「モヤさん」の人と自然の出会い旅

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ネイチャーゲームトレーナーの一人である、私(もや)がネイチャーゲームに関わって全国各地のをまわった時に遭遇した出来事や、人や自然との出会いのいくらかを書いてみることにします。
お楽しみいただければ幸いです。

目次

00はじめに
01バードウォッチャーには頭が下がる

02虫好きだってすごいよなぁー

03そこに山があるから登ってみたいのだ
04 祈りを捧げる巫女の姿に心引かれて
05アラレちゃんでなくてもフンは面白い?
06熊はこわいよなぁー!
07ある日森の中熊さんに出会〜った
08カモシカさんとの長ーー追いかけっこ
09わたしの木のある所《前編》
10わたしの木のある所《後編》
11静けさの中で分かち合う
12阿蘇の山を望む
13木の中に響き渡る音たちのこと
14裸足で歩くと感覚が開くのです
15雪の上でも裸足であるいてみよう
16集まって来る骨達の事
17語るバス運転手さん
18恐怖(?)の森の中
19歩く 歩く《前編》
20歩く歩く後編《榛谷さんのこと》
21バードウォッチャーには頭が下がる2
22ブロッケンの妖怪に出会う
23風、「見た」ことありますか。
番外雲になる(吉本さんから)
24野生動物にであっちゃった
25川をきれいにする人にであって
26雨女・晴男って迷信ですよね!
27それでもやっぱり、雨女・晴男っているよね
28バードコールで鳥と話す
29百歳の友人への弔辞

30ヌートリアにバッタリ・・・

31一人の山
32山にありては人恋し・・・
33自然にとけ込む幸せ

34イタドリってどんな鳥????」
35コウヨウザンてどんな「山?」??
36美しい山
37ブナの森の生命に会う
38「象牙」がやって来た
39オコジョに出会う
40池にクラゲが・・・
41同志であったOさんを偲んで
420さんにちなんで
43受講生からの便り
44「命あふれる」フィールドで
45旧暦は自然暦!!・・・?
46はじめての笹の花
47あれは本当にダイヤモンドダスト???
48「先住民の英知との出会い」
49嵐の中の・・・・森に守られて

50戸隠の山で不思議な出会い
51 「言葉をもたんもんに挨拶するのは
        おかしいと思う時代がおかしかばい」
52「おいお前、毛が有るじゃないか」
53 疑似科学を考える

54雨が降ったら良い天気

55 「この枝、足があるよ」(鯱鉾蛾)

56馬刀貝(マテガイ)採りは、ゲーム感覚です

57 「森を自分が癒されるための道具にしていない だろうか・・
 〜樹林気功師藤田雅子さんのこと〜

58支えるということ〜 七條 孝昭さんを偲んで〜

59綿に足がついている!?

60森の中のホタル
61木は育つ場所を選べないから
62巨木との出逢い
63アンパンマンのエキス

64オッ!ヘビがいる。あれ!?
65静寂の音(シーン)に耳を澄ます
            「サウンド・オブ・サイレンス考」
66ウミウシさんとの出会い
67野の宝物に出会う 〜オオミズアオの輝き〜
68雷様は怖いなあ

69 あるヨギとの出会い
70虫好きの写真家さん

71巨大ミミズとモグラ
72 クモの網の輝きと不思議
73食べられるものを自分の感覚で
74 落ち葉に囲まれて大地になる〜大地の窓〜
75 夜の大地の窓


76生かされた男の話

77ぎんどろの木〜伝統を伝える人

78鈴子さんとアオギリ
79 「害獣」を助けてしまった話
80大槌安渡復興米を育てる人




人と自然の出会い旅00

はじめに


考えてみると、私は決して生物など第2分野の得意な学生ではありませんでした。
とにかくいろんなものの名前を覚えるのが、人一倍苦手なのです。
それでも、自然の中へ行くのは大好きでした。
仲間と、あるいは一人で山にいると随分心がやすらぎます。1日でも2日でも山の中にひとりぼっちで、楽しめてしまうのです。
だから、知ることよりも感じることを大切にする、ネイチャーゲームに出会ったとき、とてもしっくりするものを感じたものです。

そんな私ですが、ネイチャーゲームの主任講師として全国各地で講習を続けることで、次第に知識も含めた自然体験を重ねることになります。
それは、各地で出会うスタッフや参加者の中に、それぞれの「自然通」がおられて、そのパワーに影響されていつの間にか少しずつ入って来てしまうのです。これは、私だけのものにしておくのは、もったいないかも知れない。

