コンパクト解説を遊ぼう」6(デンマーク編)

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「旅の絵本」の6作目はデンマーク編です。デンマーク編は、これまでの各巻に比べて格段に狭い国土です。世界遺産の数も決して多くはありません。安野さんは世界的な童話作家であるアンデルセンの作品群を、各シーンにちりばめることで成立させておられます。

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「表紙・裏表紙」「前扉」シーン1最北端の地シーン2はね灯台
シーン3サーカスシーン4円形教会シーン5水車シーン6オーデンセ
シーン9テナーの街
シーン13チボリ公園3
花火
シーン14チボリ公園4
出口
シーン15ニューハウンシーン16アマリエンボー宮殿シーン17造船所シーン18クロンボー城
シーン19田舎へシーン20リンホルムシーン21旅立ち「裏扉」


「表紙・裏表紙」

0)旅人は  デンマークDanmarkにやってきました。デンマーク語による正式名称は、Kongeriget Danmark(コングリーウズ・ダンマーク)だそうです。
 
 赤字に白十字のデンマーク国旗が地面に描かれいてます。世界最古の国旗といわれています。13世紀初頭、ローマ教皇が十字軍に授けた旗が基になっているとの説が有力です。「ダンネブロク」(デンマークの力・赤い布の意味)と呼ばれています。十字が中心にあるのではなく、左寄り(竿側)になっています。これは、北欧諸国に多く「スカンジナビアクロス」というもののようです。1397年にデンマーク・ノルウェー・スウェーデンによって北欧同盟としてのカルマー連合が締結されます。この時初めてスカンジナビアンクロスが掲揚されたとか。

3)国旗を取り巻くように建つ、建物の所在、名称とも不明です。
 右の写真は、ユトランド半島の西海岸にあるリーベ(Ribe)の一角です。左側の建物が、絵本の表紙の中央の建物とよく似ていると思います。絵本で建物の後ろにある塔は、とても特徴的なデザインですが、未確認です。セットで見つかると確実なのですが・・・。
5)背表紙 テントが建っていて、国旗がひるがえっています。テント自体が国旗柄になっています。テントの中には3人の人がいるようです。
6)長い建物があります。所在、名称とも不明です。
7)馬に乗って走っている人がいます。安野さん自身の解説で、「デンマークには、馬に乗って走りながら、小さなリングを、槍で突き刺す競技があります。」と書かれています。
8)リングを吊すためのロープを支える支柱に、国旗が翻っています。ところが、国旗の右端がとんがっています。海軍では右側が三角形にカットされた燕尾型(Swallow Tailed Flag)にして使われてきたそうです。その影響でしょう。
15)道の真ん中で黄色の旗を持っている人は、次の競技者を制止しているのでしょう。彼が、道を空けて旗を揚げると次の競技者がスタートするのでしょう。
16)手前の野球帽をかぶった人は、ホイッスルを口にくわえているようです。旗と連動して、スタートを合図するのでしょう。
18)手前の細長い建物は、特徴的ではありますが、所在地・名称とも不明です。
19)建物の中庭に手押しポンプがあります。他の巻にもポンプはよくでてきましたが、デンマーク編ではとりわけ、手押しポンプの出現頻度が高いように思います。
21)三角屋根の丸い建物はサイロでしょう。酪農の盛んなデンマークらしいですね。
23)建物の向こう立木の中に、何かの顔があります。隠し絵です

「前扉」

0)旅人は デンマーク中央にあるフュン島(Fyn)の都市オーデンオーデンセ(Odense)にやって来ました。
 この街は、世界的童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen )の生まれた街です。彼が生まれたとされる一角は歴史保存地区に指定されています。

アンデルセンを記念して、、「児童文学への永続的な寄与」に対する表彰する、「国際アンデルセン賞」があります。「小さなノーベル賞」とも呼ばれるほどの影響力を持つているそうですが、日本人としては赤羽末吉さんと安野さんだけがこの国際アンデルセン賞を受賞されています。そして、安野さんの受賞は「旅の絵本」によるものです。

1)左 赤い三角屋根の建物があります。アンデルセンの生まれた家です。
 アンデルセン博物館(H.C. Andersens Hus)の一部になっていて、博物館から入ることになります。
2)「みにくいアヒルの子」の白鳥の看板が掛かっているのは、同じ歴史保存地区にある土産物屋さんのものです。
3)通りには、鴨の行列が。乳母車の赤ちゃんが手を挙げて喜んでいます。反対側からはアヒルもやってきます。
5)右側の丸い看板は 博物館前にある「菩提樹の木陰」(Under Lindetraeet)というレストランのようです。デンマークの家庭料理を食べることができるようです。 その向こうの赤い壁の家もこの歴史保存地区にありました。


シーン1最北端の地(P1〜2)

0)旅人は デンマーク最北端の街スケーエン(Skagen)のグレーネン岬にやってきました。(左の地図参照)
 スケーエンはデンマークで最も有名なリゾート地。その魅力は砂浜にあります。とりわけ、その突端のグレーネン岬では、東側のカテガット海と西側のスケーラック海から押し寄せる波がぶつかって砂州が延びているのです。その砂浜を、突端まで歩いて行くことができます。絵本でも、最北端の地にたどり着いた喜びからか万歳をしています(旅人に手を振っているのかも)。

2)手前の草原を砂州に向かって歩いているカップルがいます。突端にいる人に手を振っています。それとも、旅人に手を振っているのかも知れません。旅人は、一生懸命船をこいでいます。
3)大きなタンポポが咲いていて、子どもが種をとばして遊んでいます。その背後には、リンゴの木が花を付けています。アンデルセンの童話『ちがいがありますThere is a Difference』からです。
右の挿絵は、デンマークのヴィルヘルム・ペーダセン(Wilhelm Pedersen 1820-1859によるものです。アンデルセン自身によって選定されたのだそうで、ペーダセンの挿絵は、アンデルセン童話の挿絵の古典とされています。

4)犬と、まりを持った女の子と、コマ遊びをしている男の子がいます。
 アンデルセンの童話に、「おもちゃ箱の中の、コマとまりの話」として『仲よしThe Sweethearts (コマとマリThe Top and Ball)』があります。

5)赤い馬車があって、飼い葉をやっている男がいます。
 砂上観光バスです。写真のように、実際にはトラクターのようなもので牽引しています。これで、砂州を走って岬の突端まで行くことができます。

6)「SOLNEOGANGSKIOSKEN」と書かれた小屋がります。意味が分かりません。
後半のKIOSKENは、キオスクだと思われます。もともと、「あずまや」程の意味で、道ばたにあって新聞やちょっとした食料品を売る店。
その前のGANGSは、英語ではWALKSになるらしいのですが?その前がさっぱりです。最初の二文字は50かSOかあるいは5O迷うところです、どちらにしても意味不明です。(デンマーク語の分かる人、助けてください)
7)燕尾型のデンマーク国旗が翻っています。
8)壁に付いた箱はポストのようです。ヨーロッパの郵便マークはホルンの形です。
 スペインと同じで、王冠が上に着くようです。
11)建物のそばに、看板が立っています。近くの案内図でしょうか?
12)草原に教会が建っています。
通称The sand-covered church(Den Tilsandede Kirke砂に覆われた教会)という教会のようです。
正式にはSt. Laurentius教会と言います。それが、砂に覆われてしまったのです。
最初に建てられたのは1400年頃のことです。当時はデンマーク最大の教会でした。ところが、16世紀頃から教会周辺に砂丘が押し寄せるようになり、1795年にデンマーク王の命令により閉鎖。そして、、1810年には教会は取り壊され、航海の目印として高い塔だけが残されたのです。
アンデルセン童話の『砂丘の物語 A Story from the Sand Dunes』(1859年)に出てきます。

この挿絵は、ローレンツ・フローリク(Lorenz Frolich 1820-1908)の絵です。ペーダセンと同じ年に生まれています。ペーダセン没後は、アンデルセン童話の挿絵を全て引き受けたそうです。


ところで、旅人がスペイン編からデンマーク編にやってくる、関係性が不明でしたが、この物語を念頭におくと、スペインを旅立ち、(砂丘物語ゆかりの)デンマークの海岸にやってきたことになるのですが。いかがでしょか・・・。


シーン2はね灯台(P3〜4)

0)旅人は 古い灯台が建っている海岸に近づいてきました。デンマーク最初の灯台です。石炭を燃やす籠を25mの高さに吊り上げて、船を守ったのです。「Vippefyret(はね灯台)」というようです。
 海岸は、ここもスケーエンの海岸です。
この灯台のことも、アンデルセン童話の『砂丘の物語』に出てきます。
1)海岸では9人がかりで、地引き網をしています。ここは、バルト海と北海がこのあたりで出会います。そのため、潮の目ができるのでしょう、豊富な魚資源があるようです。それを求めて、アシカもやってくるようです。
3)女の人が、地引き網の人たちを見ています。何か持っているようなので、食事でも持って行っているのかも知れません。
 この女性、『砂丘の物語』で、漁師小屋で「まかない女」の仕事をしていたエルセではないでしょうか。イェルゲンが最初に好きになったものの、親友のモルテンのことを愛していると言われて失恋することになる女性です。


4)風車が建っています。ここは、風が強そうなので運転効率は良さそうです。
  アンデルセン童話の『風車The Windmill 』では、「ぼくは、いつまでも胸の中にひきうすを、頭に翼を、おなかのまわりにはバルコニーを持っていなければならないんだ。 それが丘の上に立って誇らしそうにしている、と人には見えるかもしれないが、決していばって立っているんじゃないんだよ」と、風車は言っていました。なるほど、そんな姿です。


5)左上 通り過ぎてゆく旅人を見送るように、シカが一頭立っています。スケーエン周辺では運がよければ野生の鹿や狐を見ることができるようです。
6)乳牛が3頭、草をはんでいます。ミルクの沢山でる、ホルスタイン種です。デンマークは酪農の国です。
10)魚を干して干物を作っています。カレイの干物ではないかと思います。デンマークにも干物の文化があるようです。
 アンデルセン童話の『雪の女王』では、ラップ人の女がフィン人の女に手紙を書くのに紙がないので、干鱈を紙の代わりにする場面が有りました。

アンデルセン童話の『砂丘の物語』の描写に、ここのシーンの漁村のような描写が沢山出てきます。「・・・ただ、何段にもひもを長く張って、それに、腹をさいた魚がたくさん、乾物にするためにつるしてありました。浜べには一面に、腐ったニシンが積んでありました。地引き網が水のなかに入るかは入らないうちに、・・・・」

シーン3サーカス(p5〜6)

0)旅人は サーカス団が撤収をしているところへ上陸しました。場所は、デンマークの東の端のボーンホルム島(Bornholm)です。バルト海の中へ入り込んできています。早速、情報収集を行っています。それにしても、最初に船があらわれた、グレーネン岬からは随分離れた地点です。
 この島は、デンマークよりスウェーデンの方が地理的には近い場所にあり。中世より東欧諸国に対する北欧の軍事拠点となっていました。このため、北欧最大とされるハマールフス Hammerhus の城跡(教会遺跡)があります。断崖絶壁にあって、城跡から見下ろす海岸は美しい景色になっていて、多くの観光客がやってくるそうです。
2)手前のテントのひさしの下にたくさんつるしてあるのは何でしょう。親子が見ているようですが。
4)旅人は地元の人と、相談しているようです。3シーン目なのに、まだ、馬が手に入っていません。
5)女の子が、小さな弟と立っています。弟が指さしているのは、城跡でしょうか、猿でしょうか、サーカスでしょうか。

