいます。顔の一部が描かれています。まつげがつながっていて、大きく長い鼻です。これは、前のシーンにも出てきた『セサミ・ストリート』のキャラクターのバートのようです

15)野鳥をスケッチしている人がいます。この人ジョン・ジェームズ・オーデュボン(John James Audubon,1785-1851)だと思われます。
ハイチ生まれですが、フランスを経て18歳の時にアメリカに渡りアメリカの各地で鳥を写生をしまくったそうで、1821年から1830年までニューオーリンズで暮らし、スケッチを教えていたそうです。
 教師の妻の収入に助けられながらスケッチを続け、企画した画集が、『アメリカの鳥類』。この画集は、写生に基づいて、生きた鳥が自然の生息環境の中で躍動的に描かれています。なんと鳥が実物大の大きさで描かれているのです。その結果、本の大きさは、エレファント図版とよばれる103×69cm。畳半畳分もあるのです。これは、でかすぎます。刊行までに12年もかかってしまいました。当初、アメリカでは出版を引き受けてもらえず、イギリスで出版したそうです。
Birds of America: List of Plates - 『アメリカの鳥類』の図版リスト (English) 所蔵の絵を見ることができます。
http://www.audubon.org/bird/BoA/ListOfPlates.html
 オーデュボンは、スケッチ旅行の中で、野生動物の絶滅や自然環境の破壊を憂うようになり、自然保護を主張するようになります。弟子のグリンネルがオーデュボン協会を設立しています。世界の自然保護運動をリードしています。

16)旅人の手前に、ビールを売っている屋台があります。車で、生ビールを提供しているようです。3人がジョッキでぐいぐいやってます。3人ともジョッキを持っていますが、お店の人は??

17)シルクハットを看板にした帽子屋さんがあります。帽子屋さんの二階のバルコニー部分には、鉄柵が施されています。この鉄柵は、レース細工が施されています。
フレンチ・クォーターに、このような建物が多くあります。

18)帽子屋さんの軒下で、帽子を売っているのは、上でスケッチブックにも描かれた『セサミストリート』のバートのようです。

19)帽子屋さんの前に車の代を置いて商売しているのは、毛皮ではないでしょうか。?

20)車体に「ROMAN CHEWING CANDY」と書いた馬車が有ります。
どうも、ニューオリンズにロマンチューイングキャンディーを作る会社があるようですね。

20)帽子屋さんの左の家の壁に、ANNNO1983とあります。例によって安野と西暦を兼ねた表現です。1983年は、アメリカ編の出版された年。

21)店の前のワゴンでは、籠とほうきを売っているようです。
22)店の前を杖をついた男性が行きます。おじいさん?
23)隣の店は丸い看板が掛かりそこにも壁にも何か文字が書かれているのですが、判読できません。
24)店で売られているのは?布でしょうか、ショールでしょうか?
25)買い物をしている女性もショールをかぶっています。このスタイルの女性が街中にあふれています。売っている男性は黒い帽子に黒い服。このスタイルの男性も街中にあふれています。
『クエーカー(キリスト友会)』教徒の人たちではないかと思いました。クエーカー教徒の人たちは、徹底した平等主義の考え方があり、早くから奴隷制に反対していて、アンクルトムの小屋などにも、奴隷の逃亡を助ける人として登場してきます。
 しかし、どうもニューオリンズ周辺にクエーカー教徒の人たちが多いという情報がありません。むしろ、次のシーンになるのですがフィラデルフィアに集中しているとのことです。
安野さんは、何か別の理由で、このような服装をした人を多く、このシーンに描かれているのでしょう。その理由にお心当たりの人はおられませんか?

26)隣は果物屋さんでしょうか
27)その隣のワゴンは、グラスに入ったジュースでも売っているのでしょうか?
28)子どもが店を見ています。ジュースがほしいのか、果物がほしいのでしょうか
29)黒い服のお店の人が、手を広げてお客さんとなにやら話しています。値段の交渉?お金の受け渡し?世間話?
30)隣のワゴンは又、果物のようです。売っているのは赤ちゃんを抱いたお母さん。
31)後ろには、衣料品も並んでいます
32)01)のホールとほぼ同じデザインのドアの前を、随分たくさんの荷物を背中と両手に持った女の人が歩いています。
33)黒い帽子にネクタイの男性が32)の女性を見ているようです。手助けをしようとしているのでしょうか
34)ほうきをのせた手押し車を押している男の人は、掃除をしているのでしょう。
35)3階建ての家があります。木箱がたくさん置いてありますが、そのうちの2つは、どうも棺桶のように思います。一体何故こんな所に?