ということで、ネイチャーゲームを通じて出会った、各地の自然や、おもしろ人間のことを紹介してみたいと思います。第1回は「バードウォッチャーには頭が下がる」です。こうご期待。
1999.6.19

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人と自然の出会い旅01

バードウォッチャーには頭が下がる

 ヤイロチョウという鳥がいます。とにかく派手な色をした鳥で、本には「本州中部以南に分布。少ない。深山の森林に住む夏鳥。ポポピー、ポポピーまたはホホヘン、ホホヘンと二声ずつ歌う」と書いてあります・・・実は、私はまだ見たことありません。
何でまた、見たこともない鳥の話をと思われるでしょうが、この鳥をめぐってバードウォッチャーの底知れぬ執念を見せられたのです。

鹿児島の霧島高原であったネイチャーゲームの全国研究大会でのことでした。全国研究大会では、公式プログラムとは別に、早朝と夜、参加者によるフリープログラムが、多様に企画されます。その中のひとつとして、神奈川県のTさんはヤイロチョウを見に行こうというフリープロを企画したのです。なんと、朝4時半宿舎スタート車で1時間もとばして山の中へ、さらに30分山道を歩いて現地入り、そこで30分ヤイロチョウを探して、又1時間半かけて宿舎に帰って来て朝食をとるという、ハードな計画なのです。
「それにしても、見るのたった30分?、本当にいるの?」とたずねますと、「事前に鹿児島の仲間に確認しているので、そこにいることは間違いない。もし見られなかったら、翌日も計画する」と言うのです。「うーん」とうなってしまいました。
結局、ばっちり見えたそうです。通常木立の中にいて見つけにくいのだそうですが、なんと梢の先にいて、全身をばっちり見ることができたというのです。

長年、バードウオッチングをしているTさんにとっても初めての体験。一緒にいっていた人たちと共に、それはもううれしそうに話してもらえました。翌週には神奈川からヤイロチョウを見るためのツアーが来るというので、備え付けの観察ノートに、その様子を書き残しておいたとのことでした。そのためだけに来た人が、見られなかったらノートを見て悔しがるだろうナァ・・・と。
 ところで、このグループにたまたま早く起きて、なにがなんだかよくわからずについて行っていたのが、千葉のOさん。彼女もしっかり見ることができたのですが、「うん見たよ」とあっけんからんと言うだけです。「あのTさんですら、初めてみる珍しい鳥らしいよ。」と言うと、「へーそうだったんだ」と行った調子で、あまりにも温度差があるので、なぜか私が一生懸命説明してしまいました。
 私にも、似たような体験があります。鹿児島の南薩少年自然の家にネイチャーゲームの指導員養成講座に行ったときのこと。事前の下見の時に、スタッフが珍しい鳥がいるのだと、双眼鏡で見せてもらいました。その鳥の名は、クロツラヘラサギ。ところが、私の方は当時、マガモもカルガモも区別の付かないレベル。サギも、コサギとダイサギやアオサギぐらいは何とかと言うレベルですから、なにがどう珍しいのかよくわからないまま「へーそうなんですか」と言った調子でした。
 後で調べて見ますと、この鳥世界で数百羽しかおらず、日本で見られるのは福岡とここだけと言う、希少種だったのです。今から思うと「惜しいことをしたなあ、もっとよく見ておくのだった」と悔やむのですが・・・。

 その後、Tさんなど多くの鳥好きの人たちの執念とも言えるような熱意に繰り返し触れることで、次第に鳥に対する興味がわいてくるようになりました。そうなって見ると、それなりに面白く、双眼鏡を持ち歩くようになってしまいました。カモもサギも少しは違いがわかるようになって来ました。
それにしても、鳥好きの人たちはすごいよなぁー。

と言うことで、次回は虫好きだってすごいよなぁーです。
1999.6.19

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人と自然の出会い旅02

虫好きだってすごいよなぁー

いろんな事があって、少しは鳥に興味を持つようになった頃、沖縄へ指導で行くことになりました。仕事が終わって新幹線と飛行機を乗り継いで最後の便で那覇空港へ。沖縄の知人が出迎えてくれて、深夜沖縄本島の北部にある名護市の青年の家まで、送っていただきました。

翌朝、半日かけて周辺のフィールドを歩き回りました。亜熱帯の生態系はとても興味深く飽きることがありません。
とある樹に近づいた時、黒っぽい鳥が飛び立って4〜50メートルほど飛んで林の中に飛び込んで行きました。「オッ」と思いました。「何だろう、カラスにしては小ぶりだし」「カワガラス?は、こんな所にいないだろうし」・・・「飛び去っていくとき、背中の方が緑色に輝いているように見えたし・・?」双眼鏡も持っていたのですがじっくり見る暇もなく、野鳥ハンドブックで見てもそれらしい鳥が分からないのです。