8)1人?歩きをしている猿と、それを追いかけている女性がいます。サーカスの猿でしょう。動物園から逃げ出したお猿のじょーじを描いた、H.A.レイの絵本の「ひとまねこざる」が思い出されます。
12)大小の椅子は、曲芸用の椅子でしょう。
13)カーペットを巻いている人がいます。その向こうに腰に手を当ててみている人がいます。
19)ワゴンの向こうに色々な物を運んでいる男女がいますが、その中の一人は、いかにも重そうなバーベルを2つ、軽々と持っています。何という力持ちでしょう。
23)ライオンの檻の向こう側の男性は、サーカス団の団長でしょうか。
25)ライオンの手前の鞭を持っている女性は、猛獣使いでしょうか。
26)赤いスカートの女性の前には、白い服を着たダンサーが片足を上げています。
 安野さんは、後の解説で触れていないのですが、後で出てくるアンデルセン童話の『しっかり者のすずの兵隊』ですずの兵隊が恋する紙で作られたバレリーナの人形をあらわしてると思います。片足で立っているところが、同じ片足の錫の兵隊がいっそう親近感を感じて惚れ込むところです。
 お話の中で、踊り子が住んでいるのは、ボール紙でこしらえたきれいなお城です。
右の挿絵もヴィルヘルム・ペーダセン(Wilhelm Pedersenの描いた絵です。右の奥で踊り子が足を上げています。

27)松葉杖をついた男性がいます。サーカスは厳しいところですから、練習中なり舞台なりで怪我をしてしまったのでしょう。女性が気遣っています。
 これは、『しっかり者のすずの兵隊』の片足のすずの兵隊を連想させます。
そう思ってみると、松葉杖が、錫の兵隊が持つ銃に見えてきてしまいます。

シーン4円形教会(p7〜8)

0)旅人は おなじみになった結婚式の場面にやってきました。式を挙げている教会は、ボーンホルム島に多い円形教会Round Churchです。デンマークにはこのタイプの教会が7つ現存します。そのうち、4つがこの島にあります。その中のエスターラース円形教会(The Osterlars Round Church)です。
1)ガラス工場があります。炉に棒をつっこんでいる人、ふくらませている人、ふくらませたガラスに、棒でさわろうとしている人がいます。何かデザインの為にしているのでしょうか。
 後でも出てくるアンデルセン童話の『びんの首 The Bottle Neck』の波瀾万丈の一生は、こうしたガラス工場で、他のガラス食器と共に、ワイングラスとして作られ、スタートします。「びんの首は、まず、自分が命を吹き込まれた工場の燃えさかる溶鉱炉のことを思い出しました。そこがたいへん熱かったことや、煮えたぎっている生まれ故郷の炉のなかをのぞきこんだことや、・・・」

 ボーンホルム島には、ガラス産業の歴史があるようです。また、この島には、磁器生産に不可欠なカオリンKaolinが、産出します。およそ230年前にこの島で、カオリンが見つかったことで、デンマーク磁器の製造が可能になったのです。カオリンが出土地は、断層に関わるところなのだそうです。

5)旅人が握手をしています。馬を手に入れたようです。これまで馬は、2シーン目で手に入れていました。唯一イギリス編が3シーン目になりました。4シーン目になって馬を手に入れるというのは、これまでにないことです。
6)天秤棒でバケツを担いでいる男性がいます。紳士然とした服装ですが?何か意味があるのでしょうか。不明?
7)鍛冶屋さんがあります。蹄鉄も作っているようです。コガネムシが、「金の靴を作ってくれないか」と頼んでいます。そうすれば、王様の馬と同じように、尊敬されるのではないかというわけですが・・・。アンデルセン童話の『コガネムシThe Beetle』からです。
 この話も、現状に満足できないことが、主題ですね。
この挿絵は、ローレンツ・フローリク(Lorenz Frolich )の絵です。

8)黄金虫の訴えを聞いている男性は、腰に手を当てています。「おまえ、どうかしているぞ。おまえも金のくつがほしいんだと」と、難しいなあということいっているところでしょう。
 このポーズ、前のシーンでは、絨毯を巻く野を見ていた女性と重なります。
9)赤い屋根の曲がり屋があります。庭には井戸があります。天秤の原理を使って水をくむようになっています。よくある方式ですが、これにヒントを得て、シーン2に出てきた「はね灯台Vippefyret」は作られたのではないでしょうか。
11)馬を連れた男性がいます。近くに荷車があります。この荷車、シーン2で農家の前で、馬が引いていた荷車と同じではないでしょうか。
 はね灯台と井戸の類似を考えてここに、この荷車があるのではないかと思います。
12)円形教会では結婚式が行われています。安野さんは、これまでの旅の絵本で必ず結婚式の場面を入れてこられました。
13)握手をしているのは新郎新婦の父親同士でしょうか。両脇にいるのはお母さんでしょう。
14)赤いスカートの女性は右肩に黄色いものが乗っかっています?抱いている子どもの頭と言うことでしょうか。
15)新婚旅行用の馬車が用意してあります。御者の場所は普通ですが・・・二人の乗る所は随分狭いようです。完全に二人乗り。例によって、空き缶が取り付けられています。

19)敷石を付き固める道具が置いてあります。これを「むすめ」と呼ぶのだそうです。
 アンデルセン童話「二人のむすめTwo Maidens」からです。
左の挿絵も、ペーダセン(Wilhelm Pedersenの描いた絵です。
 「むすめ」の呼び名が「石叩き」に変わるというのです。本人たちは、随分不満です。心配していたようになります・・・若い方のむすめの婚約者の大きな機械の杭打ち機は、石叩きとはいっしょになりたくないと手を切ってしまうのです・・・。
20)ホルスタインが6頭います。
 この島も、酪農が盛んなようです。そして、牛乳から作られるブルーチーズが作られています。Mycella(ミセラ)が有名です。作っているのはボーンホルム社。会社のシンボルマークには、円形教会が使われています。
http://www.st-clemens.dk/
21)もみの木の林があります。大小のもみの木があります。
 アンデルセン童話の『モミの木(The Fir Tree)』からです。
「何か先にすばらしいものが待ち受けてると感じて、大きくなるのを焦り、いつもいまの自分に満足できず・・・」
反省させられます。
右の絵は,ペーダセンの描いた絵です。ウサギに跳び越されているのが、まだまだ小さいモミの木です。
23)左上 5人の男女が草原に座っています。ピクニックということでしょう。なにか、いわれがありそうな雰囲気ですが・・・不明です。
 『びんの首 The Bottle Neck』のビン工場で作られたワインビンにはワインを詰められます。その栓が、空けられたのは、毛皮商人のお嬢さんの家族と婚約者の航海士が出かけたピクニックでのこと。婚約を祝ってスポーン!と大きな音がして空けられます。そして、航海士は「おまえは、ぼくの一番うれしい日に居あわせたのだ。もうこれ以上は他のものに役立ってはならないぞ!」と言って、びんを空高くほうりあげてしまいます。
 投げられたびんは、森の中の小さな湖のほとりに落ちますが・・・・。
24)ストライプ状に耕された畑があります。小屋が建っている畑の部分も含めて何かをあらわしているのだと思うのですが・・・不明です。
 あるいは、ユトランド半島の形?

シーン5水車(p9〜10)

0)旅人は 農村地帯にやってきました。フュン島(Fyn)の農村風景です。オーデンセ(Odense)郊外にある、農民文化を再現したフュン野外博物館がモデルだとおもいます
1)左上 水車が描かれています。フュン野外博物館にも水車がありました。
4)石臼の溝を刻んでいる人がいます。スペイン編でも風車のところで石臼を刻んでいた人がいました。

5)水車を回した水は、小川となって小さな橋をくぐってゆきます。
6)川岸には、4本の柳の木があります。
アンデルセン童話に『柳の下で Under The Willow Tree 』という作品があります。
 幼なじみのクヌートとヨハンネは、庭の古い柳の木の下でよく遊んでいたのです。

7)クルミの殻をベッドにした子のそばにカエルがいます。
 アンデルセン童話の『親指姫Thumbelina』からです。子どもを強く願った女性に、チューリップの花から生まれた親指ほどの大きさしかない小さい少女が授かります。おやゆび姫と名付けて、クルミの殻をベッドにして、スミレの花びらをシーツ、バラの花びらをしきぶとんにして大切に育てていましたが、ある日、ヒキガエルに誘拐されてしまいます。・・・
切手は、中国のものです。
挿絵は、ペーダセン(Wilhelm Pedersenの描いた絵です。

)畑の作物は何でしょう?大きな葉です。タバコのようにも見えます。ゴボウの葉ではないかと思います。
アンデルセン童話の『みにくいアヒルの子』の一家が隠れ家にしているのは、ゴボウの葉の下ですから。
9)何かを干しています。そして、その下では敷物を敷いて何か干しています。赤い実です何でしょうか?水車のところで注ぎ込まれていた物と表現がよく似ています。するとこれは、小麦?ということでしょうか。あるいは、水車で製粉している物が、別物かも知れません。
10)アヒルとアヒルの子その中には一匹だけ大きなヒナがいます。
 アンデルセン童話の『みにくいアヒルの子』からです。
 自分のことをネガティブにしか評価しようとしない周囲の中で、自分自身もネガティブに評価してしまう。そんな悲しみの中で、こどもたちに希望を与えてくれる物語だと思います。
右の絵は、ペーダセン(Wilhelm Pedersenの描いた絵です。左隅にいるのが、他のヒナより一回り大きいアヒルの子です。
11)ネコとニワトリがいます。『みにくいアヒルの子』の登場人物です。アヒル一家の近くの農家のネコもニワトリもみにくいアヒルの子につらく当たります。(上記の挿絵にも描かれています)

13)荷車と馬がいます。前のシーンと灯台のシーンの馬と荷馬車を連想させます。
(※フュン野外博物館にも同じような荷車がありました)
15)右側の外の壁には、ミツバチの巣と思われるものが3つ立っていて、ハチが群れています。
 スペイン編では何度も描かれましたが。デンマークの養蜂事情はどうなんでしょう。
16)中の庭には、手押しポンプがあって女性が二人水くみをしています。

17)豚を入れている柵の中に男が座り込み、何か壺のようなものがあります。そして柵の外には王女様がいます。これは、アンデルセン童話の『ぶた飼い王子The Swineherd』からです。
 壺はぶた飼いに変装した王子が作ったものです。壺のまわりには、たくさんの鈴がついていて、お湯を沸かせると、その鈴が音を鳴らしてメロディを奏でるのです。そのメロディーは王女様が弾くことができる昔ながらのメロディー。王子は壺の代償として王女のキスを求めるのですが・・・

18)馬車があって王様がいます。お付きの者もいます。
 

19)右下 魚を沢山干した小屋があります。燻製の為の乾燥ではないかとの説があります。魚の燻製とくれば、ボーンホルム島の名物にニシンの燻製があります。

20)池にアヒルの親子に白鳥や野鴨・雁やニワトリやネコがいます。
 これも『みにくいアヒルの子』からです。みにくいアヒルの子がいじめに耐えかねて、逃げ出した先は野鴨の池。受け入れてくれた野鴨や雁たちですが、やってきた猟師に雁たちが殺され、アヒルの子も危うく殺されそうになります。潜り込んだおばあさんの家には、一匹の牡猫と、一羽の牝鶏です。ここでも、のどを鳴らすことも卵を産むこともできないダメなやつと言うことになってしまいます。
 でも、いつの間にかアヒルの子は、白鳥になっているようです。
21)旅人の向こうの牧場には、前のシーンに引き続き4頭の乳牛がいます。酪農国デンマークの農村にははずせないですね。
22)牢獄から脱出している人がいます。第1巻の脱獄シーンとそっくりです。