36)樽に寄りかかった男性が女性と話しています
37)樽を積んだ馬車がいます。
38)木材がたくさん積んであります。木材の上に座り込んでいる人がいます
39)その木材の一本を、老人と子どもが二人がかりで運んでいます。前のシーンの『よあけ』の老人と孫ではないでしょうか。日常生活でも協力しあっているようです。
考えてみると、老人と子どもの組み合わせは、シーン2の『老人と海』から続いているんですね

40)ミシシッピー川に怪しげな小舟が浮かんでいます。トム・ソーヤーの冒険がらみかと色々調べましたが?船の舳先に梟のようなものが繋がれているのも??
 ビンガム(George Caleb Bingham )の絵『ミズーリ川を下る毛皮商人』からです。ニューヨークメトロポリタン美術館所蔵です。
http://cgfa.sunsite.dk/b/p-bingham1.htm
ミズーリ川(Missouri River)は、ミシシッピ川の最も大きな支流で、本流の西側に位置しています。全長は4,130kmあり、流域面積はアメリカ合衆国本土のおよそ6分の1に達します。
絵の中の人は、カメラ目線(画家目線かな)で、しかかりとこちらを見ています。
ビンガムはヴァージニア州生まれですが、ミズーリ州に転居して、開拓者たちの日常生活を描くようになりました。

41)OHAIOと書かれた外輪船が描かれています。船底の浅い川船外輪船です。19世紀と20世紀の前半にミシシッピー川で行われた交易はほとんど、このような船で行われました。今は、観光用に残っていて「ショウボート」と呼ばれているとか。これは、映画『ショウボート(Show Boat)』(1936)が有名になってからとのことです。
OHAIOと名付けられた外輪船があったかは不明ですが、オハイオ川(Ohio River)はミシシッピー川の支流の1つです。流域一体のネイティブ・アメリカンたちは、この川を主要交通手段としていました。また南北戦争前には、南部の黒人奴隷にとってこの川を渡ることは「自由への道」を意味していたのです。

 外輪船といえば、『トムソーヤーの冒険』の著者マーク・トウェイン(Mark Twain)の本名は、サミュエル・ラングホーン・クレメンズ(Samuel Langhorne Clemens)です。彼は、このような船の水先案内人をしていました。川の航行では、船底が浅瀬に乗り上げることが心配です。そこで、紐を垂らして水深を測ります。日本でもアメリカでも両腕を広げた長さで水深を表すようで、「尋」(ひろ:a fathom=6フィート)を使います。測深手は水先案内人へ水深が2尋になると『by the mark, twain(2ファゾム:約3.6m)』と叫びます。3.6mより深いと航行に安全で、浅いと危険だからです。マーク・トウェイン(Mark Twain)は、これが気に入ってペンネームにしたそうです。

42)THE RIVER QUEENと書かれたひときわ大きな外輪船があります。
写真は2代目で当時のものではありませんが、いい雰囲気です。
旗がたくさん翻っています。南軍の旗もあるところが南部らしいですね。安野さんの絵では、星条旗の他に鳥の旗が掲げられています。この旗は一体なんでしょう。
 ところで、リバークイーンは、アニメの「トム・ソーヤーの冒険」にも出てきました。
ブリック
 ミシシッピ川を行き来するリバークイーン号の航海士を勤めているらしい。見習いのマイクに対する指導は厳しいが、優しい一面もある。
マイク
 3年前にセント・ピーターズバーグの村を飛び出し船の見習いとして働いている少年。3年前は泣き虫マイクと呼ばれていたが、今では立派な見習いとして成長している。
 このマイクって、マーク・トウェインのことかな。

