を遊ぼう」5-4

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シーン13闘牛場(p25〜26)

0)旅人は 闘牛場の前にやってきました。どこの闘牛場でしょう。マドリッドの南東の街チンチョンChinchonだという説、ロンダの闘牛場との説、セビリアの闘牛場との説が有ります。関わっている物語からするとセルビアのマエストランサ闘牛場が適切です。ところが・・・
 そもそも、闘牛場はそれぞれの街の大広場に、仮設の柵をもうけて催されていました。しかし、それでは建物の角に牛が逃げ込んだり、開催ごとに仮設工事と取り片付けが必要です。そこで、18世紀になると円形の専用闘牛場の建設が始まります。ロンダもセビリアも常設の巨大な闘牛場です。これに対して、現在でも伝統的なマヨール広場(Plaza Mayor)を使って闘牛を行う所も有ります。その一つがチンチョンなのです。少なくとも、闘牛場の雰囲気や、周囲の様子は、チンチョンです。そして、最後の決め手、安野さんはあとがきで『80日世界一周』の映画(1956年:米国)に触れておられます。撮影に使われた闘牛場はチンチョンでした。

80日間世界一周の予告編を見ることができます(闘牛シーンあり、短時間ですがチンチョンの闘牛場であることが分かるシーンが有ります)
http://homepage2.nifty.com/e-tedukuri/AroundTheWorldIn80Days.htm

1)左上 映画『カルメン』の撮影中です。男の人がナイフを持ち、フラメンコドレスを着た女性を刺そうとしています。女はカルメン、男はカルメンのために兵舎を脱走し、密輸や山賊をする中に入り、カルメンの夫を決闘の末に殺してしまったホセです。
 カルメンは闘牛士とつきあっているのです、「なにもかも水に流すからと」いうホセに、彼女は「カルメンはどこまでも自由だ」といいきります。そして、ホセはカルメンを殺してしまいます。この場面合の撮影でしょう。

2)闘牛場の中では、ぎりぎりでスラリとかわすはずのマタドールが、逆に牛に倒されてしまったようです。他の闘牛士が駆け付けています。牛の気を引くためムレータ(赤い布に木の棒をついけたもの)を振っている人もいます。 
 『カルメン』に出てくる闘牛士の結末ではありません。
 ビセンテ・ブラスコ・イバニェスの小説『血と砂Blood and Sand』が有ります。この小説を原作として、1922年米国で映画化されています。『血と砂』の主人公ガリャルドは、最後に牛の角に脇腹を刺されて、闘牛場の黄色い土は血の色に染まります。主人公の妻の名はカルメンです。スペインでは、カルメンはよくある名のようです。ちなみにこちらのカルメンは、貞淑な妻です。逆にガリャルドの方が貴族の女と浮気をして、自堕落な生活をしたあげく、集中力を欠いた状態で闘牛に出て刺されます。苦しい息の中で、連れ添うカルメンに許しをこいながら息を引き取ります。

 1922の映画は、サイレントでした。1941年と1989年にリメイクされています。89年のものはスペインで映画化されています。絵本はこちらの映像からとられているようです。
 この映画の舞台になっている闘牛場はセビリアです。

スペインで大学の先生をしておられた加瀬 忠さんの「マドリッド通信」の中で
スペインの春・秋祭りの「闘牛」に、実際に闘牛士が、トロス(牡牛)に倒されたシーンを見た時のことを書かれています。闘牛の全体の流れも良く整理されていて、分かりやすいです。
http://kasespain.muybien.info/tushin/tushin118.htm

3)闘牛場の柵のあちこちから、助けにゆこうと飛び出しかけている闘牛士がいます。

4)闘牛場は、普段はマヨール広場として使われている所です。バルコニー付きの建物が見物席となり、牛の突進を避けて闘牛の場所を区切るために見物席の前に板で仕切っています。チンチョンの闘牛場はこのように使われています。国旗柄に塗られています。
 

5)バルコニーを使った観客席の右端 二階席にカバとライオンがいます。・・・これはいったいなんの暗示でしょう?何か、絵本があるのでしょうか??
 あるいは、動物虐待であるとして非難されている闘牛ですから、動物代表で視察にきているのでしょうか。ちなみに、百獣の王ということになっているライオンですが、雑食で肉食もするカバはそれ以上に強いそうです。牛が負けたら、代わりに出るつもりでしょうか。
 写真はグラナダの闘牛場の上部の観客席です。円形の闘牛場ですが、絵本の様子とよく似ています。

6)2階のバルコニーには、ライオンから右に、4人は闘牛場に目がいっている男性。男性が3人、真ん中の女性は左手を頬にあてて手を組んでいます。「アッ」と手を口に持っていったのでしょうか。
7)男性5人が続いて、その隣は、家と家をつなぐようにアーチが作られている部分でしょう。

8)アーチの左側は、カップルの観客が4組続きます。
9)一人おいて、2階の屋根のひさしの所にも、国旗柄の飾りが施してあります。
10)緑の服の人は、手を前について身を乗り出すように、事故を見ています。
11)茶色の服の人は膝に手を置いて、左の手を前に置いている人と話しているようです。これは、大変なことになったと思っているのか。
12)二人置いて、立って腕を組んでいる人がいます。やはり、事故を心配しているのでしょう
13)建物を移って、左端の人は、望遠鏡で見ています。

14)1階席にも沢山の人がいます。手を挙げて、驚きをあらわしている人もいます。

15)右下 家の間から闘牛場の中をのぞいている人達がいます。チンチョンの町にも、右の写真のようなところがあります。

16)槍を持って立っている人は、何をしているのでしょうか。番兵?通りの向かい側にも立っています。

17)プロテクターと目隠しを付けた馬が5頭います。闘牛の前半で、ピカドールが馬に乗って槍を刺すときに使われる馬です。馬が闘牛の攻撃で傷つかないように工夫されたものです。耳栓もしています。

18)下の路地で 椅子に座って籠を作っている人がいます。壁には籠が吊してあるので、販売中かも知れません。(※籠は、ロバに荷物を載せるための背籠であろうと思われます)