昼食前に現地スタッフと合流、自然観察指導員でもある事務局のUさんに、特長を色々はなしてみると、「それはカラスバトでしょう」ということになりました。実は、ハンドブックにも載っていたのですが、見た印象と絵が随分違ったのです。
本には、「からす‐ばと【烏鳩】 ハトの一種。全身黒色で、紫色または緑色の金属光沢がある。日本南部産。森林にすみ一見カラスに似る。天然記念物。」とありますから、間違いない。森の中に住む鳥だから、沖縄の人でもあまり見ることは無いのだそうです。それを、はじめて沖縄に来て見てしまったのです、「これって結構ラッキー」なんて思ってしまいました。(実は、前回登場のTさんもまだ見たことが無いのだそうです。)

この下見の時に、もう一つ珍しいものを見つけました。
トタテグモの巣です。漢字で書くと【戸閉蜘蛛】。
クモの巣(網)は張りません、傾斜地や樹皮に円柱形の穴を掘り、糸で蓋を作って住んでいます。
夜行性で、扉の外を獲物が通のを振動で感じると、扉をぱっと開けて捕まえてしまうというなかなかの戦略家なのです。
この扉というか蓋が、実にうまくカモフラージュされていて、周囲の土を使って作ってあるのですから(こけまで生えているのもあったりして)分からない、そこにあると指さされても分からない。
蓋を開けてもらって「アッ」といった具合です。講座の中で紹介して、ひととき盛り上がりました。
ところで、そんな特殊なクモを、「第2分野の苦手な」私がなぜ知っていたのかというと、
横浜の「こどもの国」で講習会があったときの事、スタッフの中にクモにくわしい人がいました。
彼(タマちゃん)は、クモ学会にも入っているぐらいのクモ好き。
下見の時に、一見何でもない土手を指さされても、分かりませんでした。
そして分かったときの驚きといったらありませんでした。

クモ博士のタマちゃんは、とにかくクモの話になると目が輝いてきます。
クモのことを多くの人に知ってもらいたい気持ちが、非常に強い人なのです。
同じ講座中にこんな事がありました。
フィールドビンゴというネイチャーゲームを、体験しているときでした。
フィールドの中を少グループで「チクチクするもの」とか「いい匂い」など16項目のものを探して歩きます。
その中には「クモの巣」もあったのですが、道ばたにとりわけ大きな女郎クモの巣(網)がありました。とてもしっかりした網なので、蝉も突き破ることができず、捕まってしまいました。
いくつかのグループが集まって来て、わいわいはじめました。
たまたま近くにタマちゃんがいました。クモについて聞きたがっている人たちと、クモが目の前にいてタマちゃんの目はもうキラキラと輝いています。
この高まりは無視できません、時間を制限して解説をお願いしました。
網が3重に張られていること、前後の網はゴミ捨て場としても機能している等々、蘊蓄はとどまるところを知りません、しかも面白い。
時間が来ても話題はつきないけれど、続きは夜にということでうち切りました。

こんな出会いがあったので、クモに興味がわいて、沖縄でもトタテグモ(正確にはリュウキュウトタテグモ)の巣を見つけることができたというわけです。

ネイチャーゲームの養成講座に来る人の中には、蛇やトカゲはもとより普通の虫がダメという人が結構います。カブトムシやコガネムシでもダメ、アブラムシだのクモなんかとんでもないという人がいるものです。
うれしいのは、講座が始まった頃は見るだけでも悲鳴を上げて逃げ出しそうな格好をしていた人が、講座の終わる頃には、嫌いなはずの虫を面白そうにジーッと見つめるようになっていることです。

この感覚があれば、レイチェル・カーソンが『沈黙の春』の中で指摘しているような、人間に都合が悪いからと、殺虫剤の空中散布で絶滅させようなどいう乱暴な事は、自ずと制限されることになるだろうと思います。

次回は、そこに山があるから登ってみたいのだです。

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人と自然の出会い旅03

そこに山があるから登ってみたいのだ

97年のネイチャーゲームの全国研究大会は、山形県の朝日町で行われました.
ネイチャーゲームの創始者のジョセフ・コーネルさんも参加して大いに盛り上がった大会でした。
この町には、大朝日岳という「百名山」のにも入っている山があります。そして、山麓には山形県ネイチャーゲーム協会の理事長でもある西澤さんの経営する山小屋「朝日鉱泉ナチュラリストの家」があります。(小屋の様子は、西澤さんが書いている何冊かの本に詳しいです)