42)船の上に立っている人と、しゃがんでいる人がいます。

43)MISSISSIPPIと書かれた外輪船が描かれています。ミシシッピー川と言うことなんでしょうが・・・。
アニメの『トムソーヤの冒険』では、町にやってくる外輪船の名前が「The MISSISSIPPI」とありました。番組のエンディングの歌のシーンでも「The MISSISSIPPI」がずーと出ていました。
左のイラストは、マーク トワイン リバーボートです。この船がモデルかも。
ちなみに、ミシシッピー川はとてつもなく長く、流域の広い川です。オハイオ川と共に、このシーンはミシシッピー川やその支流のオハイオ川が舞台ということを暗示しているのかも。
1853年、幕府にアメリカ大統領の親書を手渡すためペリーが率いて浦賀に入港した4艘の黒船の中に、ミシシッピー号があります。右の写真は日本にきたミシシッピー号です。外洋を行く船ですからデザインが全く違いますが、蒸気船です。
関係あるのかな?

43)小舟(それでも蒸気船!)に立っている男の人がいます。
 これまでのシーンで、おじいさんと話し、鎌を持ち、小舟を操っていたおじさんでしょうか

44)海を向いて荷物を頭に担いだ女性が二人います。小舟のおじさんと話しているように見えます。この二人、前のシーンで同じ所に立っていました。右の人は同じように頭に荷物を担ぎ、左の人は天秤で桶のようなものを担いでいました。

45)リバークイーンの向こうに手押し車が一台
46)2頭の馬が袋に詰めた荷物を載せた荷車をひいています。荷物は、綿花でしょうか?
この2頭、前のシーンでは同じところで、所在なさげに立っていました。仕事ができたようです。

47)荷車の男性と袋を1つ持った男性が話しています。荷物を持ってきたのか、譲り受けようとしているのか?どちらでしょう?

48)手押し車で二袋運んでいるおじいさんがいます。
49)二人がかりで7袋運んでいる人がいます。
50)たくさんの樽がつまれていていて、シートで覆っています
51)樽を転がして運んでいる人が2人います
52)袋(綿花入り?)がたくさん積んであって、袋の上に立っている人と、下の人が話しています。取引の話でしょうか。
53)向こうの袋の山の向こうには。荷馬車で袋を運んできた人がいます。
54)キャンディの馬車の手前の家(倉庫?)の前で3人の男が座って世間話をしているようです。

55)p18の右下 樽を置いた屋台にはOYSTERSと書かれているので牡蠣の屋台のようです。足下に落ちているのは蛎殻でしょう。焼牡蠣で食べるのが一番おいしいように思いますが、ここではどう食べているのでしょう。ちなみに、ニューオリンズの名物の1つに生牡蠣があるそうで、あちこちにオイスター・バーがあるとか。すると、生で食べているのでしょうか。
 3人の男たちが食べているのを、子連れのお母さんが見ていますが、注文するのかな。
 
56)壁に何かポスターが貼ってあります。何か意味ありげです?指名手配?、不明です。
指名手配だとすると、二つ前の蒸気機関のシーンの36)に貼られた指名手配のポスターと同じものだとすると、犯人がこの街に逃げてきているということになりませんか。・・・58)の人かな。

57)フレンチ・クォーターの一角と思わせる建物が並ぶ中でボクシングが行われています。
ニューオリンズとボクシングの関わりは?
プロボクサー ルービン・'ハリケーン'・カーターがいます。ルービン・カーターは1937年5月6日、同じニュージャージー州のクリフトンに生まれています。幼い頃から猛烈な差別に合いながらも、プロボクサーとなりライト・ウェルター級チャンピオンに上り詰めます。それからボクシングのリングネームを『ハリケーン』と名のります。ところが、殺人の冤罪を着せられます。モハメッド・アリやボブディランなどの支援を受けますが、有罪判決。と、およそ20年もの獄中生活を強いられたのち、1985年11月8日、ニュージャージ連邦裁判所で無罪を勝ち取ります。その後、連邦最高裁判所でも無罪となります。
《ルービン・カーター事件》参照