19)女の人が籠を持っています。
20)黄色の実の付いている樹は、オレンジでしょうか
21)木の向こうに男女が立っています。
22)壺をテーブルの上と下に並べています。バルコニーの下に吊しているのは看板代わりでしょうか。お客さんとお店の人がやりとりしています。壺は水差しのようです。
これは、壷を売っているのではなくてアグワ(水)を、売っているのだと思います。空気が乾燥しているので、壷から水が蒸発してゆきます。そのため、気温より5〜6度冷えた水になるようです。ちなみに、飲み方は、コップを使わずに壷を高く掲げて、口をつけずに一気にのどに流し込むのです。コップも用意されているようですが・・・こちらがスペインらしいのです。
テーブルの下の大きな壷は、水をためておいてある壷でしょう。

23)倒された牛が、馬に引かれています。ここがマドリードやセビリアの第1級や第2級の闘牛場なら、闘牛場に解体場もついていて直ちに解体するようです。チンチョンにはどうなんでしょう。別の所へ連れて行くのでしょう。もちろん、牛肉は食べられることになります。

24)壁の所に男性が一人座っています(製本の関係で見えにくくなっています)
23)壁には、2003年と書かれた闘牛のポスターが貼られています。
24)修道女が二人立っています。この人たち、ロシオのシーンでは別の修道士と3人で立っていました。

25)子どもが二人かけています。セビリアのシーンでも走っていました。

26)男が二人立って、右側の男が指さしています。修道女を指さすのは、礼儀に反することでしょうから、引きづられている牛のことを話しているのでしょう

27)女性が二人立っていて、台車を押している女性とバケツを持った女性が話しています。バケツには何が入っているのでしょう。
28)テーブルに飲み物が沢山並べられていて、男の人が椅子に座っています。お客さんでしょうか。隣の赤い水玉の女性が売っているのかな。
 チンチョン名物のアニス酒Anisではないかと思います。
 あるいは、チンチョンにはゴヤの「チンチョン伯爵夫人」の絵をラベルに使ったワインが売られているそうです。

29)鉢植えの花を売っています。シャコバランのように見えますが。ゼラニウムベゴニアが多いとも。
30)旅人の向こう側に、ほぼ同じ雰囲気で馬に乗っている人がいます。

31)水場が有ります。

32)ひったくり事件が発生しています。青いスカートの女性のハンドバックを、ひったくって走っている男がいます。併走している男は共犯者でしょうか?それとも逮捕しようとしているのか?、左端で待っている男は・・・待ちかまえてこの男をつかまえようとしているのか、それとも共犯者か? 旅人の後ろの白い服の女性と太鼓腹の男性は、驚くだけで何もできていません。

33)も走っています。この犬は、結婚式のシーン以来これで5回目か6回目のピカソの犬です。

34)フラメンコ衣装を壁に吊しています。売っているようですが?
 店の前にはベンチや椅子に座った男性がいて、入り口の所に立っているのも男性です。女性の服を売る雰囲気とは違うような。ただ、ベンチの所に立っている男性が声をかけているのはバックを持って歩いている女性です。

by forest-doorさん

お店やさんでは壁に陶器の皿が飾られていますね。スペインでは、マジョリカ焼き、タラベラ焼き、グラナダ焼き、セビリヤ焼きなどがあります。
グラナダ焼きとセビリヤ焼きはイスラム文化の影響を大きく受けていて、マジョリカ焼きやタラベラ焼きは色彩豊かなものが多いそうです。


35)建物の入り口に、何か書かれていますが、読みとることができません。さらに、壁に1852と書かれています。1852年のことだと思われますが、このシーンとの関係がよく分かりません。これが1872年なら80日間世界一周の年ですが・・・スペインで1852年というと、建築家ガウディの生まれた年ですが・・・関係なさそうです。
 スペイン最大のワイン産地は、リオハだそうです。そこのワイン生産者マルケス・デ・ムリエタ(Marques de Murrieta)の、創業が1852年です。そして、会社の建物が、このシーンに使われている建物の雰囲気に似ているので、これが答えかも。すると、28)の飲み物はワインかも。

36)壁に沢山の飾り皿があります。女性が二人感心して見ています。
37)女の人の持った鏡に、雄鶏と雌鳥が映っています。
 これは、43)で紹介する、国王フェリペ4世と女王マリアーナを意味するのだと思います。

38)壁に付けた国旗柄のテントの下で、売っているのはチョリソと飲み物でしょうか。子どもを2人連れたお母さんが買っています。チョリソ屋さんは3シーン連続の登場ですが、今度は売っている人が女性です。

39)男女のカップルが歩いています。女性はつばの広い帽子をかぶっています。
40)警官か軍隊のような服装の二人がいます。闘牛場の警備か?カルメンのホセの関係者か?王家の護衛できているのか?

41)テントの下は果物屋さんでしょうか、箱に詰められた赤いものは・・トマト?リンゴ?、テーブルの緑はスイカ?メロン?、吊してあるのは・・・キノコ??
42)丸いテントの下は、洋服を売っているようです。

43)建物の隙間から10人ほどの人が闘牛をのぞいています。最後尾の男性は、とても足が長いですね。
入り口の所は、チンチョンの右の写真の家がモデルだと思います。


44)草原に画家や古風な風俗の女性たちがいます。
ディエゴ・ベラスケスの絵、「ラス・メニーナス(女官たち)」です。中央の少女が、王女マルガリータ、周囲の人は着付けをする女官や道化師たちやお付きの人や犬です。
絵筆を持っている画家は、ベラスケス本人です。画家が今描いているのは、国王フェリペ4世と女王マリアーナです。絵本では、テントの所に後ろ姿が見えている二人の人の所あたりにいたはずです。元の絵では、バックの鏡の中に写っています。基本的にこの絵は国王夫妻が見ている形で描かれているわけです。「ラス・メニーナス」は、国王の居間に飾ってあったようです。
 絵本には鏡が描かれていませんが・・・36)の鏡に写る雄鶏と雌鳥で暗示しているのでしょう。

