自然と遊ぼう4(ネーチャーゲーム雑感)

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10.一生一度の出会い


 「沈黙の春」の著者レイチェル・カーソンは、ある夜、親しい友人と、小さな岬に出かけていました。遠くでブイの音がして、遠くにぽつぽつと灯りが見えるだけの静かな岬です。空には大小の星がきらめき、天の川が横たわっています。長年、自然と親しんできた彼女にとっても、それまで見たことのないような美しい星空でした。
 その満天の星空を見つめながら、彼女は考えました。もしこの景色が100年に一度あるいは一生に一度しか見ることのできないものだったとしたなら、この小さな岬は見物の人々であふれかえっているであろうにと。しかし、その星空は見ようと思えば、ほとんど毎晩見ることができますから、岬が人であふれることはないのです。そればかりか、その近くに住む人の多くは、その美しい星空を恐らく一度もじっくりと見ることがないのです。
 彼女は言います。「もしこれを二度と再び見ることができないとしたら」と自分自身に問いかけるなら、見過ごしてきた美しさに目を開くことができるようになるでしょうと。
 私が、そのような思いを強くするのは、夕空を見るときです。私の職場のある神辺町(深安郡)は、「夕日」(ギンギンギラギラ夕日が沈む・・・)を作った、葛原しげるさんの生地で、夕日の美しい町です。仕事が終わり、自転車に乗って帰宅する道筋は、西に向かっていますので、夕焼けを見ながらということが度々あります。そんな時、「二度と再び・・」と思って空を見ますと、簡単には見過ごせなくなります。見るたびに、違った空があります。赤い夕焼けばかりではありません。オレンジ色や桃色や紫色に広がっていたり、雲間からの光がスポットライトのように伸びていたりと、同じ状態は二度とないのです。
 そればかりではありません、同じ日の同じ場所でも刻々と変化していきます。その時、その一瞬を逃しては二度と再び見ることのできない空なのです。そう思うと、もう見過ごせません。ペタルを止めて、立ち止まり、変化していく空に見とれることになります。
 どうですか、「二度と再び・・」のおまじないを周囲の自然に振りかけてみませんか。そうすれば、私たちの身の回りのそこここに、驚異の世界が、広がっていることに気づくことになるでしょう。 

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11,自然への配慮


 学生時代、山友会に入っているというのに一向に山に行こうとしない友人がいました。そのことをからかうと、返ってきた返事が傑作でした。「友である山をふんづけてしまうことなんかできない」というのです。もちろん、これは彼一流のジョークです。ただ、そこには一つの真実が含まれています。人が、自然の中へ入ってゆくと、大なり小なり影響を与えてしまいます。そしてそれは、自然にとっては、余りうれしくない事の方が多いわけです。
 ネイチャーゲームをやっていますと、足下の草むらの中の小さな自然が、素晴らしいものを隠し持っていることを実感する事が度々あります。先日も、行事の下見で春日池公園(福山市)を歩いていると、「あっカマキリが」と声を上げる仲間がいました。彼女の指さす先には、茂みの中に今まさに卵を生みつつあるカマキリがいるではないですか。近くでバス釣りをしていた少年も呼び寄せて、皆で顔を寄せ集めて、見入ってしまいました。
 このような体験が重なると、冒頭の友人のジョークにも、真実味が増してきます。草むらを歩いてもその足下に、小さいけれど美しい花や面白い虫たちの世界があるのです。やはり、人は自然に近づくべきではないのでしょうか。
 香川に住むネイチャーゲームの仲間は、私たちの子どものころのように自然の中で遊ぶ体験を今の子にもと、保育所の子どもたちを連れてレンゲ畑に行きました。ところが、畑に入ろうとすると、中の一人が、畑の中に入ろうとする子どもたちを両手を広げてさえぎって言ったのです。「お花がかわいそうだから入っちゃダメ」と。
 レンゲの花は踏み荒らしても、翌日には何事もなかったように咲きそろっている、元気な花です。彼としては、そんなことを知った上で、子どもたちを遊ばせたいと連れていったのですが、止めようとするその子の心情も否定し難く、困ってしまったというのです。
 高層住宅に住み、アスファルトの道を歩く都会の生活も又、たくさんの他の生命の上に成り立っている事には変わりはないのですが、そのことを具体的には意識せずに生きていくことができます。
 逆に言えばだからこそ、生命を奪って「ごめんなさい」、生命を頂いて「ありがとう」という感性を持って、自然の中に出かけて、共にありたいと思います。