また、上記事件でハリケーンの、支援もしたモハメッド・アリ("The Greatest" Muhammad Ali 本名はカシアス・マーセラス・クレイ・ジュニア)は、ケンタッキー州ルイビル出身。
ローマオリンピックで金メダルを取った後オハイオ川に金メダルを投げ捨てたと言う事件がありました。このことについては、下の記事を・・・。

by forest-door さん

モハメド・アリ(本名カシアス・クレイ)。1996年のアトランタ・オリンピックで聖火ランナーとして登場したときは驚きました。パーキンソン病を患っていても彼は病に負けずに戦っている様子を世界中の人に示したのです。
1960年ローマオリンピックで金メダルをとった彼は、食事に入ったレストランで黒人だからという理由で拒否され、通りかかったオハイオ川に金メダルを投げ捨てたという過去がありました。またベトナム戦争の徴兵を拒否し、チャンピオン・ベルトを剥奪されたこともあります。
そんな彼がもう一度、オリンピックという場に呼ばれ、聖火ランナーの中でも特別な最終の点火者だったのです。
そして、投げ捨てられた昔の金メダルはこのとき再交付されたそうです。


58)左手にチケットのようなものを持って、シルクハットを差し出して、お金のを持った男とやりとりをしています。どうも、賭をしているようです。この帽子を差し出している男は、シーン6(アンクルトムの小屋)とシーン7(蒸気機関車)で逃げていた男ではないかと思います。シルクハットと服装からの連想ですが・・・。

59)屋根の上で4人並んで見物しています。これは、屋根の向こうの地面に座って見ているようにも見ることができます。だまし絵です。

60)テーブルに座っている二人は解説者でしょうか
61)解説者の後ろに女性が3人、赤い横縞のドレスを着た女性はかなりエキサイトしています。
62)手前で応援している人は手を振り上げて応援しています。今パンチを繰り出している、細身のボクサー(アリ?)を応援しているのでしょうか。

63)賭をしている人の左側、スカーフをした女性の後ろに、背後の試合を無視するように、港に向いて立っている男性がいます。
64)こちら側の屋根の上にも見物人がいます。これも地面の上かな
65)こちら側にも、女性が身を乗り出すようにして応援しています。
66)メガホンを持って応援している人もいます
67)黒服の人は反り返って見ています。右手には、本を持っているようです。
68)肘を組んで応援している二人がいます。友だちですかね。
69)黄色のシャツのおじいさんはもう万歳をしています
70)万歳をしているおじいさんの後ろには、腕組みして見ている人がたくさんいます。殴られているお腹の大きなボクサーのファンでしょうか。
71)万歳をしてるおじいさんの右には、オーバーオールの男の人とネクタイのおじいさんそして孫かな吊りズボンの男の子が並んでいます。
72)男の子の後ろにメキシコ風のポンチョを着込んだ男性がいます
73)片手をあげる男性・両手をあげる男性・女性が並んでいます
74)女性の後ろに、椅子が3脚あります。どういう意味でしょうか?
75)観客の向こう側に並んだ家は、レース細工の鉄柵が並んでいます。
76)ベランダでも応援している人たちがいます。
77)本を持った黒服の人の後ろで、杖をついた人と試合を指さしている人がなにやら話し込んでいるようです。
78)アメリカインディアン(先住民)風の男がいます
79)倉庫のような建物の壁に寄りかかって試合を見ている男がいます
80)左手にたくさんの紙のようなものを持っている女の人がいます。なんでしょう。
81)手回しオルガノ(Barrel organ)を回している男がいますが、誰も聞いてくれていません。

82)右上 野球をしている人たちがいます。アメリカ生まれの球技で、国技と言っても良いのでしょう。

83)今まさに44番の選手がホームランを打ったようです。アラバマ州出身の黒人メジャーリーガー、ハンク・アーロン(Hank AARON)です。

84)観客が一斉に上空を指さしています。ホームランボールの行方を追っているのですね。

by forest-door さん

44番の背番号をつけて今まさにホームランを打ったハンク・アーロン。周りの観衆やピッチャーが高く飛んだボールの行方を見ています。
ベーブ・ルースの記録を更新してメジャーリーグで755本のホームランを打ちました。彼のいたアトランタ・ブレーブスとミルウォーキー・ブリュワーズでは背番号44番は永久欠番となっています。黒人であることで差別を受け、ベーブ・ルースの記録を塗り替えようとしていた1974年当時も、黒人が記録を破るなんて、という声もあったと聞きます。しかし、そういう声を跳ね飛ばすかのように、記録は更新され、野球殿堂入りも果たしています。