 さて、フェリペ4世と先妻イザベル(フランス王の子)の末娘マリア・テレサ(Maria Teresa、フランス名:マリー・テレーズ)は、フランスのルイ14世(「朕は国家なり」の人です:テレサとは父方でも母方でも従兄になります)と結婚します。スペイン王家で、フェリペ4世の跡を継いだカルロス2世(テレサの異母弟、絵のマルガリータの弟)が死亡して跡継ぎがいなくなります。ルイ14世は、これを機にをスペイン王にしようとしますが、これがきっかけで「スペイン継承戦争」になります。いろいろ有りましたが、その孫がフェリペ5世としてスペイン国王になります。このときフランスからやってきて宣誓式を行ったのが、チンチョンなのです。というわけで、この家族とチンチョンの関係は深いわけです。

絵の解説
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%82%B9
by forest-doorさん

「ラス・メニーナス」とは「女官たち」の意味で、中央のマルガリータ王女のまわりには女官や道化師たちがいます。
左端で絵を描いているのはベラスケス自身。ベラスケスが国王夫妻の絵を描いている(奥の鏡に国王夫妻が映っている)ところにマルガリータが入ってきたという設定のようです。
ただマルガリータを描くのではなく、国王夫妻から見た視点で描いているんですね。

以前に見た、滋賀県立美術館の展覧会「コピーの手法」展では福田美蘭さんがこの視点の転換とでもいう手法で、マルガリータの左にいる女官から見た視点での絵を出品されていて非常におもしろかったです。
また、小川信治さんはマルガリータだけがいない絵「WITHOUT YOU ラス・メニーナス」を描かれてました。
ラス・メニーナスはよく知られている絵だけに、それをもとに引用しやすいんでしょうね。
でも、知っている絵でも、すこし視点を変えてみると全く受ける印象が異なってくるものですね。


45)テントの左で王女たちを見ている女性二人も、関係者のようです。
46)画家のアトリエの建物のはずが、引っ越し途中の家具のように描かれています。

47)荷物は、馬車に乗せています

48)馬の横では、握手をしている男性がいます。友人でしょうか・
49)椅子やテーブルにグランドピアノまであります。ピアノの運搬は無理なように思いますが。
50)闘牛用でしょうか、6頭の馬がつながれて、男たちが世話をしています。
51)映画撮影を気にしながら、手をつないで歩いている若い男女がいます。男の人は、彼女がカルメンのように離れていかないように手をつないでいるのかな。

52)ベンチに座った、二人は何を話しているのでしょう。杖を持っているので老人だと思いますから、若い日の恋について話しているのでしょうか
53)赤い旗を持った人達は、関係者以外が撮影現場に入ってこないように、警備しているようです。

54)ここの壁にも大きな闘牛のポスターが貼ってあります。

55)ロバに荷物を積んだ女性が鞭を持ってゆきます。

56)壁に、十字架が描かれています。
右の写真は、チンチョンでは有りませんがよく似ています。

57)鞄(瓶?)を持った男性が歩いています。

スペインの闘牛は、動物虐待なのか守るべき伝統文化なのかで、意見の対立が有ります。先に紹介した加瀬さんのHPで、文化の面が分かりやすく解説されていますが、次のブログも闘牛がどういうものか理解するのに役立ちます。
宮元 友樹さんの「 Carpe Diem 〜熱情のリーガ・エスパニョーラ観戦記〜」というブログの中の
『闘牛〜真実の瞬間〜(後編)(前編)』
http://carpe-diem08.jugem.jp/?cid=7

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シーン14マヨール広場(p27〜28)


0)旅人は マヨール広場のある町にやってきました。前のシーンに続いてチンチョンの町のようです。闘牛場もこのマヨール広場もそっくりそのままではありませんが、非常によく似ています。
 17世紀の事ですが、時のペルー総督チンチョン伯爵の妻が、マラリアに倒れます。このとき、先住民族の侍女が、キナ(quina・機那)の樹皮から抽出した秘薬を用いて助けます。夫人は、キナを集めてマラリアに備え人々を救ったという伝説があります。そして、この秘薬からマラリアの特効薬キニーネが発見されます。これに敬意を表したスウェーデンの博物学者リンネは、キナに「チンチョナChinchona」という学名を与えたのです。

チンチョンのマイヨール広場から360度の映像を見ることができます。
http://www.ciudad-chinchon.com/tour/360_plaza/index.htm

チンチョンのマイヨール広場の大きな写真

1)左上 羊の群れがいて、杖をついた羊飼いが犬を連れて移動しています。

2)羊の群れを見てドン・キホーテが突進しています。羊に見えるのは幻術のせいで、実際には衝突する軍隊であると思いこんでの突進です。サンチョはあれは、本物の羊だからと必死で止めています。
 この後、何頭もの羊を倒してしまいます。当然のことながら、羊飼いは怒り、旧約聖書に出てくるダビデのように、投石紐で反撃します。鎧をつけていますが、鎧の上からでも随分ダメージを受けてノックアウト。その上、歯がぼろぼろになってしまいます。ところで兜をかぶっていますが、どうもデザインが金だらいです。このときはまだ、金だらいを手に入れていなくて、顔の覆いのあるデザインのはずですが、安野さん間違えたのか、承知でこのデザインにしたのか?
3)樹皮をはいでいます。木はコルクガシです。コルクをとる目的の他に、防砂林のためにも植えられています。その上、ここに生息する小動物の生態系も守っています。はがした樹皮は9年くらいで再生するようです。環境に優しいですね。
 コルク(英:Cork)は「コルクガシ(Cork Oak)」のコルク組織からとれる物質。コルクガシの樹皮をはいで製造する。主な生産地はポルトガルであり、全世界の生産量の70%以上を占める。ほか、スペイン、イタリア、モロッコなどで生産される。」ということですから、スペインでこの風景が出てくるのは納得ですね。

※注 実は、チンチョンにコルクガシが栽培されているかどうかは確認が取れていません。コルクガシの北限の地図を見てみると、チンチョンあたりが境になっています。実際にはどうなのでしょう。チンチョン付近に行った事がある人は、情報ください。
 安野さんの場合、他の地域を組み合わされることはありますから。