 安野さんは「最初に描いた『旅の絵本』に牢獄の窓をこわして脱獄する人が描いてあるます。ところで、『脱獄した人が、どこかにひそんでいるはずだ』と言って、本の中をさんざん探した人があったのです。そこで『旅の絵本U』に描いたつもりですが、あまり納得できないので、とうとうこのページに描きました。こんどは逃げていった先がわかるはずです。」と書いておられます。個人的には、イタリア編の結末がお気に入りなんですが。

シーン6オーデンセ(p11〜12)

0)旅人は 扉にも描かれていた、アンデルセンの故郷オーデンセにやってきました。歴史保存地区は、町並みが保存されアンデルセン博物館(H.C.Andersens Hus)があります。

1)アンデルセン博物館に掲げられているのは、アンデルセンの作った切り紙のデザインです。写真と絵本の様子が少々違いますが、博物館の中にある案内板のデザインを絵本では使われているようです。
2)青い壁に飾られているのは、アンデルセン像です。もちろん、博物館にはアンデルセン像が飾られています。
4)梯子をかけて屋根に登っている子どもがいます。女の子が梯子を押さえています。
『コウノトリ』のペーターでしょうか?
5)屋根の向こうの煙突には、コウノトリが巣を作っています。
 アンデルセン童話に『コウノトリThe Storks 』があります。
「むかしむかし、ある山かげの家の屋根に、コウノトリが巣(す)を作っていました。
巣の中には、四わのヒナがいます。・・・」絵本でも右の煙突には4羽のヒナが描かれています。
※日本にもコウノトリがいますが。実はアンデルセンの故郷、ヨーロッパのコウノトリは東アジアのコウノトリとは違う種類なのです。くちばしの赤いシュバシコウ(朱嘴鸛)なのです。

安野さんが、このシーンは『コウノトリ』からだと書いておられるのだから、それで良いとはおもうのですが・・・。
どうも、右側の巣の絵ははアンデルセン童話の『沼の王の娘 The Marsh King's Daughter』の挿絵からのようです。
挿絵を描いたのは、ローレンツ・フローリク(Lorenz Frolich )です。


6)ところで、コウノトリが巣を作っている家は、アンデルセンが2歳から14歳までを過ごした家(H.C. Andersens Barndomshjem)です。向かって右側にアンデルセン一家が住んでいました
 アンデルセンが幼児期を過ごした家ですから、屋根の上のコウノトリのヒナがそれを象徴しているのでしょう。
アンデルセンの家では、台所からハシゴを登って屋根に出られるようになっていたそうです。すると、4)で屋根に登っている子どもは、アンデルセンも意味するのかも知れません。
7)道を逃げている人と、追いかけている人たちがいます。逃げているのは、前のシーンで脱獄していた人です。
8)p9のほとんどを占めている、建物で四角く囲まれた一帯もアンデルセン博物館をあらわしているます。右下の角の三角屋根の家
は、扉にも出てきましたがアンデルセンが生まれた祖母の家です。小さな部屋が3つほどの小さな家で、博物館の角に再現されています。
9)屋根には靴の看板が挙がっています。アンデルセンのお父さんは靴職人でした。
10)中庭では、靴を作っている職人がいます。アンデルセンのお父さんをあらわしているのでしょう。すると、お茶を持って立っている女性はお母さんと言うことでしょうか。さらに、手前の子どもはアンデルセン本人ということですかね。
 壁には、靴の木型、革、革を切るナイフ、槌がかけてあります。手前の四角なものは木型をセットするものでしょう。博物館にも、靴作りの道具の展示があります。
11)お客さんは随分恰幅のいい人です。ひょっとして王様でしょうか。
  次のシーンのリーベの夜警の人のような気がします。
13)ここの庭にも、手押しポンプがあります。

16)トカゲが2匹います。アンデルセン童話でトカゲが出てくる話と言えば・・・『妖精の丘 The Elf Mound』があります。
「2,3びきのトカゲが、一本の古い木の割れ目をちょろちょろと走っていました。・・・」と冒頭に出てきます。このトカゲではないかと思います。
17)右下 スエーデン国旗を掲げ、白鳥の看板を掲げる家があります。扉にも描かれていましたが、歴史保存地区にある土産物屋さんです。白鳥は、「みにくいアヒルの子」の大きくなった姿です。絵本で屋根に描かれている明かり取りも実際にあるようです。安野さんは、なかなか細かいところにも律儀です。
19)木の向こうに、自転車が駐められています。写真を見るとこのも土産物屋さんの所にあります。
21)街灯が立っています。土産物屋の写真に映っている街灯と同じデザインです。
 アンデルセン童話に『古い街灯 The Old Street Lamp』があります。
22)手回しオルガンを弾いている人がいます。
 『柳の下で』の中で、旅先で故国デンマークのメロディーを聴かせてくれる手回しオルガン弾きが出てきます。
 アンデルセン自身が、旅の人だったようですから異国の地でそんなオルガン弾きに出会って感銘を受けた体験があったのでしょう。

24)大きな教会があります。オーデンセにある聖クヌート教会Sct. Knuds Kirkeです。
 13世紀に建てられたデンマークでは数少ないゴシック様式の教会です。絵本では塔の先端が切れていますが・・下に描かれています。 アンデルセンの両親はここで結婚式を挙げています。
25)教会の前には、神父さんを囲んで着飾った子どもたちがいます。堅信礼(Confirmation)のためにやってきているようです。キリスト教国では、生まれると早速洗礼を受けさせます(幼児洗礼)。これで、キリスト教徒になるわけですが、当然のことながら自分の意志でなったとは言い難いわけです。そこで、思春期になって「自らの信仰を確かなものとして宣言する」儀式を行うわけです。

26)アンデルセンの生家のところで手を振っている女性がいます。それに応えるように、旅人の右に荷物を担いで帽子を振っている男性がいます。
 アンデルセン童話の『柳の木の下で』からです。2人は柳の木の下で共に遊んだ幼なじみ。男性は一人前の靴屋になるべく旅に出ようとしているクヌート(聖クヌートと同じ名前だから、ここに描かれたのでしょう。)を描かれています。手を振って見送る女性がいますが・・・これは、幼なじみのヨハンネでしょうか?

このシーンが『柳の木の下で』からであるというのは、安野さん自身が解説で書いているのですが・・・・。
物語では、故郷をまず去っていくのはクヌートではなく、ヨハンネの方です。クヌートが旅に出るのは、ヨハンネに見送られてではなくて・・・ヨハンネを追ってコペンハーゲンに行きます。そして、歌手として成功したヨハンネに、恋人ではなくお兄さんでいてくれと言われてしまいます。そして、ヨハンネがフランスへ行くのです。クヌートがさらなる修行の旅に出るのは、その後です。ですから、ヨハンネに見送られて旅立つクヌートというのはいささかつじつまが合いません。ということで、見送る女性はヨハンネではなくて、クヌートのお母さんといったところでしょうか。

そして、荷物を背負って旅する姿は、『砂丘の物語 A Story from the Sand Dunes』の挿絵からのようです。
 挿絵のシーンは、主人公のイェルゲンが、好きになった娘エルセが愛するのは友人のモルテンであることを知り、しかもモルテンに家があればモルテンと結婚したいというので、自分の相続した家をモルテンに譲り、旅に出るのです。
 
 主人公のイェルゲンは、デンマークの貧しい漁師に育てられますが、実はスペインお金持ちで幸せ一杯だった夫婦の子どもです。夫がロシアへ大使として派遣される途中で、船は難破。お母さんだけがユトランド半島の西海岸に打ち上げられ・・・この子を産んで死んでしまいます。親がどのような国のどのような家の人なのか分からないまま大きくなります。スペインに行き、偶然お祖父さんの家に訪れるものの、分からないまますれ違ってしまいます。
27)テーブルに靴を置いて売っている(?)女性がいます。赤い靴を見入っている女性がいます。
 アンデルセン童話の『赤い靴The Red Shoes』からです。
 
赤い靴が出てくるもう一つの話があります。
アンデルセン童話の『雪の女王』の中ででゲルダは、行方不明になったカイの行方を捜すために、買ってもらったばかりの大切な赤い靴を川に投げ入れます。
アンデルセンにとって「赤い靴」は、物に対する執着を象徴する物のようです。カレンは執着から逃れられず、ゲルダはより大切な物のために捨てるわけです。
29)壁に鐘がつるしてあります。鐘は子どもたちの様子をみているのでしょう。
 アンデルセン童話の『鐘ヶ淵The Bell Deep』からです。
 オデンセ川の淵に沈んだ鐘が、川の精にクヌート王のことを話します。デンマークにクヌート王は何人もいますが、これは聖クヌート王。教会で民衆に殺されてしまったときの話。だから、ここに描かれたんですね。

30)教会の向こうには、キャベツ畑があって男の人が歩いています。アンデルセン童話の『小クラウスと大クラウスLittle Claus and Big Claus 』からです。馬を4頭所有している大クラウスです。
31)5頭の馬に引かして畑を耕しています。こちらは『小クラウスと大クラウス』の馬を一頭しか持っていない、小クラウスです。いつもは、大クラウスにその一頭を貸していますが、日曜日だけは、大クラウスの4頭も併せて、5頭にして使うことができます。その日一日だけは、五頭とも自分の馬みたいなものです。教会の鐘が鳴って、村の人々が教会へ出かけているのを見ると、つい調子に乗って「そうれ、がんばれおれさまの馬ども!」と叫んでしまいます。すると、大クラウスが「そんなこと、言っちゃいけないぞ。」「おまえの馬は一匹だけでねえか。」と注意します。いくら注意されても小クラウスは、人が通りかかるとうれしくなって「おれさまの馬ども」といってしまいます。大クラウスがいかって、槌をとると、小クラウスのたった一頭しかいない馬の鼻面を殴りつけて殺してしまいます。
挿絵は、なけなしの一頭を殺されて泣いている小クラウスです。描いたのは、ペーダセン(Wilhelm Pedersenです。


シーン7リーベの街(p13〜14)

0)旅人は ユトランド半島の西海岸にあるリーベ(Ribe)にやってきました。リーベはバイキング時代からの古い歴史を持つ街で、8世紀頃にできたデンマークで一番古い街とされています。中世の赤いレンガの建物が500軒残っており、周囲は緑に囲まれていて、最も美しい街とされています。デンマークの首都であった時代もあります。
1)塔があります。リーベ大聖堂の塔です。
2)左上 花の上を天使が赤ちゃんを抱いて飛んでいます。
 アンデルセン童話の『天使 The Angel』からです。

「地の上で、いい子が一人死ぬたびに、神さまの天使はきっと大空から下って来て、死んだ子を腕に抱き、大きな白い羽を広げて、子供がこれまで好いていた町をいくつか飛びこえて行く道々、両手いっぱいの花を摘んで行きます。・・・・」
 なぜか、天使は裏路地のゴミの中からこちこちに固まった植木鉢の枯れた花を持ってゆくのです。・・・その訳は、お話を読んでみましょう。
 アンデルセンらしい美しい話です。
天使は、アンデルセンの分身のように思います。

3)白樺の林があります。
 『モミの木』のモミは、屋根裏部屋で、「楽しむときに楽しまなかった」森でのことを思い浮かべます。「もみの木にとっては、その白樺の木は、ほんとうに美しいお姫様のようだったのです。」
4)兵隊が並び、王様が驚き、王女もおどろいています。近くにはバッタがいます。
 これは、アンデルセン童話の『高飛び選手The Jumper』からです。
 バッタ、のみ、とび人形の中で一番高く飛んだものがお姫様と結婚できるというのですが・・・はたして結末は。
 高く飛んだのにもかかわらず認めてもらえず、結婚のかなわなかったものたちに、アンデルセンは自分自身を重ねているのでしょうね。