このシーンを振り替えって見ると
前のシーンでは、アンクルトムの小屋を中心に、奴隷制度の不条理を訴える内容でもありました。その中で、アンクルトムは、白人を上回る人柄で白人を変えてゆきます。しかし、ある意味で白人を上の存在として立て続けます。作品の中では、イライザの夫など、頭脳と技術で主人の白人を遙かに凌駕する存在という設定にはなっていたものの、トム自身は常に一歩引いた位置から、情に訴える姿勢と言っても良いでしょう。
 それが、このシーンにくると、奴隷制度は終わっています。しかし、不当な差別は続いています。それに対して、白人を凌駕する力量を示すことで平等をさらに進めてゆく人たちが描かれています。
 黒人の音楽であったジャズが、白人を呑み込み、さらにルイ・アームストロング のように天才的力量で白人を圧倒して引きつける存在があらわれます。
 ボクシングのシーンは、ハリケーンだとしてもアリだとしても、酷薄な差別の中で、実力でチャンピオンの座を手に入れます。ボクシングの試合は黒人同士ともとれますが、太った方は白人ととらえることができるかもしれません。そう見ると、黒人のハリケーンやアリが白人の選手を倒そうとしているのかも知れません。そうすると、熱狂している観客は、白人の選手が倒されそうなのを、怒っているのでしょうか。強い黒人選手を受け入れているのでしょうか。観客の後方で腕を組んでいる人の多くはネイティブアメリカンの格好をしている人が多いように思います。黒人だの白人だのと騒いでいることに一線を画しているのかも知れません。また、黒い服の人たちも又、派手に騒いでいません。彼らが、クエーカー教徒であるとすると、納得行きます。極めて徹底した平等主義の彼らなら、人種の違いで興奮するのは違うというわけです。本来ならクエーカー教徒の本拠地であるフィラデルフィアには、黒服の人を登場させず、ニューオリンズにこれだけ集中させたのは、安野さんのそんな思いかも知れません。(単なる妄想かも知れませんが)
 背番号44のハンク・アーロンも、厳しい差別を乗り越えて、偉大なるベーブ・ルースの記録を塗り替えます。
 こうして、彼らはアメリカ社会の中で尊敬を勝ちとり、黒人が哀れみや同情で大切にされるのではない、新しい社会を切り開いて行くわけです。

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シーン10フィラデルフィア(p19〜20)

0)旅人は ついに東海岸北部ペンシルバニア州フィラデルフィアにやってきました。
この町は、イングランドで創設された宗教団キリスト友会(Religious Society of Friends)通称クエーカー教の信徒であるウィリアム・ペンが同志とアメリカに渡来1682年、この地に居住区を建設したのが市の起源です。そして、古代ギリシア語で「兄弟愛の市」を意味する「フィラデルフィア」と命名したのです。
 18世紀には、北米最大の都市でした。1790年からの10年間連邦政府の首都でもありました。

1)中央にある特徴的な建物は、独立記念館(インディペンデンス・ホール)です。
もともとペンシルバニアの議事堂でしたが、1776年7月4日、13の植民地の代表がここに集まり独立宣言書にサインしたのです。ちなみに、首都であった1790年からの10年間は、アメリカ合衆国議会議事堂として使用されました。議員数が少なかった「元老院」が二階を、多かった「代議院」が一階を議場として使用したことが「上院」と「下院」という語の語源となったのだそうです。

2)独立記念館の前に13人の人が描かれています。これは、ジョン・トランバル(John Trumbull) の絵『The Declaration of Independence.(独立宣言)』からです。
この絵は、通常、独立宣言書に13州の代表がサインしている様子とされているのですが、実は、宣言を議会に提案している委員会の絵らしいです。安野さんはその中から13人だけをピックアップして書かれています。もちろん、13州の署名をイメージしてのことだと思います。
 この絵は、1976年建国200年を記念して作られた2ドル紙幣の裏側に取り入れられています。
 日本の2000円札と同じで、アメリカでも2ドル札の発行部数は少なく、アメリカに住んでいても、見たことすらない人が多く。中には、存在自体を知らなかったり、都市伝説のたぐいだと思っている人までいるとか。でも実は、1776年の大陸会議ですでに2ドル札は作られていて、以後無くなれば増刷されたり、ニューバージョンの発行があったようです。1928、1953と1963年に発行されたものは、現在でも流通していて、これは、大変希少価値があるようです。万一手には入ったら通貨としては使わずに持って置いた方が良いかな。表は現在と同じように第3代大統トーマス・ジェファーソン (Thomas Jefferson)です。裏面はジェファーソン大統領の邸宅モンティチェロ(Monticello)の絵です。世界遺産に登録されています。
 トーマス・ジェファーソンは、1775年の大陸会議に参加し独立宣言起草委員としてアメリカ独立宣言を起草しています。
 2ドル札について詳しくはこのHPを(英文です)
http://wcdc42.com/