 ちなみに、日本にあるアベマキ(大きな実のなるドングリです)にもコルク質の樹皮ができます。戦中戦後には輸入コルクの代用で、アベマキの樹皮からもコルクをとっていたようです。
ちなみに、皮のはぎ方は、「上と下に輪状に切れ目を入れ、縦に一筋切れ目を入れて、バリッと剥がす」ようです。絵本では、この様子が良く出ていますね。

日本・ポルトガル コルク工業会HP(コルクの生産について詳しいです)
http://www014.upp.so-net.ne.jp/pjcia/index.htm

4)樹皮をはがしている男の人が長い棒を持っています。樹皮をはがす道具のようです

5)樹皮を荷車に積んでいます
 荷車の馬と荷台に乗った人は闘牛場のシーンで荷物を運んでいた人たちの中に、似たようなポーズの馬と荷台の上の人が描かれていました。

6)作業の様子を見ている白ウサギがいます。隠し絵風です

7)樹皮をすっかりはがされた木があります。はがした年を書いておいて9年間は手を出さないわけです。樹皮の成長も形成層のところですから、表面はそのまま残るわけです。

8)左下 葬儀が行われています。今まさに棺が穴に入れています。このシーンは元になる絵があるような気がします。
人物が貴族であることなど設定が異なるのですが、エル・グレコの傑作『オルガス伯爵の埋葬 (Entierro del conde de Orgaz)』が、今まさに埋葬しようとする図柄です。神父の存在や十字架を持つ人、聖書を持つ人等、重なる部分も多いので、一部参考にされたのではないかと思います。

9)スコップがあります。前の男性2人のうち、一人は、白い物を持っています。弔辞でしょうか?

10)子どもを連れた女性が2人います。お母さんでしょうか。あるいは、例のシスター2人

11)長い十字架を持って立っている人がいます。
12)赤い服の人は、神父さんでしょう
13)抱き合って泣いている人が2組、亡くなられたのは、どんな人なんでしょうか。

14)荷車を引いた馬をつれている人がいます。棺を運んできたのでしょう。葬儀が終わるのを、少し離れて待っています。

by forest-doorさん

P.27左下ではお葬式が描かれ、お棺が地中に埋められているところのようです。
泣いてそばの人にすがる女性がいます。安野さんはこの絵本のシリーズで、結婚式やお葬式を多く描いているように思います。人と人との出会いと別れ、そんな涙する人生のひとコマを切り取りたいと思っていらっしゃるのかな?

15)墓石の細工をしている石工がいます。第1巻にも出てきましたが、クールベの『石割人夫』からのようです。

16)墓石やさんの前では、紙を広げて話をしている2人がいます。墓石の契約にこられてようです。今,葬儀中の人の墓石でしょうか。

17)雄鳥1羽と雌鳥が2羽います。
 前のシーンでは、鶏夫婦はフェリベ4世夫妻を暗示していました。すると、ここの鶏も・・・半ば妄想ですが。白い雌鳥は、チンチョン伯爵夫人マリア・テレサであろうと思います。右の絵は、ゴヤが描いた『チンチョン伯爵夫人』です。少女のような顔です。彼女は17歳の時に、政略結婚させられます。相手は、短期間に出世した宰相マヌエル・ゴドイ彼に箔を付けるための結婚でした。従って、ゴドイが雄鳥。そして、もう一羽の雌鳥は、だれか?ゴドイを宰相に押し上げた愛人がいまいした。ときのカルロス4世の王妃マリア・ルイサです!!。「王以外は知らぬものはない」愛人だったとか。そのほかにも、ペピタ・トゥドーなど強力な愛人がたくさんいたようで、大変なもて男。マリア・テレサも苦労したのでしょうが、彼女はとても誠実な人だったようで民衆から同情されていたようです。
後に、ゴドイがナポレオンとフェルナンド7世(カルロス4世の子)によって失脚したとき、彼女は追放されませんでした。
  ちなみに、ゴヤ自身もチンチョンに住んでいたこともあり、右の絵以外にも『聖母昇天』の絵が町の教会にあります。

18)小屋の前で椅子に座っている人は、背籠を作っているようです。
 前のシーンにもいました。
一度帯状に編んだものを螺旋状につなげて籠にしています。

19)カゴをかかえた女性がいます、購入したのでしょうか、あるいは売りに出ているのか?前のシーンにもいました。

20)荷物を積んだロバを2頭つれて歩いている女性がいます。積み荷は何でしょう。

21)手紙を持った郵便配達の人がいます。これで、4人目です。

22)車輪を直している人たちがいます。青い服の人が使っている道具は、何でしょう?壁には大きなコンパスのようなものなど、工具がセットされています。

23)ここら当たりの、建物はマヨール広場の建物と少し雰囲気が違いますが、チンチョンにこのような建物もあります。
 屋根だけでなく、煙突もそっくりです。

24)広場の中に屋根越しに、緑のスカーフの女性と杖を持った女性が見えます。

25)赤いコートに緑のマフラーのガイドさんの案内を聞いている、観光客の人たちがいます。チンチョンはマドリードから車で約1時間。静かな、スペインの田舎を体験したい人たちがやってくるようです。
観光客の一人は、松葉杖をついています。

26)観光客の後ろの、1階部分にたくさんの樽が積んであります。何でしょうか?
 チンチョンの名物の一つにアニス酒Anisがあります。アブサンに近いリキュールで、蒸留酒にアニス油を使って作るそうです。醸造所は、広場にはないのですが、それを暗示させているのではないでしょうか。

27)路地を子豚をつれて歩いている女性があります。これは、何を意味するのでしょう?不明です。

28)バルコニーの下のベンチに6人の男性が座っています。たぶん、のんびりとおしゃべりしているおじいさんたちでしょう。チンチョンの町も高齢化が進んで、こんな雰囲気だそうです。

29)扉の横の壁に、緑色に人物のような物が画かれたのポスターのような物が張られています。これは何でしょう。
30)杖をついた女性が歩いています。スカートの雰囲気が、チマチョゴリみたいですが?
31)4人の男性が、30)の女性を見ています。やはり珍しい存在のようです。

32)子どもたちが4人でサッカー遊びをしています。
33)男女の子どもが話しています。

34)十字架の掲げられた、水場があります。十字架はありませんが、同じような水場が、チンチョンのマヨール広場にあります。
 十字架は、巡礼者の十字架だと思います。チョンチンの町の別のところにあるのでしょうか。

35)観光馬車があります。御者は、馬に餌を与えています。
36)お客さんは男女とお母さんと子どものようです。子どもが指さしているのは、サッカー遊びの子どもたちでしょうか?30)のおばあさん?