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12.大地の窓から


 見上げると、枝がいっぱいに広がり、木の間から見える空には、雲がゆったりと流れて行きます。そして、目の前の葉っぱの上をカメムシがおなかを見せてノコノコと歩いて行きます。
 「大地の窓」というネイチャーゲームをしているときに眼前に広がった景色です。このネイチャーゲームは、林の中に静かに横になって、たくさんの落ち葉の中に顔の一部だけ出して、埋めてもらいます。そして、落ち葉の窓を、大地に開いた窓であるとイメージして静かに感じるのです。
 ネイチャーゲームの目的を一言でいうと、「自然への気付き(=自然と私たちが一体であることに気づく)」ということになります。このことを、ストレートに体験することのできる活動なのです。
 以前、ある製薬会社がネイチャーゲームをイメージしたCMのシリーズを、流していました。その中の一つに使われていて、一躍有名になった活動です。数あるネイチャーゲームの中でも、体験しなくても、どんな気持ちになるのか想像しやすい活動ということもあるからでしょう、講習会などでも、是非体験してみたいゲームの人気ナンバーワンです。
 ところが、実際に体験してみると、頭の中で想像していた以上に自然との一体感が深く具体的なのです。それまで経験したことのない不思議な気持ちがわき起こってきます。あまりにも気持ちいいので、思わず寝込んでしまう人もいます。
 ただ、このゲームには二つのネックがあります。一つは、大量の乾燥した落ち葉が必要だということです。この条件を満たすには、クヌギやコナラなどのドングリの林があると最高ですが、松葉や杉の葉でもOKです。いい香がして、意外と気持ちいいものです。
 二つ目は、ツツガムシ(ダニの一種)の存在です。このダニにかまれると、ツツガムシ病(最初風邪のような症状ですが、放置すると重症になってしまいます)になる可能性があるので、ツツガムシ(なんと一番落ち葉の豊富な冬場に活動します)のいる地域(限定されます)では、冬にはできません。幸い、中国地方ではほとんどツツガムシは出ません。(岡山の限られた地域で、発症例があるにはあるようです。)
 ともあれ、この冬おすすめのネイチャーゲームです。たくさんの落ち葉を見つけたら、友達とあるいはご家族でご一緒にどうぞ。

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13 静かにサイレントウオーク


 数年前のことです。夜が更けてから、福山市山野町の山道を、ネイチャーゲームの仲間たちと歩きました。最後の民家を過ぎると、窓の明かりも街灯もない真っ暗な道です。月も無いので、わずかな星灯りだけが頼りです。
 次第に、皆の目が暗闇になれてきます。すると、不思議なもので遠くの山々や谷の様子までが見えてきます。何より、自分たちの気持ちが周囲の自然にとけ込んで行きます。夜の怖さより、夜の豊かさを皆で感じながら、ゆっくりと歩いて行きました。
 夜の静けさに、心と体がなじんだ頃を見計らって、来た道を「サイレントウォーク」というネイチャーゲームをしながら帰ることにしました。まず二人組を作ります。私は当時小学生だった息子と、ペアを組むことにしました。この活動(ゲーム)では言葉を使いません。その理由の一つは、言葉を使うと、動物や虫を驚かしてしまって、ありのままの自然が見ることができないからです。理由の二つ目は、言葉を使うときの人の気持ちは、波だってしまい、自然のありのままを受け入れる力が低下してしまうからです。言葉を使う代わりに、軽く指さしたり、互いの表情を、相手が感じているものを共有したいと思って、見るのです。
 静かに歩いて行きますと、心が落ち着き、いろいろな自然が五感を通じて入ってきます。キリキリキリキリ..。たくさんの虫の音が響いてきます。その一つに的を絞り、二人で近づいて行きます。鳴き声はするのに姿は見えません。あやしげな草を、二人でゆっくり取り除きます。すると、草の奥にいました。鳴き声の大きさに比べて、予想外に小さな虫の姿を見つけて、二人顔を見合わせ、目を丸くして、ニッコリ。近くにいた別のグループも顔を寄せて来てニッコリ。何人もの人がすぐそこまで近づいているのに虫たちは、鳴きやみません。
 ライトの先に白く浮き上がる不思議なキノコやクモの巣のきらめきや木の枝の面白い形などなど。たっぷり1時間、小学生の息子は、目を輝かして、無言の約束をしっかり守りました。
 この活動(ゲーム)は夜でなくても早朝・昼間でもOK。必要なのは、人工の音の少ない静かな自然と、参加する人たちの、自然をあるがままに受け止めて見たいという気持ち。そして、互いに分かち合いたいという気持ちなのです。

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