ちなみに、この後の展開を理解するために、アメリカの歴史を大まかにふれておきます。
 
1492年コロンブスによるアメリカ大陸発見(それ以前に、中国の船団やバイキングが新大陸に至っていた可能性はかなり高いですし、数万年前からアジアからやってきていた先住民がいたのですが)
 16世紀初期にスペイン人が入植。その後他のヨーロッパからの入植もあった。
 フランスとイギリスの対立が強まり戦争となったが、イギリスの勝利。
 イギリスの植民地となるものの、今度はイギリス本国との間で対立。
 1775年アメリカの民兵とイギリス兵との間で戦闘が始まり、独立戦争となる。
 1776年東部13州は、独立宣言。
 1786年合衆国憲法制定。
 1787年ジョージ・ワシントン初代大統領に就任

03)独立記念館の向こうに、星条旗を縫っている女性がいます。彼女の名はベッツィ・ロス(Besty Ross) 。独立宣言の翌年1776年にワシントン(後の初代大統領)に、頼まれて作ったそうです。最初の星条旗です。この時の星の数は13個。青地の分部に、星の輪として表されました。
彼女のことについての小論文です
http://www.tenri-u.ac.jp/tngai/americas/files/newsltrs/14/14lecture.wadakitadume.html

04)鐘を見ている人たちがいます。「自由の鐘(Liberty Bell)」です。その音は、1974年大陸会議の開催を知らせ、1776年7月8日、フィラデルフィアの市民をアメリカ独立宣言の朗読へと召集させたのです。
鐘には「全地上と住む者全てに自由を宣言せよ、レビ記25:10」と書かれています。
 その後も、アメリカのそして世界の自由を求める人たちに勇気と希望を与え続けました。キング牧師のI Have A Dream演説の最後に繰り返し繰り返し、「自由の鐘を鳴らせ」と訴えています。
 自由の鐘は、鋳造に問題があったのか、写真のようにひびが入っています。当初からヒビが入ったようですが、それをくい止めるために修理されている。その修復の方法は、亀裂の端が広がらないように割れ目に沿って穴を開けていく手法だったようで、写真のヒビもこの修理の結果でもあります。修理はしましたが、ヒビが上部に達してしまい、現在ではうち鳴らすことができなくなっています。

05)自由の鐘を取り囲んで、白いドレスの女性と男性が話しています。男性は自由の鐘を指さしています。
06)セラー服を着ているのは水兵さんですかね。
07)ピンクのドレスの女性、一人たたずむ男性、黄色の服を着た少女は隣の子と姉妹?
08)ネクタイの男性は、子どもを連れて帰っています。
09)ピンクのワンピースの女性は、オレンジのワンピースの女性と何か論議しているようです。
10)男性4人と女性一人は、なんだか感慨深げに自由の鐘を見ているように感じます
11)後方から、男の子が一人、自由の鐘を見つめています。

12)p19の右上の建物群もフィラデルフィアのようです。写真のあたりは、建国当時の街並みが良く残っている地域のようです。

13)左上 消火栓を開いて遊んでいる子供達がいます。

14)飛んでくる水を傘で受けている子や、万歳している子がいます。

15)子ども達の度はずれた遊びを、あきれてみている鞄を持った女性がいます。

16)万歳をしている子のさらに右に離れて、見ている子がいます。この子の足下は、ビルの上になっています。だまし絵ですね。

17)白い下着を吊した店は、下着やさんということでしょうか?店の前には椅子が出ています。
18)馬が粉袋?を積んだ馬車を引いて止まっています。何の店でしょう?