5)切り絵を作っている男の人と、それを驚いてみている女の子がいます。
 アンデルセン童話の『小さいイーダの花Little Ida's Flowers』からです。
 男の人は、お話が上手で切り絵の得意な学生さん。学生さんが持っているのは、「お盆の上に白鳥と建物をのせた道化師」と言う切り絵です。アンデルセンは切り絵も得意で、沢山作品が残っています。これもその一つです。切手にもなっています。
 イーダの持っている切り紙もアンデルセンの作品です。Devil maskと名付けられています。悪魔の顔というわけですね。それらしい雰囲気です。
 学生さんは、アンデルセンの分身でしょう。この作品は、アンデルセンの最初の童話集に収録されています。当時は、評価があまり高くなかったとか。でも、個人的にはなかなか良い話だと思います。
6)イーダちゃんたちを見ているネズミがいます。
7)ネズミを見ているネコがいます

8)窓の所に、鳥かごがあり、ビンがつるしてあります。
 アンデルセン童話の『びんの首 The Bottle Neck』からです。
 今は、下半分が割れてしまい、コルク栓をして逆さまに鳥籠に付けられて水入れとして利用されているびんの首が、ワイン瓶として生まれてからの物語です。
 アンデルセンの友人であった枢密院顧問官ティレー氏が冗談で「きみ、ぼくらのためにひとつ、びんの物語を書いてくれないか。びんが生まれてから、首だけになっても、まだ小鳥の餌入れとなって、けっこう役立っている時までの話と言ったようなものをね。」こんわなわけで、この童話ができたとアンデルセンによる解説に、書いています。
 波瀾万丈のその運命はドラマティックです。そして、すぐゴミになってしまう、日本の瓶と違い繰り返し繰り返し使われる姿に、デンマークの生き方を見るようにもいます。最も、アンデルセンの頃の日本は、世界でも有数の「もったいない」社会。どんなもののも、ゴミにしてしまわない社会だったのですが・・・。一方、デンマークは、缶飲料は無く、瓶やペットボトルはリターナブルでその回収率は99%とか。いつの間に、こんなに差が付いてしまったのでしょうか。
 ちなみに、窓の女性は、ワイン瓶の時に婚約の祝いとしてコルク栓を開けられた時の女性。瓶にとっても女性にとっても最高に幸せの時でしたが、瓶も女性もそのことは知りません。

8)左中 バラの所に妖精がいます。アンデルセン童話の『バラの花の妖精 The elf of the rose』からです。
 美しいというよりは、不気味なお話です。ホラーといっても良いかもしれません。アンデルセンは緒言の中で「(その)着想はイタリアの民謡から取ってきたものである」と書いています。
 愛し合う若い男女が添い遂げられないお話という意味では、「びんの首」と重なる部分があるようにも思います。そして、花の精ということでは、「親指姫」と重なる面もあります。同じページに描かれたのは、そのためでしょう。

9)左下 池の所に、ヒキガエルと女の子とモグラとネズミがいます。
 これは、アンデルセン童話の『親指姫 Thumbelina』からです。
 ヒキガエルは、「シーン5水車」で、川のそばにクルミのベッドごと親指姫をさらってきます。息子の嫁にしようというわけです。逃げ出した親指姫はコガネムシにさらわれますが、放り出されます。死にそうになっていた親指姫を救ったのが、野ねずみの奥さんです。ところが、野ねずみの奥さんは、お金持ちのモグラとの結婚を勧めます。それが、親指姫の幸せだと信じて・・・。
10)家の外から子どものベッドをのぞき込んでいる男の人がいます。
 アンデルセン童話の『眠りの精オール・ルゲイエ Ole-Luk-Oie, the Dream-God 』からです。
話しかけているのは、眠りの精オールおじさん、眠っているのはヤルマールです。オールおじさんは、子どもたちにそっと近づいて、子どもたちの目にシュッと甘いミルクを刺すのです。ほんのちょっぴり。すると子どもはもう目を開けていることができません。そして、お話を聞かせてくれるのです。もちろん、毎夜違った話を。

12)手押しポンプを一生懸命押して、洗濯をしている女性を、ビンを持った男の子が見ています。
 これは、アンデルセン童話から「『あれは、だめな女だった』 She Was Good for Nothing 」からです。
 洗濯女は、息子に酒ビンを持ってこさせます。冷たい川で冷えた体を温めるためです。でも町長さんは息子に「おまえのお母さんはろくでなしだ」といいます。倒れて死んだ後も「あの女はろくでなしだったから。」というのです。
 でも年取ったマーレンおばさんは言います。・・・「私は、何年も前から、それから、あの最後の夜からは、なおさらのこと、ちゃんと知っているんだよ。私は坊やに、はっきり言っておくよ。いいかい、お母さんはね、役に立つ人でした!天国の神様も、きっとそうおっしゃるに違いないさ。世間の人には、かってに言わせておいたらいいよ。あの女はろくでなし、とんでもないとも。」

 アンデルセンの母親は、家計を助けるためにあちこちの家で掃除をしたり洗濯を引き受けたりしていたのです。母親はアンデルセンが28歳の時なくなっています。アルコール中毒であったようです。この物語は、アンデルセンの母をモデルにしていると考えられます。そして、坊やはアンデルセン自身の分身でしょう。


12)中央 杖とカンテラを持った人が歩いています。これはリーベ(Ribe)の「夜警」です。
 町の夜間警備として1902年まで続けられていましたが、廃止されました。その後1932年に観光目的で再現され、20時になると大聖堂横の旅籠の前に、夜警が現れます。夏には、それでも明るいのですが・・。伝統衣装に身を纏った夜警について、観光客はぞろぞろと町を練り歩きます。夜警のおじさんは「家の人、ぼうや、お嬢さんよ。時間を知りたいかい。もう寝る時間ですよ。神に祈り優しく賢く。灯や火にご注意 時刻は10時だ」と触れてまわるのだそうです。そして、歴史的建造物の前では、観光案内もしてくれるのだそうです。
13)右上 国旗柄のテントの下では、織機がすえられて、何か織物が織られています。
アンデルセン童話の『皇帝の新しい着物(裸の王様)The Emperor’s New Suit 』からです。
 織物の進行具合を見に来た役人に、。「自分にふさわしくない仕事をしている人と、バカな人にはとうめいで見えない布なのです。」と説明しています。実は、織っているふりをしているだけで何もないのですが・・・「何も見えない」とは言えないので、見えているふりをしています。何もないのですが、高価な織物はずですから、しっかり警備の兵隊がついています。
19)通路に看板のようなものが2つありますが、これは何?
20)赤の水玉の女性がハンドバックを持って歩いています。なんだか、デンマーク編ではこの柄のドレスを着た人が多いようにおもいますが・・・。

21)国旗柄のテントを張り出した家の手前には、棒きれを持ったネズミが3匹います。
これは、アンデルセン童話の『ソーセージの串で作ったスープ Soup on a Sausage Peg 』からです。
 ネズミたちが持っているのは、ソーセージの串です。これで、スープを作ることができたネズミが、王の妃になれるというので、4匹の雌ネズミが立候補します。それぞれソーセージの串を一本ずつ持って、旅立ちますが・・。期日にかえってきたのは、3匹だけです。心配したように、ネコにやられてしまったのか?!
そういえば、6)でイーダちゃんを見ていたネズミは、ネコに狙われていました・・・。あのネズミがかえってこなかったネズミでしょうか。
 物語では、ぎりぎりでかえってきます。ただし、彼女は串を持っていませんでした。そして、意外な結末が・・・。

 ※「ソーセージの串でスープを作る」というのは、デンマークのことわざのようです。アンデルセンはそれを「一粒の種」としてこの話を作ったのです。ちなみにもとのことわざの意味は?物語の中に出てくる言葉を拾うと。『人がもし詩人ならば、ソーセージの串でスープを作ることができる』と2番目のネズミが出てきます。また『・・・はね、人間のことわざなんだよ。色々な意味に取ることがね、めいめい自分の考えているのがいちばん正しい意味だと思っているのさ。まあ、つまり言ってみれば、何でもないということさ!』と串を無くしたネズミが言います。後者の解釈がたぶん一般的なのでしょう。

23)山羊に乗って、カラスの死骸を振り回している男がいます。
 アンデルセン童話の『まぬけのハンス (Clumsy Hans)』からです。
お姫さまが「上手にはなしのできる男をおむこさまにする」というおふれに応じて、賢い兄さんたちは出かけます。その後を追って出かけたハンスは、途中で死んだカラスとこわれた木ぐつをひろい、ドブの泥をもってお城に行きました。さて、どうなるのでしょうか。

  『ソーセージの串で作ったスープ』の話も『まぬけのハンス』も、課題を乗り越えて「玉の輿」に乗るというパターンです。昔話によくあるパターンです。これらの課題は、子どもから大人になる為に乗り越え無ければならない課題であり、「成長を象徴していると考えられます。ただ、『ソーセージの串で作ったスープ』の場合は、物語に込めたいメッセージが高度になってしまって、設定が複雑になっています。『まぬけのハンス』の方は、デンマークの民話を自由に再話したと、緒言で述べています。昔話の天衣無縫さがあって、その分ストレートだと思います。
24)馬に乗った二人は、ハンスの賢いお兄さんたちでしょう。
25)クリスマスツリーの前に立つ女の子がいます。
 これはもう、アンデルセン童話の『マッチ売りの少女 The Little Match Girl 』からです。
 暖かさを求めてつけたマッチの灯りの中に、クリスマスツリーの幻があらわれています。

アンデルセンは、外国旅行の途次、フリンク氏から、手紙に同封した3枚の絵を基に童話を書いて欲しいと依頼されます。アンデルセンが選んだのは、マッチを持っている貧しい少女の絵だったというわけです。絵はヨハン・トマス・ルンドビーJohan Thomas Lundbye(デンマーク、画家1818)がカレンダー用に書いた挿絵でした。マッチは、当時は珍しいもので、デンマークにはそのマッチを街で売るこどもたちがいたようです。

ところで、クリスマスツリーは『モミの木』の話も、関係しています。モミの木が、最も輝いていたのは、クリスマスツリーとして飾られ灯りがともされたその時だった訳ですから。

26)p14の左下の建物の窓のいちばん右側 屋根のマークの中に「あ」とあります。スペイン編でも出てきましたが、安野さんの生まれた津和野にある安野光雅美術館のシンボルマークです。


シーン8リーベの街2(p15〜16)

0)旅人は 引き続きリーベの街に滞在中です。この街がお気に入りのようです。

オーフスArhusにガムルビュDen Gamle By(「古い町The_Old_Town」という野外博物館があります。そこにある建物の沢山再現されているので、リーベと言うより、デンマークの古い町並みを再現されているという方が良いようにも思います。
1)左下 荷物を持った男が、家の中をのぞいています。これは・・アンデルセン童話の『小クラウスと大クラウス Little Claus and Big Claus 』からです。
 馬を1頭しか持っていない貧しい小クラウスは、4頭持っている大クラウスに、なけなしの一頭を殺されてしまいます。仕方なく皮をはいで町に売りに行きます。男の持っている荷物はその馬の皮です。日が暮れてしまい、百姓屋に宿を頼みますが断られます。仕方なく納屋で寝ていると、窓から中が見えます。おかみさんと、役僧が食事をしています・・・。
2)馬に乗っている男がいます。 これも、『小クラウスと大クラウス』からです。
出かけていたお百姓さんが帰ってきたのです。このお百姓さんは、役僧さんが大嫌い。役僧さんも、そのことを承知していて、いないときにやってきていたのですが。お百姓さんが帰ってきたのです・・さあどうなるでしょう。