37)子連れの女性が、花束を持って出迎えています。

38)煙突の上にコウノトリの巣が3つあります。コウノトリも6羽います。

39)左のコウノトリの巣の左の家の壁に、赤い棒のような物がぶら下がっています。ニンジン?トウモロコシ?そして、その隣に白くて丸い物が連なっています。こちらは、チンチョンの名物の一つニンニクであろうと思われます。
右の写真は、チンチョンでつるしてあるにんにくです。

40)川沿いの家には洗濯物が干してあります。
41)洗濯物の下で、長い棒を持った子供が2人います。頭上には蜂の巣があります。形状からすれば、スズメバチのようです。冬場の空き巣ならともかく、ぶんぶん飛んでいます。とても危険な事です。よい子は絶対まねしないように。
 ところで、このスペイン編には、牛追い祭りのp10にも蜂の巣が描かれています。何故でしょう??
スペインに、特別蜂が多いわけではないと思いますが。
 たぶん、スペインのノーベル文学賞受賞作家カミロ・ホセ・セラCELA, CAMILO JOSEの『蜂の巣(La Colmena )』の暗示ではないかと思われます。 映画化された『蜂の巣』は、1982年のベルリン映画祭で金熊賞を獲っています。ただし、内容に蜂の巣が出てくるわけでは無いようです。

42)一本橋で、山羊が向かい合っています。旅の絵本の第二巻イタリア編の製材所のシーンのp12でも描かれていました。ラ・フォンテーヌの寓話のなかから「二匹の山羊」のようです。
お話では、どちらも譲らず・・・結局二匹とも谷底に墜落ということになります。
高知県立美術館でシャガールの絵を見ました。シャガールはら・フォンテーヌの寓話の各話に絵を描いていて、その多くが展示されていました。
この話は、マルティン・ルター(Martin Luther)(1483-1546)の『卓上語録』にすでに収録されています。ルターは、何を参考にしたのでしょうか。
 ネパールの教科書にこの話が紹介されているようです。「ヒツジとヤギ」という題です。
http://www.page.sannet.ne.jp/t-hata/roki/textbook/hituji.htm
キリスト教では、羊はキリスト教徒を象徴するようですから、どちらかというと山羊より羊を上におくように思いますが、ネパールでは山羊の方が上のようです。

43)山羊の一団が小屋に帰ってきています。女性が、小屋に入るように指示しています。
44)犬を連れたおじいさんが山羊を追ってきたようです。

45)山羊の中の一頭(白山羊)が、橋の中程で41)の2頭にやめておけと、話しかけているようです。
 橋を渡る山羊といえば、『三匹のやぎのがらがらどん』が思い出されます。北欧民話ですが・・・。子どもが大好きな絵本です。
 がらがらどんとくれば、橋の下にはトロルが待ちかまえていなければなりませんが?そちらの方はいないようです。あるいは、茶色の岩に見えるのがトロルか?

46)橋の下には、トロルではなくお母さんたちが3人洗濯しています。

47)ネコがネズミを追いかけています。そして、ネズミの逃げる当たりにブルドックがいます。これは、アメリカのアニメですが『トムとジェリー』ですね。逃げるジェリーを追いかけるトム、この後、休んでいる犬のスパイクの足を踏んづけるかして、トムがのされてしまうパターンです。

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シーン15城塞都市(p29〜30)

)旅人は 長大な城壁に囲まれた街にやってきました。マドリードの西北西に約87kmの位置にあるアビラ(Avila)です。
この街は、レコンキスタの進展期の11世紀末、キリスト教徒が奪還します。イスラム側の熾烈な反撃に対抗すべく城壁を築いたのです。城壁は茶色い花崗岩で作られ、高さ12m、厚さ3m、20m間隔で築かれた88もの堡塔(ほとう)がある強固なものです。
 「アビラ旧市街と市壁外の教会群」として、1985年に世界遺産に登録されています。

Avilaを紹介する英文のHPです
http://www.travelinginspain.com/Avila.htm

1)左上 城壁の中では、ダンスを楽しんでいる人たちがいます。フラメンコでしょうか。ギターを弾く人、マラカスを振る女性、手拍子を打つ女性人たち、それにしても中央で女性を手をとって踊っている男性の足の細いこと細いこと。

2)子どもたちも、大人をまねて踊っています。

3)樽を積んだ小屋があって、男性が何かしています。ワインの樽でしょうか。
4)隣の小屋には、何か四角の物が積んでありますが・・・何でしょう?
5)赤煉瓦を積んだ荷車があります。城壁の修理用でしょうか。だとすると、煉瓦でなく茶色の花崗岩ということになりますが・・それだとこんなに手に持てそうにありませんが。

6)ロバをつれた女性は、行商をしているのでしょうか。天秤を使って、何かを量り売りしています。
ロバが荷物を積むのに使っている背籠は、前のシーンで作っていた籠でしょうか。

7)サッカーを楽しんでいる子どもたちがいます。スペインはサッカーが盛んな国ですから、表紙・上陸のシーン・チンチョンの広場に続いて4度目です。
 青チームは怪我人が出たのに代わりがいなくて、10人で戦っています。それでも、ゴールが決まったようです。ところが、ラインズマンがフラッグを振っています。一番右側の青の選手がオフサイドラインを越えているようです。シュートの場合はオフサイドが適用されない事もありますが、その判定は主審が行います。でも・・・主審がいない!!
どうも、安野さんは間違い探し用か、色々とおかしな事にしています。
@主審がいない。
A2人のラインズマンがコートの中に入ってしまっている。
B赤チームの選手がキーパーを含めて12人なっている。
C応援席でラインズマンを同じ旗を振っている人がいます。
D青チームのキーパーのユニホームが他の選手と同じで区別がつかない
E乳母車を押しているお母さんがコートの中に入ってしまっている