19)シルクハットが看板になり、壁には黒い服や帽子が描かれています。もう一つ白いのは、コップ?それとも白い帽子でしょうか。店の前では二人の男がジェスチャーを津kて話しています。

20)靴を4つも縦に並べた看板があるのは靴屋さんのようです。店の前では3人の男が話しています。一番手前で店の人と話しているのは、ステッキ?を持った警官のようです。

21)Restaurantと書かれているので店レストランでしょうが、看板に何がかかっているのでしょう。
22)店の角には犬がいます。お店の犬かな?残飯ねらいかな?

23)レストランの前で屋台を出している人がいます。どうも、ビン入りのジュースを売っているようです。お客さんも、二人います。

24)BANKですから銀行ですね。なんとレストランの屋上から、泥棒が銀行の窓をlこわして中に侵入しています。パレードの最中で、警備が手薄になるのをねらってのことでしょうか。

25)銀行は今日はお休みなんでしょうか、ホットドッグ屋さんが、店を出しています。店の形自体が、ホットドックですね。こんな店が、本当にあるんですね。
LUCKY DOGSというホットドック屋さんのようです。もっとも、LUCKY DOGSはニューオリンズの会社のようなのです。全国展開しているのでしょうか。あるいは、同様な趣向の屋台が別会社であるのかな。

26)隣のビルの前には、白衣を着て椅子に腰掛けている人がいます。こうして、パレードを待っているのかな。

27)パレードが行われています。シーンの状況から考えると独立記念日のパレードでしょう。

28)パレードの警備をしている警官が一人立っています。背後では、今まさに銀行に侵入している泥棒がいるのですが。全く気づいていない様子です。後で、悔しがることでしょうね。

29)パレードの先頭を、星条旗を服にした人が胸を反らして歩いています。
 「アンクル・サム(Uncle Sam)」です。アメリカ合衆国を擬人化した架空の人物。United States(アメリカ合衆国)とイニシャルが同じなため、こう呼ばれるのだそうです。

by forest-door さん

そのパレードの先頭をきって歩いている国旗柄の服の男の人は、アンクル・サムですね。
アンクル・サムというのは実在の人ではなく、アメリカ政府やアメリカ人のあだ名みたいなもの。シルクハットと国旗柄の縞のズボン、長身であごひげのある男として表現されます。なぜこういう風に呼ぶようになったかは精肉業者のサム・ウィンクルが軍用の肉にU.S.のスタンプを押したところ作業員たちは、彼の愛称「アンクル・サム」の略だと思い、アンクル・サム=アメリカ合衆国を意味するようになったのだとか。
Pictures of Uncle Samというサイトもあります。
http://www.sonofthesouth.net/uncle-sam/uncle-sam-pictures.htm


30)警備のお巡りさんに話しかけている女の子がいます。
31)ネクタイをした男性を挟んで女性が二人、3人で話しています。
32)鞄を持った女性が右を見ています、隣の会話が気になるのか、パレード本体が気になるのか?
33)黒服の男性と水玉のワンピースの女性が何か話しています。
34)警官が二人、パレードの様子を見ながら話しています。
35)オレンジのドレスの女性と黒っぽい服の人が星条旗の方を見ています。
36)男の子が、手を取って話しかけている相手は、お父さん?お巡りさん?隣の女の子もその方を見ているようです。相談しているのかな。

37)女の子を2人連れた女性は日傘を持っているようです。
38)小さな子と手を繋いだ、おじさんが立っています。
39)子どもが3人並んで、右端の子は旗の方を指さしながら、話しています。
40)パレード見物の手前側、左端、男の人が3人立っています。真ん中の子ですが、この格好を見るとつい、映画『シェーン』にでてくる少年ジョーイではないかと思うのですが。映画のシーンと無理矢理つなげるとすると、独立記念日を祝うパーティーを開拓者達で行っていました。それを見ている、ジョーイと言うことですか・・・強引ですかね。

41)4人の女性と3人の男性が並んで立っています。
42)男の人が二人
43)街路樹があります。このシーン全体に同じ木が描かれています。この樹形は、桜の木ではないかと思います。どうもフィラデルフィアには、日本から贈られた桜があるようです。

44)桜の木の所に、男女5人立っています
45)桜の木から右に10人の男女がいます。中程の女性は、完全に横を向いて旗の方を向いています。両手を、エプロンの下に入れているようです。