4)赤の水玉の服が看板になっているのは、ミシンがあって仕立屋のようです。
 デンマーク編と、赤の水玉の服の関係は、謎のままです。
Den Gamle By野外博物館に右の写真のような仕立屋工房の展示がありました。
5)若いカップルが、店に来ていますが・・・。男の人は、後ろを見ています。何を見ているのでしょうか。
6)抜いた歯とペンチが看板の家は歯医者さんでしょう。家のデザインは、リーベのオールドタウンによく見られる木組みの家ですが・・・。アンデルセン童話の『古い家 The Old House』の挿絵の家とよく似ているように思います。
ペーダセン(Wilhelm Pedersenの描いた絵です。ただ、出窓が出っ張っていないし入り口の階段がないのが、大きなな違いで・・・。
8)前の道では、魔法使いのようなおばあさんと子どもが話しています。これは、アンデルセン童話の『歯いたおばさん Aunty Toothache』からです。

 「歯痛おばさん」は物語の中で、学生さん(アンデルセン自身の分身でしょう)の母方のミレおばさん。年は取っても白い歯を持っている人ですが、以前歯痛に苦しんだときのことをもとに、おばさんの友人で醸造家のラスムッセンが付けたあだなです。
 ミレおばさんは、学生さんの詩の才能をたたえ、作品をたたえ、書くことを励まし続けてくれます。
 ところが、吹雪の夜、ミレおばさんを下宿に泊めたとき・・・・、夢に恐ろしい老婆が現れます。強烈な歯痛と共に。そして、「・・大詩人は大いなる歯痛を持ち、小詩人は小なる歯痛を持つ!」「そうじゃ、もしそなたが詩人たることを断念し、もう2度と詩を、紙・石版・その他どんな物にも書くまいと思うなら、わしはそなたをゆるしてやろう。だが、詩を作ったらまたやってくるぞよ。」しかも、ミレおばさんの中に自分を見るであろうと言い残して去ってゆくのです。
 朝になると、ミレおばさんはやっぱり「あなたはわたしの詩人よ」と励まします。

 この作品はいったいどうしたというのでしょう。不思議な作品です。アンデルセンの断筆宣言だったのでしょうか。まさか、歯痛が原因ではないのでしょうが、以後作品がないのです。アンデルセンによる解説の中で、「時に、童話『歯痛おばさん』は、わたくしの最後に作ってかきおろしたものなのである。」と書いています。
9)歯医者さんの屋根・パン屋さんの屋根に3人もの煙突掃除人がいます。
 一体これは?特にパン屋さんは営業中で、釜に火が入っています??
 それにしても、煙突やさんたちは、シルクハットをかぶりスーツを着て仕事をしています。この格好の絵をよく見ますが??いったいどんなわけがあるのでしょう。
 煙突掃除人が出てくるアンデルセン童話といえば『羊飼いの娘とエントツ掃除人 The Shepherdess and the Chimneysweep 』ですが・・・。物語のエントツ掃除人は人形ですし、1体だけです。
 そもそも、エントツ掃除人を人形にするというのは、どういう意味なのでしょうか。
10)石窯でパンを焼いているパン屋さんがあります。庭のテーブルには、秤が置かれ、生地をのばすための棒もあります。安野さんは、物作りの描写はいつも丁寧です。
11)パン屋さんの看板は、プレッツェルです。安野さんは、パン屋の看板にプレッツェルをよく使われます。
左のDen gamle by(オールドタウン)野外博物館にある、パン屋さんにもプレッツェルの看板が掛かっています。
13)ツバメが飛んでいます。そして、小さな女の子が乗っています。
 アンデルセン童話の『親指姫 Thumbelina 』からです。
 世話になっているネズミのおばさんに、モグラさんとの結婚を押しつけられていた親指姫は、凍死しそうな所を助けたツバメに救出されます。ツバメと共に、南の地に飛びそこで、花の王子様と出会い、幸せな結婚をすることになります。そして、密かに親指姫に思いを寄せていたツバメは、失恋の痛手を隠して2人の結婚を祝福するのです。ツバメは、アンデルセンの分身ですね。

14)ここまで逃げてきた、脱獄犯が転んで、警官に捕まっています。
 この結末、分かりやすいけど、おもしろくないなあ。やっぱり、イタリア編の結末が好きです。

15)倒れた脱獄犯の右側で、バトンのような物を持って待ちかまえている人がいます。
 この人は?・・・逮捕している警察官の仲間でしょうか、それとも脱獄犯に何か渡そうと待ちかまえていたのに、果たせなかった人なのでしょうか。新たな謎が(^_^;)

16)逮捕劇の背後の壁に、何か張り紙がしてあります。これは何?
 安野さんのこれまでの例からすると、モデルにした家の所にも、何か張り紙があったのでしょう。
 建物のモデルは、ガムルビュ野外博物館にある建物だろうと思います。

17)煙突の上の煙突掃除人の向こう側、緑の扉の左側に張り紙があります、これは何?
18)右上 男の人がひく馬車には、モミの木の小さな木を抱えたおばあさんと、クリスマスツリー用のモミの木が積んであります。『モミの木』関連でしょう。
 馬を引いている人の前のベンチの背もたれの中央部分に何か四角の物がついているのですが?これは何でしょう。
 写真の建物の前にもベンチがあるようですが・・・。 


19)乳母に抱かれた赤ちゃんをあやしている男の子と、それを二階の窓から見ている男の人がいます。これは、アンデルセン童話の『門番のむすこ The Porter's Son 』からです。
 赤ちゃんは二階に住む将軍の娘エミーリエちゃん、あやしている男の子は地下に住む門番の息子ゲオルグ、二階から様子を見ているのが将軍です。
 ゲオルグは、才能にあふれた子どもですが、エミーリエちゃんとの社会的な立場の違いは圧倒的です。しかし、伯爵のバックアップを受けて留学させてもらい、建築技師・教授・枢密顧問官と出世をし、娘の両親の反対も克服して、エミーリエと結婚を果たし、幸せな家族を築きます。
 アンデルセンの童話のほとんどが、失恋や悲劇的な幕切れであるのに対して、この話は完全なハッピーエンドです。ゲオルグの人生こそが、アンデルセンがそうありたかった理想をあらわしているのでしょう


20)広場で雪だるまを作っている子どもたちがいます。アンデルセン童話の『雪だるま The Snow Man 』からです。
 この雪だるまは、よりにもよって、ストーブのことを好きになって、恋いこがれます。それには、本人にも意識できない訳があって・・・。
21)隣では、雪を転がして雪玉を作っている子どもたちがいます。日本の雪だるまは、このように大小の雪玉を重ねて作りますが・・・ヨーロッパ(デンマーク?)では、そもそも作り方が違うようです。札幌の雪祭りの雪像のように、しっかりと芯を作って雪を重ねて行くようです。その結果、挿絵のようにスマートな雪だるまになっています。
23)大量の布団を持ち込んでいるHOTELがあります。壁にはエンドウ豆が描かれています。アンデルセン童話の『エンドウ豆の上に寝たお姫様 The Princess on the Pea』からです。

 雨とあらしでずぶ濡れになっていた女性が、本物のお姫様であることを証明する方法は・・・20枚も重ねた布団の下に置かれた一粒のエンドウ豆の種。これが気になって寝られない人こそが、妃にふさわしいお姫様というわけです。
 この話はアンデルセンが子どもの時に、紡ぎ部屋や、ホップ摘み際に聞かされた話と言うことですから、昔話が基になっているわけです。まあ、昔話によくある荒唐無稽さと言えますが・・・。
 アンデルセンの創作童話は、主人公が才能ゆえに評価されるべきであるとの考え方が基底にあるように思います。才能があるのに正当に評価されない場合もありますが、その場合は、その不当さを訴える形になっています。ところがこの話は、まるきり逆です。たかが、豆一粒で寝ることができない能力?ですから。むしろ、できないことが評価の対象になっています。ただ、昔話には良くあるパターンです(末の子どもだったり、まぬけだったり、弱い者が最後に勝利する)。これは、力のない子どもたちに、希望を与える役割を果たしていると思われます。ただ、この話の場合は、アンデルセンの上流社会に対するあこがれが出たように思うのですが。
 アンデルセンの持っている二面性を感じます。

24)ホテルの建物は、リーベにある古い旅館「ホテルダクマー」がモデルにされているのでしょう。建てられたのは1580年といいますから、築後400年以上です。今もホテルとレストランとしていて、泊まることができるそうです。名前の由来はチェコ出身でバイキング王の妃となったダクマー妃だそうです。彼女は、23才の若さで病死してしまうのですが、その慈悲深さからリーベの人々に今も愛されているとか。
25)ホテルの右側に描かれた建物も、リーベにある飲食店がモデルだと思います。
26)長靴を拾おうとしている夜警がいます。(リーベはやっぱり夜警の街です)
アンデルセン童話の『幸福の長靴 The Galoshes of Fortune 』からです
 長靴は、「誰でもこれをはくと、そのとたんに、その人の一番望んでいる場所なり、時代なりへ連れて行ってくれる」不思議な靴です。さて、履いた人は幸福になれるでしょうか・・・

 物語の舞台はコペンハーゲンですが、夜警だからリーベの街に登場したのでしょう。ちなみに、挿絵はペーダセン(Wilhelm Pedersen)の描いた絵です。こちらは、中尉さんの家の前に座り込んでいる絵です。これでは夜警であることがわかりにくいからでしょう、安野さんはカンテラを持って、通りで長靴を発見したところを描かれています。
27)隣の万年筆を看板にしている家は、何の店でしょう。文房具店でしょうか?あるいは・・・作家の家と言うことでしょうか。
 「幸福の長靴」で、4人目に長靴を履くのは、書記さんです。そして、詩人になりたいと思うのです。(この場合の詩人は、ほとんど作家ということです。)ということで、この家は詩人の家では無いかと思います。
28)大量の布団を馬車から降ろしている人たちの、隣には、マッチが消えて薄れてゆくクリスマスツリーを見つめているマッチ売りの少女がいます。前のシーンからの続きですね。
『もみの木』の視点で見ると、華やかで誇らしい時は瞬く間に過ぎてしまい・・・。その先には・・・。

29)シャボン玉をしている子どもと、おばあさん。その右手にはバラの花が咲き乱れています。これは、アンデルセン童話の『小さいみどりたち The Little Green Ones 』からです。
  バラの木の小さい兵隊さんたち・・・アブラムシのことです。石けん水は、小さいみどり(アブラムシ)の駆除のために持ってこられましたが。シャボン玉に使う方が、平和的で美しい。そして、シャボン玉が割れると、お話おばさんが立っていたのです。
アンデルセンは、アブラムシをよく観察したのか、生態になかなか詳しいです。(無性生殖で卵でなく子どもをそのまま産んだり、有性生殖で卵を産んだりの事を知っていたようです)

31)屋根の上に、コウノトリの巣があります。巣はあっても親鳥の姿が見えません。
 リーベは幸福を運ぶコウノトリがやってくる街としても知られているそうです。「コウノトリが来たら夏の始まりだ!」と感じる存在です。そんなリーベでも環境の変化がはげしく、やってくるのは数羽になってしまったそうです。巣が空になっているのは、そういう意味なのかも知れません。
 ただ、クリスマスシーズンですから、単に南に渡って行っていると考えればいいのかも知れません。

32)右隣の屋根の上には、カラスがいます。『幸福の長靴』の中で、書記が詩人になった時に、子どもの時の事を思い出します。「熱くした銅貨を、凍てついた窓ガラスにあってのぞき窓を作って遊んだものだ。そこから外をのぞくと・・・・船頭のいない船が氷に閉ざされていて、カラスが一羽、まるで乗組員みたいに、とまって鳴いていた。・・・」とあります。
33)右上 木の枝に小鳥が2羽とまっています。これも『幸福の長靴』の中で書記が、ヒバリになります、そして捕らえられて小さな鳥かごに入れられますが、隣にはオウムとカナリヤがいます。このヒバリとカナリヤではないかと・・・思います。

リーベの街のシーンでは、アンデルセン童話が立て続けに描かれています。安野さん自身が指摘されていない童話も入れると・・・19〜23話。すごい!確認してみましょう。
1.天使  2.(モミの木)  3.高跳び選手  4.イーダちゃんの花  5.びんの首  6.バラの花の妖精  7.親指姫  8.眠りの精オール・ルゲイエ  9.あれは、だめな女だった  10.裸の王様  11.ソーセージの串で作ったスープ  12.まぬけのハンス  13.マッチ売りの少女  14.小クラウスと大クラウス  15.(古い家)  16.歯いたおばさん  17.(羊飼いの娘とエントツ掃除人  18.門番のむすこ  19.雪だるま  20.エンドウ豆の上に寝たお姫様  21.幸福の長靴  22.小さいみどりたち  23.(コウノトリ)
以上です。アンデルセン童話とリーベの特別の関係ってあったでしょうか?



