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シーン16ヴェニス(P31〜32)



0)旅人は・・・水の都ヴェネツィア(英語名 ヴェニス)にやってきました。

ヴェネツィアの土地は、湿地帯です。なぜそんなところに街を作ったのかというと、6世紀頃にフン族・ゲルマン民族がヴェネト地方に侵入してきます。元々の住民は、攻められにくい(守りやすい)湿地帯に避難してきたのです。それは、現在の「トルッチェロ島」付近から始まったようです。湿地帯に巨大な建造物を建設するために多くの工夫を積み重ねて、現在があるのです。
ヴェネティアの写真
http://www.earth-photography.com/Countries/Italy/Venice_photos.html
http://www.photos-voyages.com/venice/

1)左上 開廊が並んでいます。これは、「サン・マルコ広場」にある「ドゥカーレ宮殿(Palazzo Ducale)」のようです。水路にかかる橋も見えています。
http://www.michaeltaylor.ca/Culture/doge.shtml

2) 天秤ばかりとナイフを持った男が、何かもめ事を起こしています。
 シェイクスピアの「ヴェニスの商人」の一場面です。
「ヴェニスの商人」のお話はこちら

3)もめ事に気づいた子どもが、警察官を連れてきています。

4)鳩に餌をやっているのかたくさんの鳩が集まってきています。ヴェニスには鳩が多いようです。特に、このサン・マルコ広場には、餌をやる人が多いからでしょう、多く集まってくるようです。

5)首から箱を提げている人は、鳩の餌売りをしている人のようです。

6)三つのランプがついた街灯があります。この街灯は、サン・マルコ小広場にあります。
そして、蚤の市の同じ位置に108)に同じデザインの街灯がありました。

7)親子連れが、橋を渡っています。橋の下をゴンドラがくぐれるように高く作ってあります。実際の橋はもう少し大きいのですが、宮殿との位置関係からして、「detto della taglia(身代金の橋?)」ではないかと思います。なんともすごい名前です。
ただ、場所を考えずに橋の規模やデザインを考えると、この写真にあるような橋がモデルのようです。

8)右手の建物と建物をつなぐ橋があります。ドゥカーレ(総督)宮殿と牢獄をつなぐ橋です。宮殿から牢獄に連れて行かれる囚人たちはこの橋で「ため息」をついたといいます。というわけで、「ため息の橋」というそうです。唯一全て屋根で覆われている橋で、窓には、鉄格子がしてあるそうです。なかなか・・・シビアですね。


9)ため息の橋でつながっている建物は本来は牢獄のはずですが、これは1440年にできた、カ・ドーロ、Ca' d'Oro(黄金の屋敷)宮殿のようです。なぜ、黄金かというと、金箔が張られていたからといいますから。ヴェネチアの金閣ですね。中は美術館になっているのだそうです。
http://www.michaeltaylor.ca/Culture/ca-doro.shtml

10)柱の上に有翼のライオンの像があります。翼のあるライオンはヴェネチア共和国の国章です。その昔、ヴェネチア共和国が、守護聖人を求めていたところ、マルコの福音書の著者であるマルコの遺骸がエジプトにあり、イスラム教徒に奪われるおそれありとの情報を知って、これを密かにヴェネチアに運びました。以後ヴェネチアの守護聖人はサン・マルコになったわけです。そして、マルコとマルコの福音書は、翼のあるライオンで表されるのです。
サン・マルコ広場の一角に、あります。

11)魚をさばいている人がいます。その場で売るのでしょう、お客さんもいます。
12)これも海産物でしょうか、箱をエプロンをした人が運んでいます.


13)大運河(カナル・グランデ)に、屋根付きの橋が架かっています。これは「リアルト橋」です。別名「白い巨象」とも呼ばれます。
この橋は歩行者専用で、橋の中に商店が並んでいます。
安野さんは橋についてる看板の代わりに、「ANNO1978」と書いています。1978年はこの第2巻を描いた年です。ANNOは、安野と西暦をかけています。

14)橋を色んな人が渡っています。右から左に渡るために上っている、子ども二人と大人二人。
15)橋の上から下のゴンドラを見ている人が二人
16)中央の屋根の下にカップル
17)GI帽をかぶっている二人(軍人さん?)に子どもが話しかけている?
18)下っている女性と、上ってくるカップルがいます。
19)橋のこちら側には、5人の人がいます。1人はゴンドラを指さしています・