以前から、是非、西澤さんの小屋をお伺いしてみたいと思いながら、西日本に住む身ではなかなか思うようにいかず、何度か挫折していました。全国研究大会の後、やっとこの山の家に泊まるチャンスに恵まれたのですが、日程的にどうしても登山するだけの時間がとれませんでした。山の家周辺の素晴らしい林やブナの原生林でのひとときはとても気持ちよかったのですが、小屋のベランダから見ることできる、存在感のある美しい大朝日岳を望みながら、登れないことをとても残念に思ったものです。何しろ深い山ですから、どんなに無理をしても小屋から往復で丸1日、普通なら山中でさらに1泊して2日かかるというのですから、その時の日程ではどうしても無理だったのです。

ところでコーネルさんは、当然自然大好き人間。日本へ来ても、指導以外の時も自然の中で過ごすことを望まれるます。そして日本各地の自然の中でも、西澤さんの小屋が最高のお気に入り、何度もこられているそうです。ところが、何度も来ていても、山頂を目指そうとはされないというのです。山頂をきわめるということには、そんなに興味がないようです。私が行った時も、同宿されていましたが、早朝から一人森の中へ出かけて一人の時間を楽しんだり、ベランダで大朝日岳に向かって座りメディテーションをするという楽しみ方なのです。

私はというと、昔から山へ行くのが好きで、登山家というほどではないけれど、高い山も低い山もたくさん登りました。10日前後をかけて北アルプスや南アルプスなどを一人で縦走なんて事をしていました。とにかくたくさんのピークに登りたい症候群です。趣味の一つであるサイクリングも、「地球に優しい」とう願いやそれ自体が楽しいとうこともあるのですが、もともとは山へ一人で登るのに、体力を落としたくないといから始めたものです。

それなのに、最近は休みという休みを、ネイチャーゲームやレクリエーションの指導で使ってしまうので、まとまって山登りに使う時間がとれません。活動の関係上、登りたい山のすぐそばまで行く事は多いのですから、余計に辛い。
大分では久住山の美しい姿を眺めながら、講座が終わったら最終の列車に間に合うように駅に急がなければなりません。新潟では妙高のアルペンチックな姿を3日間眺めていながら、登ることができませんでした。未練たらしく、山の近くの講座が決まると登山地図を買い求めてしまいます。地図を眺めながら、この登山口から登って、ここらにテントを張ってなどと、計画を幾通りも立ててみるのです。帰りの列車の中でもしみじみと地図を眺めたりしています。

そんなことが多いのですが、登ってしまったこともあります。夏休みに、長野県の高遠少年自然の家で講座を担当したときの事です。近くには、南アルプスと中央アルプスがそびえています。準備する暇がなかったのですが、出発するときになってどうしても、登りたくなってしまいました。とりあえず小さなテントとザックと登山靴だけは、荷物の中に詰め込みました。後は現地で何とかなるだろうというわけです。

講座が終わって現地のスポーツショップを探しました。ところが山の道具を置いてないのです。地元の人はあまり登らないし、よそから山へ来る人は全部持ってくるから置いていても売れないというわけです。そんなことではあきらめきれないので、雑貨屋で替わりに使えそうなものを買いそろえて山へ向かいました。久しぶりに本格的な山に登って、気持ちは高揚しているのですが、身体が思うように動かない。30キロ前後の荷物を担いで、日の出前から日没後まで、一日13時間前後ほとんど休憩もとらず歩き回れていたのは昔の話。大して無い荷物の重みと自重に耐えかねて、1時間も歩くと疲れてしまう始末です。仕方がないので、山頂で大休止。荷物を置いて、絵の道具を出しして、絵手紙描きです。2・3枚描いては、又歩きだします。日の出を見ては絵筆を取り出し、流れる雲に感じてはぼんやりと眺めてみる。そんな山行でした。

体力の衰えは嘆かわしいことでしたが、終わってみればたくさんの絵手紙が残りました。何よりも、心の中に多くの山の姿が残りました。それまでにない満足感の残る山行になりました。負け惜しみだけでなく、ゆっくりノンビリも良いものだと感じました。何年か何十年か先には、「山頂に行かなくても良いもんだ」という心境になれているのでしょうか。その時までは、「そこに山があるから登りたい」と思いながらあちこちの山を眺めることが続くのかなと思います。
 

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