シーン18クロンボー城(p35〜36)
0)旅人は コペンハーゲンの北にあるヘルシングァーElsinoreのクロンボー城(Kronborg Castle)にやってきました。15世紀に建造されています。その後火災に遭いますが、建築王クリスチャン4世によって修復されたそうです。写真でも分かるように、海に面して城としての防衛デザインが明確になっていると思います。
2000年に世界遺産に指定されています。
四角形の城です。北棟は王の住居(絵本では手前)、西棟は王妃の住居(絵本では右側)、東棟は王族の部屋(絵本では左側)ですが南棟は教会(絵本では上側)となっています。
シェイクスピアの戯曲『ハムレット』の舞台として有名な城で、毎年夏には城の中庭を使ってHAMLET SOMMER演劇が上演されます。 イギリス編でもハムレットは出てきました。ただし、シェイクスピア本人はデンマークを訪れたことは無いそうです。
この城は、アンデルセン童話の『デンマーク人ホルガー Holger Danske 』の舞台になっています。
ヘルシングァーElsinoreは、アンデルセンのラテン語学校の学生時代に校長の転任に伴われて、やって来た町です。1826年アンデルセンが21才の時のことでした。校長の自宅に寄宿しています。ところが校長夫妻の虐待のために半病人の状態になってしまいます。翌年、学校を中退してコペンハーゲンに戻ることになります。
by forest-doorさん アンデルセンの童話に「デンマーク人ホルガー」というお話がありますが、その冒頭はこんなふうです。 「デンマークに、クローンボアという古い城があります。イギリスやロシアやプロイセンの大きなふねが何百となく毎日通りすぎるエースレン海峡にのぞんでいます。ふねは大砲で「ズドン!」と、古い城にあいさつします。お城は大砲で「ズドン!」と答えます。こうして大砲は「こんにちは!」―「どうもありがとう!」というわけです。」 またこのお話では、城の地下の暗い地下室でデンマーク人ホルガーがこしかけていて深い眠りに落ちているが、夢でデンマークで起きることは何でも見ていて、もしデンマークが危険におちいったら立ち上がることが書かれています。デンマーク人ホルガーは、12cに「デンマークのオジェー」という叙事詩に歌われたデンマークの象徴的人物なのだそうで、それをもとにアンデルセンはお話を書いているのだそうです。 |
by forest-door さん旅人がデンマークを去っていきます。 最後に描かれているのは田舎の風景ですね。こうした田園風景の中、人々が落ち着いた暮らしを送っているのを見るとほっとします。 あとがきでも安野さんは 「小さいけれど、森や自然の牧場と、自分たちの国に誇りを持っているこの国の人たちに見習わねばならぬことがたくさんあると思いました。」と書いてらっしゃいました。 本当に暮らしやすい国とはこんな国なのかもしれませんね。 最後の頁に描かれたのは「人魚姫」でした。 安野さんによると「アンデルセンの、デンマークのシンボルのように思えたので」とのことですが、偶然にも先日講演をしていただいた先生に、アンデルセンを象徴するお話を選んでいただいたら「人魚姫」というお答えが返ってきました。 解釈はそれぞれでしょうが、ひとすじの愛とかなえられなかった悲しさ、けれど神様の愛を得る、といったところがそう思わせるのでしょうか。 アンデルセンの童話に満ちた旅でしたので、最後はアンデルセンの詩でしめくくりたいと思います。 「旅こそ人生」 春霞がたちのぼり そこここに緑が萌える 旅することは生きること 血潮は浮き立つ 太陽が誘い、花々は香り 優しい夏のそよ風が舞う 外へ、そう外へ!帆をあげよう 旅こそが人生だ! |