8)向こう側のベンチに4人座っています。シュートの瞬間なのにわいていませんから赤チーム側の応援席のようです

9)手前のベンチの5人は大喜びしていますから、青チームでしょう。ただ、上にも書いているように、黄色の旗を振っているのは、ラインズマンと紛らわしいので、だめですね。

10)怪我をした青チームの選手はかなりひどいようです。担架にのせらて運ばれています。担架の行き先は・・・次のページへ向かっているようです。
 後から鞄を持って走っているのは、青チームのコーチで、その後ろは選手のお母さんでしょうか。

11)草の上に座って観戦している男女がいます。恋人でしょうか
12)青チームのキーパーが右手に何か赤い物を持っています。なんでしょぅ??野球のグローブを持っているとの説もあります。
13)ゴールの後ろに、鳥が2羽います。

14)大縄跳びをしている子どもたちがいます。跳んでいる子どものフォームがおもしろいですね。
15)シートを広げてピクニックでしょうか。近くに立っている女性は、何をしているのでしょうか。
16)p29下 路地を走っている2人の子どもがいます。この2人、セビリアと闘牛場でも同じフォームで走っていました。

17)子どもと一緒に走っている犬がいます。例のピカソの犬でしょうか?

18)走っている子どもの少し先の壁に、何か不思議な物があります。腕を組んだような格好をしていますが、これは何でしょう??

19)犬の奥の路地の壁にワシが翼を広げたような灰色のマークがあります。これはなんでしょう??

20)ベンチのところで男の人が2人話しています。
21)路地にケンパをしている子どもたちがいます。
22)牛を2頭つれて歩いている人がいます。2頭の牛の目が気になります。

23)絵皿が飾られている店をのぞいている女性がいます。何の店でしょう?
24)女性の服をたくさんつるしている店があります。店の中から外を見ている女性がいます。
25)服屋の前を材木を満載した荷馬車を引いている男性が通っています
26)旅人の向こうの路地に、何か丸い物をぶら下げている女性がいます。何をしているのでしょうか?糸つむぎ?それともヨーヨーでしょうか

27)壁のところで、椅子に座って編み物をしている女性がいます。椅子の背もたれが耳のある顔に見えて・・動物顔に見えてしまいます。
28)城壁の外にはたくさんの羊たちが草をはんでいます。杖をつき変わった服装で髪の長い人は羊飼いでしょうか。何か、曰くありげに見えます。

 アビラというと「アビラの聖テレサ」の出身地です。アビラの貴族の娘として生まれますが、47歳で「はだしのカルメ会」を創設。スペイン全土に16の女子修道院を創設し、自身も修道生活に打ち込んだ人です。カソリックで聖人に列せられています。標高が高く、冬は極寒になるアビラで素足にサンダルで過ごす実践をしていたそうです。
 28)の羊飼いのような人は、長髪ということもあり、聖テレサをあらわしているのではないだろうかという説があります。

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シーン16水道橋(p31〜32)

0)旅人は 建設中の水道橋とアルカサル(城)のある所にやってきました。アビラ県の隣にあるセゴビア(Segovia)です。


 1985年、「セゴビア旧市街と水道橋」はユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されています。

 このページの絵は、長い間違和感を感じ続けてきました。絵を見ていると、とにかく居心地が悪いのです。安野さんは、出版前にこの違和感を感じなかったのだろうかと不審に思っていました。しかし、その違和感は、安野さん一流の仕掛け(トリック)によるものであることが判明しました。これまでのトリックはあり得ないことを違和感なく表現する物でしたが・・・このページのトリックは特殊です。基本的には、水平に係わるトリックです。まだその謎の総てを解いたとは言えませんが・・・。


1)水道橋は、ローマ時代に建造されています。2世初頭のトラヤヌス帝(あるいは1世紀末ネルヴァ帝)時代とされています。北方に18kmフリオ川から水を運ぶための物です。標高1002mの高さにあるセゴビアに運ぶためには、勾配が1%以下に保たなければなりません。水平を保てないと、水を送ることができません。導水路の大半は地中に埋められているいるのですが、谷間や平原では水道橋にります。
 修理しながら1906年まで利用していたという強度もさることながら、精度が命の建造物です。ところが、安野さんの絵はゆがみを感じます。印象として左側が短くなっているのです。左に向けてかなりの傾斜で傾いているように見えます。「安野さん下手!?」

 ところろが、実際に測ってみると、左側の方が幾分長くて、右側(建設中の方)が少しだけ短いのです。読者が受ける印象と、まるで逆なのです。これは、安野さんが巧みにしくんだだまし絵なのです。安野さん下手どころか、巧妙なのです。

 何故、こんな逆のイメージになってしまうのか、トリックを分析してみました。
◎基本的に、安野さんの絵は、近くのものも遠くのものも同じ大きさで描いてあります。遠近法が無視されているようにも思えます。ところが、これは鳥の目の視点で描いてあるわけですから、遙か上空斜めから望遠で見ているとすると、画面の中の遠近は相対化されて、大小の差が無くなってもOKになり。従って、このことには、違和感を感じないのです。

ところが、この水道橋の絵では、上部の水を流すところ(絵本では人が立っている所)は、遠近法を使って描かれています。左側が大きく右側が小さくなっています。厳密には向こう側の壁だけです。左側に2人立っている所と右側1人立っている所を確認してみてください。さらに、水道橋の奥行きの壁の左側だけが見えています。これらのことから、脳は左側が手前で大きく見える、右側が遠くで小さく見えているはずだと、無意識に判断します。すると、同じ長さで描かれた橋桁の長さを、脳が補整してしまいます。その結果、左側が短くなっている(右側が長くなっている)と認識してしまうのです。
 