シーン9テナーの街(p17〜18)


0)旅人は、ドイツ国境の街、テナー(Tonder) にやってきました。南ユトランド地方でもっとも古い町の一つで、古くからの町並みが良く残されています。

1)中央に鞭を持って像があります。
 これは、市の立つ広場(Market Square)にある、カーマンネン(Kagmanden)という木造彩色の像です。

1699〜1920年まで、公正と秩序の番人として設置されていました。現在の像はレプリカで、オリジナルは、博物館にあるそうです。
 犯罪者は、カーマンネン像の杭につながれて公開のむち打ち刑に処せられたそうです。像も、右手に鞭を持っています。

カーネマン像(大きな写真)
http://donwiss.com/pictures/Denmark-2005/h0069.htm

2)カーネマンを描いている画家がいます。これはもう、安野さん自身でしょう。

3)画家を見ている子どもたちがいます。

4)RESTAURANT(食堂)と書かれた建物は、上の写真のカーネマン像の右奥の建物の上部とそっくりです。
また、Den Gamle By(オールドタウン)野外博物館にある郵便局と似ているようにも思います。
・・・看板に描かれているのはなんでしょうか?

5)p17下 鞄を持った女性が二人、話しています。
6)時計を看板にしている建物は、時計屋さんと言うことでしょう。
 この木組みの建物、前のシーンで小クラウスがのぞきこんでいた農家とそっくりです。

7)女性が二人歩いています。

8)手回しオルガン(オルゴール)を回している音楽師がいます
以前にも触れましたが、『柳の下で』のクヌートは、ヨハンネが婚約者といるところを見て、故郷を目指します。そして、異国の地で故郷デンマークの曲を奏でる手回しオルガンひきにであい、ますます望郷の念にとらわれ、故郷への道をひたすらに進みます。

9)赤い木組みの家があります。時計の家と木組みの様子がよく似ています。木組みは少し違うのですが、Den Gamle By(オールドタウン)野外博物館にある建物に雰囲気の似ている建物がありました。

10)黄色の壁の家に面白い看板が掛かっています。何の看板でしょうか、不明です。

11)前のページに続いて大小のモミの木が運ばれてゆきます。やはり、大小のクリスマスツリー用と考えて良いのでしょう。と言うことで、これも『モミの木』関連です。

by forest-doorさん

P.16に続いてもみの木を馬車で運んでいます。大人が馬車で大きいもみの木を運び、そのあとを、大人と同じようにしてろばで小さなもみの木を運んでいる子供がいます。お手伝いなのか、ほほえましいですね。
デンマークでは、クリスマスシーズンになると街の広場でクリスマスツリーの露天商が出るそうです。多い時期には一日当たり150万本(!)のクリスマスツリーが売られ、またドイツやフランス、スイスにも輸入されているそうです。


12)旅人の左前方 カヤを刈っている人たちがいます。茅葺き屋根に使うのでしょう。
 
13)材木を運ぶ馬車が二台行きます。これも、『モミの木』でしょう。こちらは十分に大きくなって、コウノトリが見てきたように、船のマストに使われるのだとおもいます。

14)中庭で、石蹴りをして遊んでいるこどもたちがいます。
15)遊んでいるこどもたちを、赤ちゃんを抱いたお母さんが見守っています。
16)中庭から階段で2階に上がることができるようになっています。2階には、洗濯物が干してあります。縦に連なっているのは何でしょう?スペイン編ではニンニクだったのですが、デンマークでもニンニクを吊しておくのでしょうか?

17)広場に向かって、観光馬車が行きます。写真の馬車は、Den Gamle By(オールドタウン)野外博物館にある馬車です。

18)エプロンをしたおじさんと女の人が話しています。二人の背後には、壺の看板があります。おじさんは焼き物工房の人のようです。

19)左の小屋では、女性が壺を作っています。デンマークの焼き物としては、ロイヤルコペンハーゲン(Royal Copenhagen)が有名ですが、陶磁器メーカーとはいうものの、磁器が中心です。ここの窯は、粘土の色からして、陶器のようです。

20)男性が二人で、板に6個の壺をのせて運んでいます。
21)棚には、整形のできた壺が干してあります。
22)焼成用の釜があります。そのための薪が沢山積んであります。薪の木口のうち4つに顔が描いてあります。薪割り用の斧があります
 煙突が、上になるほど大きく描かれています。上から見ての、遠近法が採用されているようです。

23)ネズミとネコ?の後半部があります。前の前のシーンでイーダちゃんを見ていたネズミとそれを見ていたネコではないかと思います。
 ネコの向こうに、大きな壺が3つ並んでいます。この壺も、ここで焼かれたのでしょうか。

24)馬車の工房があります。看板は、車輪です。Den Gamle By(オールドタウン)野外博物館にも、同じような看板が掛かっていました。

25)子どもが二人がかりで、車輪を締め付けています。

26)回転形の砥石を使って、刃物を研いでいる男の人を、子どもが興味深そうに見ています。砥石は、足踏み式で回るようにしてあるようです。
 回転砥石は、アメリカ編では何度も出てきましたが、何に使うものか、見当が付きませんでした。スペイン編の最後で、斧の近くに置かれていて、砥石であるとことが想像できました。そして、ついに使っているところが描かれました。

27)色々な馬車があります。車輪は、手前の2台はスポークを張ったものです、一方向こう側の一台と修理中の車輪は木製車輪です。

28)テーブルでは木製の車軸を組み立てています。
29)塀の向こうの木材は、馬車を制作するためのもののようです。
30)建物の壁には、車輪や工具がかけてあります。
31)工具のかけてある建物は、テナーの旧修道院付属のパン工房の上部と似ているように思います。

このシーンをテナーの街としましたが、カーマンネンの像以外は、この街と特定できるような建物が見あたりません。テナーというよりは、ユトランド半島(あるいはデンマーク)の古い街を描いてあると考える方が適切かも知れません。



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シーン10裸の王様(p19〜20)

0)旅人は 首都コペンハーゲンにやってきました。スペイン編では、一度も描かれなかった首都ですが、デンマーク編ではたっぷり描き込まれます。
 手前に描かれているのは、コペンハーゲン市庁舎(Town Hall )です。赤レンガ建築で、ところどころに金箔が使ってあります。
1)左手に見える塔は高さ106mで、鐘楼になっています。15分に一度、鐘の音を響かせます。登ることができるようです。
 岡山県の倉敷駅のすぐ北側に、コペンハーゲンのチボリ公園と提携した、「倉敷チボリ公園」があります。駅前には、この塔を模した塔が建っています。
2)屋根の中央には、市章が金色に輝き、左右には杖を持った像がずらりと並んでいます。何かいわれのある像だと思うのですが、不明です。衛兵のようなものでしょうか?
3)市庁舎の左にそびえる塔の上に立つのは、『ルアー笛吹きの像』です。バイキングの古楽器を吹いています。
安野さんは、ジーグフリート・ワーグナー作「古楽器の楽隊」の像だと解説に書いておられるのですが・・・ジーグフリート・ワーグナーは、ドイツの作曲作曲家だと思うのですが??
同名の、彫刻家がデンマークにいるのでしょうか??

4)塔の下には、アンデルセン像があります。
 像は市庁舎の西側(右側)を通るH.C.アンデルセン通り(H.C. Andersens Boulevard )にあって、チボリ公園を見上げています。実際には市庁舎に向かって右側にあります
5)アンデルセン像の横では、像のまねをしている人がいます。この人、空気椅子状態です。この体勢を続けるのは、かなりつらいだろうと思います。
6)赤いスカートの女性は、感心してみているのか?それとも、いい加減にしなさいと止めようとしてるのか?どちらでしょう。
7)右中 噴水があります。コペンハーゲンにある北欧最大のストロイエのアマー広場にある「コウノトリの泉(噴水)」です。この噴水の所では、コウノトリにあやかって、卒業したばかりの助産師さんが、卒業を祝して踊るのだそうです。
 右の写真の左奥にある茶色の建物は、ストロイエにあるロイヤル・コペンハーゲン陶磁器工房」(The Royal Copenhagen Manufactory)の建物です。絵本では木組みの家として表されています。王室御用達で、日本の有田焼に影響を受けた焼き物を作っていましたが、名称を残すことを条件に民家企業になっています。そのマークはデンマークを囲む3つの海峡を現す3本の波形ラインの上に王室御用達を意味する王冠が輝きます。絵本では、
そしてデンマークの国旗が掲げられ、前を行く王様の行列の王冠が店の飾りのようになっています。
8)「裸の王様」のご一行のパレードがあります。
アンデルセン童話の『皇帝の新しい着物(裸の王様)The Emperor’s New Suit 』からです。
9)右下では ペテン師の二人が、「世にも美しい服ですが、自分の地位にふさわしくない者や、手におえないばか者には見ることできないのです。当然、皆様にはしっかりとその美しさを見ることができるでしょうが・・・。」などと、言いくるめています。
10)左下には、お金を手に入れて、さっさと逃げ出している、ペテン師たちがいます。

12)子どもと並んで帽子を振っている人は、その隣の女性とで家族でしょうが・・・帽子を振りながら、見ているのは王様ではなく、行進の先頭の方向です。やはり、裸の王様を直視するのは、耐えられないのでしょう。あるいは、私は自分の地位にふさわしくない者ということだろうか、これがばれたら大変だと動揺を隠そうとしているのか。

15)子どもを連れた、赤と白の縦縞の女性は、大きな人です。
16)松葉杖を突いた男性に連れられた子どもが、王様を指さして、無邪気に何か叫んでいます。「だけど、なんにも着てやしないじゃないの!」
 その子の父親は「こりゃ驚いた、おまえさん、無邪気なものの言葉を聞いてやってくれ。」と言います。こうして、・・・とうとうしまいには「なんにも着ていらっしゃらない!」と皆叫び出すのです。

19)国旗デザインの壁を持つ六(8?)角形の建物は、コペンハーゲンのニュートゥNytorvにあるキオスクです。19世紀からの建物のようです。
 国旗の左には、安野美術館のマークが描かれています。
21)お母さんと一緒の女の子も、秘密の暴露をしているのでしょうか
22)背後の警官も、それを止めようとはしていないようです。
23)騒ぎを聞きつけて、駆けつけている子どもたちが6人います。
 この6人、3)の『ルアー笛吹きの像』を飛び越しているようにも見えます。もちろん、だまし絵です。
24)衣料品のお店があります。
大きなパンツを持った女性がいます。安野さんは、市場のシーンではよく大きなパンツを持った人を描きますが・・今回は、王様のパンツとの関連でしょう。着替えようとか・・・
27)黄色のテントの左端の所に立っている人は何をしているのでしょう?

