NPS(ナショナルパークサービス)のこと


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NPSは、国立公園局と訳されることが多いようです。アメリカ全土に376カ所(この数字には疑義があるかもしれません、スコット氏にいただいた資料によります)ある国立公園を管理運営する組織です。ヨセミテのように大きな国立公園も有ればサンフランシスコの金門橋の周辺のように比較的狭い範囲の国立公園も有ります。
国立公園内は、高い自治力が保障されていて、公園内の整備やインタープリテーションだけでなく、犯罪が起これば公園レンジャーには逮捕権・司法権があります。そのために拘置所も公園内に設置されていると言います。又、火事が起こればその消火はもとより、別項で説明しているように人為的な火事の操作も行っています。
ただ、何でもある国立公園ですが、野生動物を治療するための病院のようなものはなく、その必要性が生じた場合には園外につれてゆくことになるとのことでした。

ヨセミテではNPSの広報官であるスコット氏から約1時間にわたって、主にインタープリテーションについて説明していただきました。その概略を紹介したいと思います。

インタープリターの使命・理念は?
インタープリターという言葉は、一般には通訳者の事を意味します。アメリカにおいても、認知度は低く説明がいる仕事のようです。一般には公園レンジャーの方が通りが良いのですが、レンジャーの仕事は多様で、(大切ですが)その一部を構成する仕事だと言えます。
日本語では、自然案内人という表現が使われることが多くなってきましたが、アメリカ以上に仕事としての認知度は低いと言えます。
国立公園のインタープリターの使命は、人と公園(自然・歴史)をつなげる、架け橋です。(この意味で、言語の違う人をつなげるインタープリターが通訳さんになるわけですね)
どうしてこの公園がここに存在しているのかを伝えます。NPSとしてはできるだけ多くの人々が参加できるように色々なプログラムを用意しています。
どのように国立公園になったのか(ヨセミテは現在の指定の前に1864年リンカーン大統領がここを訪れ、ヨセミテバレーやマリポサグローブを州立公園として指定していたそうです)。例えば、この木は木材として役にたつとかこの動物は食べ物になるなどの生活との結びつきを伝えることで、この自然を守ろうという意識を喚起する。
ちなみに、説明にあたってくださったスコットさんは小さい頃からヨセミテに来て、パークレンジャーになりたくて、願いが叶ったようです。一般にヨセミテで働く人の多くはヨセミテを訪れ、その自然に感動し、その自然に関わる仕事にあこがれ現在の仕事に就くという個人史を持った方が多いようです。

ヨセミテにおけるインタープリターの採用基準は?
基本的に4年生大学の卒業者の中から採用している。非常に人気が有り希望者が多いので、フルタイムの仕事に採用されるのは難しい。多くの人は6シーズン(3年間)くらい季節採用された後に、フルタイム採用される人が多いようです。
採用されると、本人の希望で他の国立公園への移動ができるようです。一般に5年未満くらいで移動してゆく人が多いようですが、ヨセミテの場合は移動しない人が多いそうです。

インタープリターの養成とスキルアップは?
季節のスタッフは集団で採用する。
全国の国立公園共通の40時間のプログラムを実施する。
スキルアップは、テーマごとのレクチャーやハイキングでのレクチャーなど年に2〜3回行われているそうです。
公園内のNPS以外の組織に所属するインタープリターも含めて(強制力は無いが評価の高い内容なので自主的に参加してこられる)、インタプリテードマネジメントプログラム、月に1回ミーティングを行って、評価をし・確認をしあっている。
尚、評価については、インタープリテーションを行っている様子をビデオに撮りチェックするそうです。しかもチェックは全国376カ所の公園で評価できる人を養成している。その資格を持った人がビデオをチェックする。小さい公園の場合は、ビデオを送って評価してもらうそうです。ちなみにヨセミテ内に3人おられるそうです。
このほか、参加者のアンケートも、役立てておられます。

インタープリターの地位・待遇は?
そもそも、インタープリテーションはヨセミテで始まったものだそうです。カリフォルニア大学の教授がやっているのを見て、公園が取り入れたとか。
歴史が浅いことと、誰でもできるという認識もあって、インタープリターがプロフェッショナルの仕事として社会的には十分に認められていない傾向がアメリカにあっても有るので、このような厳しい評価によって、共通の力量を評価できるシステムが重要であると考えておられました。
そこで、NPS以外の組織のインタープリターと合同での研修を呼びかけています。具体的にはNPSの研修への参加を呼びかけておられるそうです。
社会的評価は上がる方向にあるそうです、それにともなって給料等も保障されるようにしていきたい。さらには、公園内だけでなく全国でインタープリターが(給料も含めて)できるようにしてゆきたい。

ちなみに、NPSの行うインタープリテーションは、国からの予算でまかなわれており、現在予算全体の6%を充てているそうです。したがって、来園者に無料で提供されています。有料化して、宿泊を伴うプログラムなどより質の高いものにするという事は難しいようです。その意味でも、ヨセミテ協会やヨセミテ自然学校などの半民間の組織が行うプログラムが大事になってくると言えます。

スコット氏












ラバによる輸送をするレンジャー


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