 安野さんの絵がこのページで下手になったと思ったのは、見る者の勘違い、安野さんの技術とトリックに読者の脳がまんまとだまされてしまっていたのです。第2巻のイタリア編の水道橋のシーンにもトリックが施してありましたが、こちらの方が、はるかに高度です。トリックの存在にすら気づかせていなかったのです。

2)橋の上の左側の2人は足下近くまで見えるのに、右側の1人は腰の下あたりまでしか見えません。視点の高さが右と左で変わらないとすると、いささか変です。これは、向こう側の壁の見えている部分だけ遠近法を使ってあることに気づかれにくくするための、トリックの一部であろうと思います。

3)橋桁の足下には、何気なく材木が並べられています。
 左側に木口が見えています。これも、左側に視点があることを裏付けてしまいます。そして、この材木も遠近法が使われています。左側を大きく、右側を小さく描かれているのです。(このシーンの右側に並べられた木材は、平行に描かれていますから違いを見比べてみてください。)このスケール感で、遠くが小さくなるとすると、手前の柱は短くなっていると感じるのです。
 橋の上と下に遠近法を使っているので、破綻無く脳をだますことができるのです。
 ちなみに、材木の右と左で橋桁の下のラインがずれてしまっているように感じますが、これも定規を当ててみると、直線です。材木の遠近感のために、脳が混乱しているのです。

 ちなみに、建築中の部分は、橋桁の間に仮設で煉瓦が積んであります。その下のラインだけをつないで見ると・・材木の左側とラインがずれてしまいます。建造中の左端(右から4本目)の柱の足下の描き方が、微妙なのが影響しているようです。

4)橋の向こう側に、見え隠れしている旗はどうなっているのでしょうか。
 普通に考えれば、水道橋の向こう側に離れてポールが立っていて、そこから周囲に4本のロープが張られている。そのロープにはたくさんの旗がつけられている。それが、橋桁の隙間を通して見えている。ということになります。

 しかし、いささかおかしいのです。立っているはずのポールは、橋桁に隠されて見えないようですが、ポールの先端の位置からすると、まっすぐ立っていれば、橋桁の左側に見えてこなければなりません。ポールが少し傾いて立っていることになります。
 ポールの位置は橋桁からどれくらい向こうに離れているのでしょうか。本来ですと、ポールの足下が見えているので、そこから距離を類推できるのですが。見えていないので分かりません。俯瞰角度を考えると、ポールの先端は水道橋より低いと考えられますが、どれくらい低いのかも判然としません。ただ、橋桁の間でネクタイをした男性が、ポールの先端当たりを指さしているようですから、橋桁から男性の位置くらいまでは離れて立っていて、しかもそこそこ高い位置にポールの先端があることになります。
 これは、成り立たないように思われます。男性の位置よりいくらかでも向こうにポールがあるはずです(ロープの張り具合からするとどうしてもそうなります)。橋桁がないものとして、仮にポールを思い描いてみてください。すると、ロープの角度を出すためのポールの高さが出ないのです。
 それに、ロープが怪しいのです。ロープの下はどうやって固定されているのでしょうか。橋桁に隠された位置でしょうか?するとかなり向こう側に杭が打ってあることになります。もう、どうやってもポールを立てておくことができないように思います。
 安野さんは、橋桁の隙間からのぞいているという状況を使って、あり得ないことを、逆に違和感なく(少なく)描いて見せているようです。これもだまし絵ですね。

5)橋桁に遮られて犬が見えています。やたら胴長の犬になってしまいます。だまし絵です

6)木製のクレーンがあって、牛2頭で引かせて、材木を水道橋の上に上げています。
 しかし、これはクレーンの位置・高さからして、あり得ない事です。だまし絵です
 このだまし絵のパターンはよく使われていて、あり得ないのに違和感を感じさせないようになっています。

7)右下 セゴビアのアルカサル(Alcazar:城)が描かれています。この城は、ディズニー映画『白雪姫』の城のモデルになったものです。


 この城は、レコンキスタを完成させた、イサベルの居城でした。1469年王女の時にアラゴンの王太子と結婚していました。1474年12月カスティーリャ王であった異母兄の訃報をこの城でうけとり、直ちに戴冠式を行い女王となるのです。

 そんな、由緒あるアルカサルですが。どうも違和感が有ります。城から左側に飛び出している城壁の上部は、水平のはずです。城の屋根の最上部(これも水平)と平行になっていません。煉瓦のラインもずれています。飛び出した城壁部分だけと、建物部分を別々に見ているときは良いのですが、一体としてみると、城が傾いているように見えます。
 普通の感覚ですと、城の壁からのびている城壁はほぼ直角についていおり、手前で曲がっているところも直角と考えられます。手前の小さな三角のたくさんついた部分が城の壁とほぼ平行であるように見えます(水平の関係から)から、ますます感覚が受け入れません。しかし、実際には城壁の先(角)は、鋭角です。そうと分かって見ても、どうしても違和感が抜けません。こちらも、安野さんが脳を混乱させるためのトリックがあるのでしょうが、詳しくは解明できていません。 

上で触れたように、この城は映画『白雪姫("Snow White and the Seven Dwarfs")』のモデルになっています。その上で、『ルパン三世 カリオストロの城』のモデルにもなっているでもあると思います。こちらは公式的に認められている訳ではありませんが、建物の雰囲気が似ているのと、城をローマ水道橋が通っています。多分、世界中探してもそんな城は無いでしょうが・・・水道橋と城がセットになっている文化遺産とくれば、やはりセゴビアでしょう。

8)7人のこびとSeven Dwarfsがいます。
追い出された(殺されそうになった)白雪姫を、家事労働をすることを条件に、かくまいます。
 物語の秘めたメッセージとしては、保護されるだけの少女から、役割を果たす女性への成長を暗示しています。