28)橋の上で、袋の中に入ろうとしている人がいます。アンデルセン童話の『大クラウスと小クラウス』からです。いつもひどい目に遭ってきた小クラウスの「袋に入って橋から落ちれば、海牛が手に入る」という口車に乗せられて、袋に入っている大クラウスです。
 

29)橋の手前にある縄を編んだような屋根の建物は、旧証券取引所です。
 スロッツホルメンにあります。建築王といわれたクリスチャン4世(Christian IV)の建設です。

30)手前のレンガ造りの建物は、所在がコペンハーゲンではないのですが、フレデリクスボー城だと思います。写真の中央部分が、取り入れられているのだと思います。
ルネッサンス様式の城で、貴族の館だったものを、1560年にフレデリック2世が手に入れ、息子の建築王クリスチャン4世が、60年かけて完成させたとか・・・。ということで、旧証券取引所とはクリスチャン4世つながりというわけです。
31)左 若い男女が手をつないでいます。デートでしょうか。
 アンデルセン童話の『柳の木の下で Under The Willow Tree 』のクヌートとヨハンネだと思います。
 ここは、コペンハーゲンですから、ヨハンネを追ってコペンハーゲンにやってきたクヌートが、幼なじみとして温かく迎えられた時の事かなと。ただ、恋心を打ち明けるクヌートに、ヨハンネは友達でいましょうと、やんわり拒絶して、フランスに旅立ちます。
 手をつないでいる事に注目すると・・・イタリアのミラノの大舞台に、さらに大成功しているヨハンネを発見します。ところが、舞台の後、彼女を追いかけてみると、婚約者と一緒にいるところを見ます。ショックを受け、子どもの頃共に遊んだ、故郷を目指すクヌートが、死の直前に見た幻のシーンということになります。砂糖菓子の新郎新婦に見習って、手を取り合ってキェーエの教会へ向かいます。現実ではありませんが、クヌートにとって一生のうちで一番楽しかった時でした。
32)ポンチョを着た、南米アンデス風のストリートミュージシャンがいます。デンマークとアンデスのつながりがよくわかりませんが、バイキングの古楽器との関連でしょうか。
33)一番左で演奏しているのは、牛の皮を張った太鼓「ボンボ」です。リズム担当です。横笛は、葦でできた「ピファーノ」です。続いて長短の葦を並べた「サンポーニャ」。弦楽器はギターから進化した「チャランゴ」あるいは「マンドリーナ」。そして一番右はタンバリンでしょうか。
44)市庁舎の右側の小さな尖塔の先にのっかって、バランスを取っている人がいます。だまし絵です。

48)街を見渡してみると、家々のほとんどが、シンメトリー(左右対称)になっています。デンマークの人は、シンメトリーがことのほか好きなのでしょう。とりわけ、裸の王様の向こう側の、木組みの家は、木組みや国旗も含めて見事に左右対称になっています。
※左の絵は、北シェラン島にあるフレデリクスボー城に飾られている絵画だそうです。背景に旧証券取引所が建っていますから、コペンハーゲンです。そして前景には、王様の行列が描かれています。たくさんの人々が、見物に集まっています。ただし、王様とおぼしき人は、ちゃんと服を着ています。このような、光景が実際にあったのでしょう。アンデルセンもそのことをふまえて、お話を作り。挿絵画家も挿絵を描いたものと思われます。



シーン11チボリ公園1入り口(p21〜22)
0)旅人は コペンハーゲンにあるチボリ公園(Tivoli)にやってきました。

 デンマーク王クリスチャン8世が、ゲオ・カーステンセンに命じて作らせたそうです。世界の遊園地を研究した、カーステンセンは、1843年に国王から約6haの土地を借り受けて、コペンハーゲンに作り上げました。コペンハーゲン駅前にあります。
 本家チボリ公園と提携してできた「倉敷チボリ公園」も、倉敷駅の北側にくっついて建設されていて、素敵な歩道橋で繋がっています。
 名前の由来は、ローマ郊外で貴族の保養地であったTivoli(ティヴォリ)にちなんだものだそうです。こちらには、温泉もあるようです。
 アンデルセンも、元祖チボリ公園によく訪れたようです。「ナイチンゲール」は、ここでの経験が、物語のヒントとなったようです。
2)門の前には、沢山の人がやってきています。子どもはもちろんですが、若い恋人風、親子風、老夫婦風、夫婦風、車椅子の人を連れてきている人など、とても多様です。字債のチボリも、年齢層の広い利用者が訪れるようです。
3)門の所に、垂れ幕が下がっています。「TIVOLI 2005」とあります。2005年は、アンデルセン生誕200年の年です。
4)青いボックスのようなものは何でしょう?色は違いますが写真にもあります。チケットの受け取りをするところでしょうか。警備の人も立っています。
7)座席がトランク形の観覧車?があります。ただ、観覧車だとすると、縦方向に回転していることになります。ところが、そうすると、上部と下部では、トランクがバーに当たってしまいます。かといって、水平方向の回転をしているのだとすると、動力との関係で成立しないようです。だまし絵です。
 トランクは、アンデルセン童話の『空飛ぶトランク』からです。
 チボリ公園には「The Flying Trunk」というアトラクションがあります。空飛ぶトランクに乗って、動く人形の中を移動してゆくもののようです。また、The Blue Sapphire(青色のサファイア)」という、トランク型のような座席を持った観覧車があります。
9)順番待ちをしている人たちは、係員の前に、一列に並んで待っています。ただ、2番目の人は、随分大きそうですが、大丈夫かな。先頭の子どもと話しているようですが、まさか一緒に乗らないですよね。
10)観覧車?の動力は、2頭の牛です。牛が水平方向に作り出した、回転が装置によって、縦方向に変えられています。
 整備の人の足下には、大きな油差しが置いてあります。
12)門の向こう側の横木に沿って、一列に並んでいる人たちは、どの乗り物に対して待っているのでしょう。係員の人は、待つように言っていますが。ジェットコースターだとして、どうやって乗り込むのでしょう。
13)ジェットコースターの先頭は、箒に乗った魔法使いのおばあさんです。
 その上、レールが切れて、そのまま空にあがってゆくようです。すごい!!まるで、『銀河鉄道の夜』のようです。
チボリ公園には、いくつかのジェットコースターがあります。(写真にも写っています)その他、1914年に建設されたという、世界最古の木造ジェットコースター「The Roller-Coaster」が現役稼働中です。

14)箒の所にも子どもが乗っかっています。ロープを持っているようですが・・この子どもが押さえているの?
15)先頭と2番目に乗っているのは、モグラとヒキガエル。『親指姫』に振られてしまったモグラとヒキガエルでしょうか。ここへ来て、失恋の痛手も忘れたようで、楽しんでいます。
 アンデルセンも、よく来たそうですが、彼もここで失恋の痛手をいやしていたのでしょうか。
16)続いては、子どもたちが乗っていますが、手を挙げていたり、立ち上がっています。シートベルトはしていないし、安全面で大変問題があります(^_^;)
17)次の台車ではもっと大変なことが起こっています。台車をつないでいるロープがほどけたようで、結び直しています。周りの子たちは落ちないように足を押さえていますが・・・あぶないなぁ。
18)その後ろの台車の子たちは、この事態に焦っていますが・・・その後ろのロープが今にも切れそうです。
21)トナカイの後には、サンタクロースが、プレゼントの袋と一緒に乗っています。
22)後ろには、子猫をくわえたネコ・・・クロネコヤマト?

23)カタツムリが、後ろの方にはウサギもいます。
 アンデルセン童話の『かけっこThe Racers 』からのようです。競争の結果が、1位ウサギで、2位カタツムリ!?という事態。その訳は・・・
24)ウサギの後ろにはカメ、この組み合わせは「ウサギとカメ」です。
25)車椅子がそのまま台車になっている部分もあります。
26)トナカイに乗っている男の子がいます。
 アンデルセン物語の『雪の女王 The Snow Queen』からです。悪魔の鏡が割れて、その破片が目に刺さったカイ少年は、雪の女王のもとにいます。幼なじみの少女ゲルダは、カイをさがして、山賊の小娘のトナカイを借りて、ラップランドに向かっています。
 この挿絵のシーンでは、乗っているのは女の子のゲルダですから、その点が違います。挿絵は有りませんが、カイと出会いその記憶を呼び戻すことができた後、雪の女王の所から帰るときに、カイとゲルダがそれぞれトナカイに乗るので、そのときのシーンと考えることもできます。

27)イノシシに乗った子どもがいます。
 こちらは、アンデルセン童話の『青銅のイノシシThe Metal Pig』からです。
 写真は、フィレンチェの青銅のイノシシです。さわると、幸せになれるのだそうで、鼻の色が変わっています。アンデルセンの時代から、色が変わっていたようです。アンデルセンは、このイノシシ像を見て、想像力を働かして、この物語を書いたわけです。
 フィレンチェのイノシシのコピーが、神戸にあるそうです。

28)滑り台があります。長い滑り台を滑り降りると、順番待ちの列に加わるようです。どうも、行列しているところは随分急な坂になっているようです。・・・安野さんそうですよね?

29)黄色の服を着た女の人が、調整しているようです。
30)制服の人は、何をしているのでしょう。
31)子どもが、何か指さしています。行列の中の子が喧嘩でもしているのでしょうか。
32)滑り台の降り口のところで、外に立っている子の位置はどうなっているのでしょうか。どうもあり得そうもありません。だまし絵です。

33)池があって、中国風の建物があります。本物のチボリ公園の景色です。
34)池のボートは「The Dragon Boats(ドラゴンボート)」という名があるようです。
船同士で、ぶつけあったりするのでしょうか?
35)中国風の建物の近くなのに、ベニス風の船があります。本当のチボリ公園にもあるのでしょうか?
36)奥に、中国風の人が、鳥を見ています。アンデルセン童話の『ナイチンゲールThe Nightingale』からです。
 皇帝の森には、世にも美しい声でなくナイチンゲールがいましたが、宮廷の人たちはそのことを知りませんでした。本で、そのことを知った皇帝は、ことのほかこの鳥を愛します。ところが、日本からこしらえものの鳥がもたらされます。いつでも、何度でも鳴く機械仕掛けの鳥に心が奪われた皇帝を残して、本物は森に帰ってしまいます。そのあげく、作り物の鳥は壊れてしまいます。心を痛める、皇帝のもとに本物があらわれます。・・・・。
 『ぶた飼い王子』の話もそうですが、作り物に心を奪われることを、アンデルセンはよしとしなかったようです。1世紀半たって、美しい曲を奏でる機械が、ちまたにあふれ、心奪われるようになる私たちのことを見通していたのでしょうか。本物より、作り物に心が奪われるあり方を、反省したいものです。
37)親子3人が通る門の脇には、地球儀が飾ってあります。中国だけでなく、他の地域の文化も紹介してあるのでしょうか。
38)馬に乗った人が、次々と相棒を変えてゆきます。アンデルセン童話の『父さんのすることはいつもよし What the Old Man Does is Always Right』からです。
 この話は、まるで逆わらしべ長者のようです。市場へ馬を売りに出かけた父さんは、客観的には(金銭的には)より価値の低いものと交換してゆくのです。馬を牛に、牛を羊に、羊をアヒルに、アヒルをめんどりに、めんどりを腐ったリンゴ一袋、といった案配です。わらしべ長者の逆ですが、同じこともあります。世間的な欲で、交換を判断しているのではないと言うことです。ただ、結果が逆なのです。この話を聞いたイギリス人が2人、これでは、この男は家に帰ったら奥さんに怒られるだろう(ぶたれるだろう)と思います。ところが、父さんはそんなこと無いというのです。・・・・はて、その結果は。
 奥さんは「父さんのすることは、まちがいない」と抱きつくのだから、驚きです。イギリス人は、「こいつは気に入った!いつも下り坂ときているのに、いつもゆかいだ!」と沢山のお金を置いてゆきます。逆転ホームラン。あれ?結局お金持ちですか。

