あなたもプロフェッサーって言われてその気になって

ヨセミテインスティチュート(YI)での最初のプログラムは、ネイチャーゲームで言う第1段階の熱意を呼び起こすエネルギッシュな(カワウソの段階の)活動です。「私は誰でしょう(2)」によく似たルールで、各自が額のところにおいたカード(自分では見えない)の物が何か質問をしあいながら推理してゆきます。相当の悪戦苦闘の後に、全員が分かるとこんどは、総てに共通する事があるから当ててみようとの提案です。文具用品から化粧品はては酸素などの無機質な物、大きな物から小さな物までもう多種多様でなかなか結論が出ません。なんと答えは「木からできるもの(作り出すもの)」でした。時計も入っていて、エーッと思いましたが、考えてみれば柱時計などは木が使ってあります。といことで、今日は木について学ぶことになりますと言うまとめでした。
動き回って、元気が出てきたところでカリフォルニアの気候・地形といった自然について立体地図を使っての講義です。彼女にって、カリフォルニア州は南北に長いうえに標高の高いシェラネバダ山脈があるので、熱帯以外のほとんど気候を持つ多様な自然を持つことが自慢でした。
彼女の説明で一カ所気に掛かったのは、サンフランシスコから東に進んでセントラルバレーに入ると、かってはワイルドフラワーの咲き乱れる自然があって、この草原をサバナであるというのです。日本の地理で教えているケッペンの気候区分では、サバナは熱帯冬季乾燥気候として教えています。ケッペンの気候区ではサンフランシスコ辺りが地中海性気候(温帯)から東に進んで砂漠気候からステップ気候に移行し高山気候(冷帯や寒帯の気候になります)と言うことになっています。アメリカ社会でのサバナの定義あるいは認識が違うのかも知れません。

予備知識を入れて、YIのすぐ近くにあるツオルミーグローブ(※グローブとは群れの意味でジャイアントセコイアが5本以上群生している場所を言います)への自然観察ハイキングです。シャーリーさんとジョシーさんの二人のインストラクターの案内で出発です。歩きながら、道の両側の植物の説明が続きます。花・木・キノコ・植生・・・参加者の興味は尽きません。少し歩くとすぐに質問が出てくるので、なかなか前に進むことができないのですが、これが又楽しい。
たっぷり自然観察を楽しんだところで、3つのグループに分けてそれぞれが一列に並んで、全員が目かくしをします。ネイチャーゲームの「目かくしイモ虫」です。それぞれに、インストラクター2人と通訳のマミさんがついて、誘導します。ゆっくりと進んだ後に、一人ずつ案内されて壁にたどり着きます。その壁は、温かくほのかに木の香りがします。全員がそろったところで、上を見上げながら目かくしをとります。
壁は巨大なジャイアントセコイアの幹でした。おおいかぶさるようにそそり立っています。これが、今回の旅で最初のセコイアとの出会いでした。このようにツオルミー(tuolumne)グローブの入り口に立つセコイアへの出会いプログラムは劇的な演出されたのです。
林の中で各自の夢を互いに紹介しながら、ゆったりと昼食をとります。食後、幹に巨大な穴を空けられて枯れてしまったセコイアのところに行きます。これはかって、観光目的に下を馬車で通られるように穴を空けたのだそうです。
ここで、新しいプログラムが提案されます。一人一人がプロフェッサー(教授)になって他のメンバーにセコイアについて講義しようと言うものです。まず、最初の一人がトレイル上を、皆から少し離れたところで、インストラクターからセコイアに関わるまめ知識を授けられます。納得すると、2番目の人を呼んで最初の人が講義をします。説明が終わると今度は3番目の人を呼び説明をはじめます。2番目の人は先に進んでインストラクターから新しいまめ知識を授けられます。3番目の人が最初の人から説明を受けると、2番目の人のところに言って説明を受けます。(終わると3番目の人は先に進んで豆知識をさずけられます)最初の人は4番目の人を呼んで説明をはじめます。こうして、全員が他の総てのメンバーに講義を行い、他の総てのメンバーから講義を受けることになるわけです。
教える行為を挟むことで、一方的に説明を受けるのと違って皆の意識がアクティブになります。
授けられた知識は・・・
・入植者たちが最初にセコイアに出会った頃の話。
・セコイアのコーン(松ぼっくり)と、そこに隠された種の事。(数千年生きるセコイアが一生のあいだに作る膨大な数のコーンの一つ一つに数百の種。それが成長できる確率は?)
・年輪の事
・樹皮の事
・根の広がりの事
・リスなどの野生動物との共生のこと
・水との関わり
・樹齢と木の大きさのこと
・火事との関係
・落雷と樹頂の形
・材木としての価値
・ジョンミュアの関わり・・・・・などなど
それぞれのプロフェッサーは、もともと自然への関心も強い仲間ですから、それぞれがインストラクターから授けられた豆知識に独自の知識を加えて組み立て直し、説明の仕方に工夫を加えたので、てんでに盛り上がります。子どもたちが参加者の時は、教えられた知識をそのまま伝えるだけが精一杯でしょうが・・・。こうなると、なかなか前に進むことができません。
途中、中学生のTくんのポイントには、巨大なセコイアの倒木がありました。根を広く張っても深く張ることの無いセコイアは、ともすれば根こそぎ倒れてしまうことになります。幹も根も腐りにくい材質なので、広がった根を付けたまま倒れています。どうした訳かその倒木は、幹の中心部に穴が空いて焦げています。のぞいてみるとずっと先で幹が折れていてそこから光りが漏れています。穴の大きさから見て、穴を通って折れたところまで行けそうです。早速チャレンジしてみました。次第にトンネルは狭くなりますが、デイバッグを背負ったままで、腰をかがめて歩けるくらいです。折れたところから外へ出ましたが、ザックをはずして炭で汚れることを覚悟すればもっと先まで行くことも可能でした。何mだったのでしょうか、30mくらいは優にあったように思います。50mを超えていたのかも知れません。人生最大の自然木のトンネルでした。
そんなこともあって、どんどん時間がたちます。全員が終わって集合地点に集まってきたときにはもう夕食の時間が迫っていました。大急ぎでYIへ向かうとなんと15分くらいでついてしまいました。そうです、ぐるーっと回るだけなら40分もかからないところを、7時間もかけたのです。・・・それはとても充実した時間でした。

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