46)5人立っています。前の2人は、黒い服を着た女性と、大きな帽子をかぶった人が話しているようです。
47)みどりの服の子、毛糸の帽子をかぶった子、帽子をかぶった男女7人、その後ろに頭だけ見えている人が2人。

48)黄色のワンピースの娘を、男性二人が挟んで立っています。どういう関係でしょう。
49)男性が二人立っています。右側の男性は手を振っています。
50)パレードでは、スティックを降る人に続いて、ラッパを吹く3人と太鼓をたたく人が続きます。靴に何かつけているようですが、これは何?飾りでしょうか。

51)手前の見物の右端は、男女のようです
52)おじいさんの後を、子どもたちが10人で、星条旗を持って続いています。
53)パレードの向こうの建物のところで見物しているのは、ネクタイの男性
54)杖を持った白髭のおじいさんと、縦ストライプのスカートをはいた女性。これ、星条旗のストライプを意識してチョイスしたのかな。

55)オーバーオールの男性が一人
56)黄色い服の女性をはさんで3人がたっています。
57)子どものとなりの男性二人、クエーカー教徒かもしれません。
58)子どもが3人大人の人に連れられてたっています。何か後方を指さしています。この後には、何がくるのでしょうか?

59)凧を揚げている人がいます。ベンジャミン・フランクリン(Benjamin Franklin)です。彼は、アメリカ合衆国の政治家、外交官、著述家、物理学者、気象学者です。アメリカ独立宣言の起草委員の一人で、アメリカ独立に多大な貢献をした人です。しかし日本では、凧を用いた実験で、雷が電気であることを明らかにしたことの方が有名ですね。
1752年、雷を伴う嵐の中で凧をあげ、凧糸の末端にワイヤーで接続したライデン瓶により雷雲の帯電を証明するという実験をしました。同時に、雷の電気はプラスとマイナスの両方の極性があることも確認したとそうです。また、避雷針の発明もフランクリンです。彼の墓には、、「この人は天上から稲妻を、暴君から王笏をもぎとった。」と刻まれているのだそうです。

60)フランクリンの足ものとの建物の上にいるのに、芝生の上にいるように見えます。これもだまし絵です。

61)隣の建物の上には、ANNO1983と書いてあります。この本で、3回目ですね。
このあたりの建物は、彼が住んでいた屋敷跡に建てられた「フランクリン・コート(FranklinCourt)」という記念館の様子に似ています。5軒の家が建ち並び、そのうちの一軒は郵便局で、地下は博物館になっていてフランクリンを紹介しているそうです。

62)子ども達が遊んでいます。「とうりゃんせ」ですかね。アメリカだから・・・「ロンドン橋落ちた」かな。

63)観光馬車があります。ここ、フィラデルフィアでも、観光馬車が活躍しているようです。

64)旅人の向こうでは、パラソルの下で、スケッチをしてもらっている人がいます。大きな鼻に帽子、その下は髪の毛が無いようで、耳の所に白髪だけ。画家は、顔の中心だけ描いていますが・・・。このキャラクターは一体何??

牛水さんからの情報:セサミストリートのアーニーではないかとの提案がありました。
↓65)がカウント伯爵のようですから、セサミストリートのキャラだと思いますが。白髪のもみあげと帽子がアーニーにしてはおかしいと思います。
分かっているキャラの中では、Mr.JOHNSONが一番近いように思うのですが。??下記の動画では、患者として登場しています。
セサミストリートのHPに紹介してある画像を見ていたら、手術のシーンでの医師がこの条件に合うように思います。
ただ、キャラの名称が不明です。
該当の動画です。このキャラクターの名前をご存じの方はいませんか。

http://www.sesamestreet.org/video_player/-/pgpv/videoplayer/0/4ab3b0e6-1550-11dd-8ea8-a3d2ac25b65b


65)画家の隣りに座っている人は、緑っぽい肌色です。ドラキュラ??
 64)と共にアニメか何かのキャラクターだと思うのですが、不明です。
→牛水さんからの情報です:セサミストリートのキャラクターの一人カウント伯爵(トランシルベニア出身で数が大好き。目につく物を数えずに入られない。ドラキュラ伯爵とは遠縁にあたるとか)であろうとのことです。まず、間違いないと思われます。


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