39)左下 ここにもボートが、池のそばの柳の木の一本に、顔が隠されています
 この絵は、アンデルセン童話の『ソバ The Buckwheat 』からのようです。
 節くれ立った柳の古木です。幹の裂け目から草やキイチゴのつるなどが生えているのです。柳の木は、傲慢なソバ畑が雷に打たれるのを目にします。

40)蒸気機関車型のトロリーバスがあります。本物のチボリ公園にも、トロリーバス(The Trolley Bus)があります。また、蒸気機関車型のジェットコースター(The Odin Express)があります。
41)トロリーバスの最後尾には、猿と犬が乗っています。

シーン12チボリ公園2お化け屋敷(p23〜24)
0)旅人は お化け屋敷?にやってきました。
 門にはTIVOLIと書いてあるので、チボリ公園のようですが・・・。本当のチボリ公園にもお化け屋敷があるのでしょうか?
4)生きた樹がゲートになっています。そしてゲートには、緑の顔が着いています。目線が斜め上に向かっていますが。何を見ているのでしょうか
5)ゲートの上には、リスが隠れています。顔が見ているのは、このリスでは無いかと思います。リスに、幹をかじられているのかも。
6)枝に、時計がぶら下がっています。時計を目に見立てると・・怪物の顔があります。隠し絵です。
 時計の時刻は・・・2時・・・午前2時・・・丑三つ時です。
7)時計にぶら下がった枝は、微妙なラインで描かれています。時計の先で、うねっているところが鼻に見えます。やはり、時計を目に見立てて、横になった顔があるように思います。
8)門の右には人形劇の小屋がかかっています。テントの3本の支柱が見えていますが・・・なんだか変です。子どもたちの姿が見えるように一番手前の支柱を短く描いてあるのかも知れませんが、どうもだまし絵のようです。人形使いの人たちの立ち位置も不自然です。
 そして、この部分はアンデルセン童話の『人形つかい The Puppeteer 』からです。
人形つかいは、人形が人間になって自分の言う通りにしてくれるようになったらと願います。ところが、その願いが半分だけ叶ってしまいます。人間にはなったものの、文句たらたらで、思うように動いてくれないのです・・・。アンデルセンの周囲の人たちが、彼の思い通りに動いてくれないイライラでもあったのでしょうか。
11)垣根の外に、アヒルを連れた人がいます。これは、何の話でしょう?
12)中国風の建物の屋根の一部が見えます。前のページの門の続きでしょうか。

13)左上 コガネムシとカエルが話しています。アンデルセン童話の『コガネムシ The Beetle 』からです。他人に好都合なことも、自分に良いとはかぎらないようです・・・。まあ、人生そんなものです。
14)魔法使いのおばあさんに指示されて、兵隊さんが木に登っています。
 アンデルセン童話の『火打箱 The Tinder Box』からです。
 たくさんの銅貨・銀貨・金貨をもらう代わりに、巨大な犬の護る火打箱を取りに入った兵隊さんは、火打ち箱を魔法使いのおばあさんに渡さずに・・・・。
3人の兵隊さんは、木に登り、中に入り、大きな犬に向かい合うそれぞれのシーンで、同じ人物です。
巨大な犬が、木の枝であらわされています。見事な隠し絵です。

15)赤い服の女の子が水たまりの上にパンを置いて、踏み台にしようとしています。
 アンデルセン童話の『パンを踏んだ娘 The Girl Who Trod on the Loaf』からです。

16)娘が引き吊り込まれた所には、「沼のばあさん」が酒造りをしています。沼のばあさんが出てくる話がもう一つあります。アンデルセン童話の『鬼火が町にと沼のばあさんがそう言ったThe Will-O-The Will-o'-the-Wisps Are in Town 』です。
 飛び出した鬼火たちは、町で人間の姿になって大騒ぎをしているというのですが、それはどれでしょう。

17)丘で、女性が手をつないで踊っています。
アンデルセン童話の『妖精の丘 The Elf Mound 」からです。
 霧と月の光とで織った長いショールを着た妖精の娘たちがダンスを踊っているのです。お年寄りの妖精の王様は、偉い人を招いています。 幽霊鳥が招待に回ります。人魚の娘さんや墓場の豚や地獄の馬がやってきています。そこへ、鬼火がふたつ、お客様の到着を告げます・・・・。
19)王冠をかぶっているのが、お年寄りの妖精の王様です
 隣にいるのは、お着きの人でしょう。
 えらいお客さん(ノルウェーのドウレ山の小人の主とその息子)はまだ到着していないようです。
20)頭が燃えているように表されているのが鬼火ということでしょう。
 ちなみに、鬼火は、「誰もいないはずの場所で空中に浮かび上がる正体不明の火」の事です。言い換えると「火の玉」ということになります。死体から出た燐が発光しているのだとか、プラズマ発光だとか色々と説が有ります。ともあれ、西洋にも有ると言うことですね。ただ、アンデルセン童話を読んでいると、西洋では鬼火そのものに人格というか意志があるようになっています。
21)くちばしのようなとがった口をしているのが、幽霊鳥ということでしょう
22)足の長い化け物は、地獄の馬ということでしょう。
23)もう一匹が墓場の豚ということでしょか
24)人魚の娘さんもきています。物語では、水を離れるのが難しい、人魚のためには、水を用意してあったようですが、安野さんは省略されたようです。
 25)ピアノを弾いているおじいさんと、それを見ている子どもがいます。
 アンデルセン童話の『Det gamle Hus古い家 The Old House』の、愛する妻を亡くし、一人静かに古くなった家に住む老人です。向かいに住んでいる少年は、古家を訪れ話し相手になります。
26)中央に階段の有る家があります。
『古い家』があらわされているのだと思います。 
27)階段の脇に、鎧兜があります。『古い家』には甲冑は出てこなかったと思いますが、少年が持ち込み、後に古い家の跡地に見つけることになる、錫の兵隊を意味するのかも知れません。
28)茅葺き屋根の家中に子どもが寝ています。これはなんでしょう?
@古い家の向かいに住んでいた少年・・・これではこちらの家の方がもっと古い。
 A アンデルセン童話の『 Historien om en Moder ある母親の物語 The Story of a Mother 』に出てくる、坊や
 Bアンデルセン童話の『Barnet i Graven 墓の中の子供 The Child in the Grave 』の坊や
 Cアンデルセン童話の『 Lille Tuk ツック坊や Little Tuck』のツック坊や
29)白衣の2人と、黒衣の1人 (死に神)がいます。この存在を考えると、28)で寝ている少年は、AかBの幼くして死んでしまう坊やではないかと思います。
30)死に神の所にある木には、ドクロや怖げな顔が3つ隠れています。隠し絵です
 さらに、死に神の右の木の幹に、横顔が隠れています。

31)井戸の所にカエルがいます。
 アンデルセン童話の『ヒキガエル』からです。
 井の中のヒキガエルが、外に出ます。外の世界は広く。さらにさらに広い世界を目指しますが・・・・。

32)ピアノの所から天使の所まで、車椅子を押す子どもなどたくさんの子どもが描かれています。
 この子たちは、お化け屋敷で遊んでいるということでしょうか?
 裸の王様のシーンでも同じように、弧を描いて子どもたちが描かれていました。大きくジャンプしている子どもたちの分解写真のようにも見えますが・・・。
この天使ですが・・・
アンデルセン童話の『 雪の女王 The Snow Queen』からではないかと思います。(左の挿絵が雪の女王)
その場合は、天使ではなく、雪の女王ということになります。
 美しいけれども、カイの記憶を奪い愛玩動物のように取り込んでしまった女王です。すると、かけてゆく子どもはカイということになるのでしょうか。
 ちなみにこのような雪の女王のありようは、グレートマザー(太母)的だといえます。グレートマザーは、育て・支える肯定的な面と誘い込み・呑み込み・とりこむ否定的な面、別の表現にすると生と死の両面をもつ母性の象徴です。
 絵本では、両手を広げ子どもを待ち受けています。それは護るためか、取り込むためか。


33)恐竜の骸骨があります。デンマークに、左の写真のようにハクジラの骨があるようです、このイメージから描かれているのではないかと思います。
骨格の背中のラインと隣り合う木の枝のラインが連続しているようです。何か意味があるのかと考えてみましたが、今のところ不明です。
34)墓地があり、墓石がたくさんあります。
 アンデルセン童話の『古い墓石 The Old Tombstone 』からです。
 誰のものか分からなくなった古い墓石は、尊敬された夫婦の墓。秘められた物語です。
35)墓場に子どもを抱いた女性がいます。
 アンデルセン童話の『墓の中の子供 The Child in the Grave 』からです。
 亡くなった子どもをあきらめることのできない母親は、死に神と共に墓の底に降りてゆきます。そこで、坊やを抱き、坊やと話し。神様から生きる力を頂いてくるのです。
36)天使の上の木の枝にアシナガバチの巣があります。
37)子どもが二人、木のお化けに食べられそうです。
 鋭い歯や、ぎょろりとした目なかなか怖いですが・・・口の中に入っているはずの子どもは、別の場所にいます。だまし絵ですね。
38)海賊船があります。チボリ公園に実際にあります。絵本ではどくろマークが翻っています。船には船長さんが一人だけ立っています。
 倉敷チボリ公園にある姉妹船は、17世紀にデンマーク女王陛下のフリゲート艦として活躍した船を再現したものということで、海賊船ではないようです。チボリ公園の船にもデンマーク国旗は翻っていてもどくろマークは無いようです。
 船尾に2005と記されています。アンデルセン生誕200年の年です。

39)船を見上げている人魚姫がいます。アンデルセン童話の『人魚姫』からです。
41)ロープにぶら下がって船から上陸しようとしている海賊がいます・・・・。でも、よく考えると、陸からは随分離れていて、ただ空中でぶらぶらしているだけです。だまし絵です。
 この、海賊たちが、町に飛び出した鬼火だという説もあります。
43)走って逃げる女性と男性がいます。男の方は、木の上を飛んで逃げているように見えます。これもだまし絵ですね。
44)逃げている女性の足の先に、何か虫のようなものが描かれているのですが・・・これは何でしょう?
47)夫婦の脇に立っている木には、カラスがとまっています。茅葺き屋根の中の子どもを見ているようです。不吉です。
48)右の枝に、フクロウが隠れています。そして、幹にも坊やを見ているように顔が隠れています。隠し絵です。
50)人魚の外の木の幹に、大きく口を開けた顔が隠れています。隠し絵です
51)茅葺きの家の外の木2本に、幹の中に顔があります。坊やを見るような、下がり眉のお祖父さんのような顔左を見ている横顔です。隠し絵です
52)大鎌を持った骸骨が二人、入場口の人たちを木の陰から見ています。
53)右側の骸骨が右手を置いている木の枝の中に、葉が目になっていて、細い眉もある女性の横顔があります。隠し絵です。

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