9)赤い水玉の女性は、白雪姫でしょう。雪のように白い肌、血のように赤い唇、黒檀のように黒い髪を持つ美少女です。

10)城の上部には鏡を見ている人がいます。新しい王妃(白雪姫の継母)です。自分が一番美しくならなければならない女性です。鏡は、魔法の鏡で独自の審美眼を持っています。王妃の。「鏡よ、鏡、この世で一番美しいのは誰?」という問いかけに、王妃におもねることなく正直に「世界で一番美しいのは白雪姫」と答えています。これで、白雪姫が死んでいないことがばれてしまいます。それにしても、白雪姫がいなければ王妃が映るわけですから、王妃も相当の美女ということになります。あるいは、白雪姫がいなくなったとしても、鏡は別の人を映し出すのかも知れませんが。

11)現場を箒で掃除をしている女性がいます。これは、魔女に変身した王妃かも知れません。

12)水道橋用の石を加工している人がいます。チンチョンのシーンに引き続き、クールベの『石割人夫』からのようです。

13)材木の向こうで、図面を広げて話している2人がいます。水道橋建設の管理者でしょうか。

14)丸太をコロにして3個の石材を運んでいる牛が2頭います。2頭で3個ですからかなり軽そうなのに、めいっぱい引っ張られても動いていないようです。人間3人に牛2頭で、これでは効率が悪すぎです。

15)ロバが一頭で、丸太を一本だけ引っ張っています。これも、効率悪いですね。そのうえ、引っ張られている。

16)丸太を小脇に抱えている男の人がいます。
17)牛が2頭で、8個の石材を運んでいます。こちらの牛は抵抗していません。14)の牛に比べると効率が、2.7倍です。その上、引っ張られていません。

18)牛が1頭で、4個の石材を運んでいます。1頭当たりの効率は17)と一緒ですね。ただし、こっちは引っ張られています。それと、コロの移動はだれがするのでしょう??

19)脇に、丸太を一本かかえた人がいます。
20)子どもたちが水道橋の模型を6人で作っています。

21)ものすごく大きな丸太を一人で担いでいる男性がいます。フォルス・バスクに余裕で出場できそうです。

22)力持ちの男性を見て、びっくりしている女性がいます。

23)大きな鍋で、料理を作っている人がいます。スパゲティーでしょうか? しゃもじを使っているので、パエリア(paella )ではないかと思います。
 専用のパエリア鍋(取っ手のある平底の浅くて丸いフライパン)で調理する米料理です。黄色はサフランを着色料としてつかいます。パエリアは、カタルーニャ語でフライパンを意味していましたが、調理器具の名前が料理の名前になったのです。
そして、元々はアラブの料理だったようです。スペインらしい料理ですね。
燃料は薪です。ちゃんと追加の薪を用意してあります。

24)黄色のスカートの女性は、腰に手を当てて食事の監督でしょうか
25)たくさんの皿を運ぶ人を、槍で刺しているいたずら坊主がいます。皿が割れたら、ごめんなさいでは、済まなくなりそうです

26)たくさんの食材が箱に詰められています。赤の丸いのはリンゴ?トマト?、茶色の物はフランスパン?
27)テーブルの脇には、旗のひるがえる下に、鐘が用意してあります。ひもを引っ張れば鳴るように鳴っています。

28)テーブルに食事を準備しています。
29)男女が、ついでもらおうと、お皿を差し出しています。
30)大きな鍋からついでいます
31)パンを盆に一杯にして持っている女性がいます。
32)隣のテーブルは飲み物が用意してあります。
33)ラッパ飲みしている子どもがいます。
34)エプロンをした向こう向きの女性は、何か白い物を持っていますが、何でしょう?
35)手持ちの鐘を鳴らして、働いている人を食事に呼んでいます。

36)ロバに食べ物をたくさん積んで運んでいます。
37)救護所が有ります。担架に運ばれてくる怪我人がいます。
 サッカーの怪我人もここへ向かっていたのでしょう。

38)看護師さんが傷の手当てをしています。手の怪我のようです。
39)シスターが花を持っています。頭の部分がテントに隠れているシスターもいます。例の2人連れのシスターでしょう。

40)簡易ベッドに横になっている人が2人、手前の人は足の怪我のようです。
41)水道橋の向こう側 旅人の向こうにいる人たちは、小さな旗を振っている人が案内人の観光客のようです。前にも指摘しましたが、指さしている人は、ポールの先を指さしているのか、あるいは・・・旗のロープを引っ張っているのかも知れません

42)観光客の中には、杖をついた人もいます。
43)水道橋の上、右端の一人は、指さしています。やはりポールの上でしょうか。あれがおかしいんだよと注意を喚起しているのでしょうか。

44)上部では、アーチの部分の石を積み上げています。
 水道橋の石はそれ自体の重みで固定さていて、セメントや漆喰といった接着剤を使っていないのです。写真を見ればみる程、信じがたい思いがします。

45)ページの継ぎ目 テントがあって、机の上には図面が広げられています。現場事務所ということでしょう。

46)あり得ない材木の吊り上げをしているところで、材木を抱えている人がいます。
47)大きな金槌を持って立っている人がいます。
48)ここにも、クールベの石割人夫のスタイルの人がいます。
49)石材を積み上げている人、二人でさげているひともいます。石だけに相当重いと思いますが、腰を痛めなければいいのですが。
50)牛が細長い石材を一本引いています。
51)沢山の石材が並べられています。
52)石をたたいている人、腰を下ろし気味で石材を持っている人がいます。この態勢で、持ち上げようと言うのでしょうか。

53)三脚にレベルを使って測量している人がいます。反対側には、赤と白の検測ポールを立てています。工事に測量はとても大切ですから。

54)間に長い棒を持った人がいます。これは、何をしているのでしょう??
棒の先がクレーンに届きそうです・・・・でも届きません。だまし絵です

55)森の中にオオカミがいます。アルハンブラ宮殿のシーンでも森の中にいました。スペインのオオカミは、一時期絶滅の危機にあったようですが、保護の結果かなり増えてきているようです。スペインオオカミという種類もいるようです。

56)右端  ブドウ棚がありますが・・・左側の方は草原がそのままブドウの木の上を覆うようになっています。だまし絵です


次のシーンです
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