20)屋根の上で洗濯物を干している女性がいます。
 物干し場が、屋根の一番上にあるのはどうも不自然です。だまし絵?安野さんはどういう意図なんでしょうか。

21)橋の下をゴンドラがいきます。ゴンドラの船頭さんは、赤白の横縞のシャツに青のズボンにカンカン帽が制服でしょうか。お客さんは、新婚さんが多いとか。この二人もそうでしょうか。
by forest-doorさん
ベネチアといったら運河、ゴンドラです。大運河(カナル・グランデ)を行くゴンドラが描かれています。
昔、お金持ちは自家用ゴンドラを豪勢にして競い合ったため、政府はゴンドラを黒一色にすること、と法令を出しました。また、大きさも統一されています。船首についているくしの形のような飾りはフェッロ(鉄)と呼ばれていて、見通しのきかない水路での先触れになっているそうです。そして、ゴンドラをこぐのは、ゴンドリエーレというこぎ手で、縞模様のシャツ、カンカン帽がお決まりの服装です。
そして、縞模様のポールが運河につきたてられていますが、これは船着場を意味するそうです。


22)屋上に鐘をたたいている像があります。これは、「ムーア人の時計塔(Torre del'Orologio)」です。
二人のムーア(モーロ)人の青銅増が、毎時この鐘をうちならすのだそうです。
そして、この塔の下には、絵のように有翼のライオンが聖書を持った像も有ります。聖書には、「平安汝にあれ、福音者マルコよ」と書かれているそうです。

の位置には、蚤の市で鐘と槌があり、髪長姫のシーンでは鐘を製造していました。

23)ムーア人の横には3人の観光客がいます。赤い服の人は手を挙げていますが、柱の上の有翼のライオンを指さしているのでしょうか。

24)一段下の屋上には観葉植物がおいてあります。なぜか樽も
25)手すりの所に、男の人がでていて、建物の中に入ってゆこうとしています。
26)ベランダには、セーター?を編んでいる女性がいます。
27)お盆を持った女性は飲み物でも運んでいるのでしょうか
28)手すりの所の男性は、棒状のものを口に入れていますが・・・歯ブラシ?キャンディー?

29)リアルト橋の所から、運河沿いに並んでいる3階建ての建物は、商館だろうと思います。館の名前は特定できていません。でもこんな風景から
http://oasis.halfmoon.jp/extphoto/ita_photo/99-032.jpg

30)屋根に埴輪のようなものがのっかている方は、名称が分かりました。
ダリオ館(Palazzo Dario)です。
ジョヴァンニ・ダーリオのために1487年に建設されましたが、代々の持ち主が不幸になってしまう曰わく付きのお屋敷のようです。
http://it.wikipedia.org/wiki/Ca'_Dario

31)商館の前には船着場を意味する、床屋のサインポールのようなものが運河の中に立っています。ここにも、船が着くんですね。
右側の建物のモデルは、多くの芸術家のサロンだったという、バルバロ宮(左の写真)ではないかと思います。

32)運河沿でイスに座って刺繍をしている女性が三人います。第2巻には刺繍をしている女性がよくでてきますが、イタリアでは刺繍が盛んなのでしょうか。

33)筒状のものが二つあります。ゴミ箱でしょうか
34)手押し車に箒を乗せて、掃除をしている人がいます。
35)建物の陰に神父さんが、半分体を隠して立っています。一体何から身を隠しているのでしょうか

36)がっしりした女の人が二人話しています。さっきの神父さんはこの二人のことが気になっているのでしょうか?

37)船頭さんが二人何事か話しています。

38)カップルが通りかかっていて、船頭さんがゴンドラに乗るように進めています。この二人、一つ前の髪長姫のシーンでもこの位置で二人で歩いていました。教会で式を挙げていた二人?

39)お客さんを待つ間にゴンドラの手入れをしたり、お客さんのいないゴンドラを動かしている船頭さんもいます。
ゴンドラの係留所のモデルは、スキアヴォーニ河岸にある係留所ではないかと思います。

40)緑のドームが美しい教会があります。「サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会」です。
http://de.wikipedia.org/wiki/Bild:Wenecja_Santa_Maria_della_Salute.JPG
by forest-doorさん
サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会が描かれています。「サルーテ」とは健康という意味で17世紀に流行ったペストの終焉を願いつけられた名前だそうです。堂々とした建築ですね。中央のドームの下にある渦巻状の部分はバットレスといって壁を補強するために作られた、壁から直角に張り出した一定間隔で並ぶ柱のような支えのことで控え壁というそうです。いいアクセントになっていますね。
中央のドームの後ろには2つの塔に囲まれた小ドームもあります。

41)入り口の前に、ネッカチーフをつけた女性が二人います。
42)大きな鞄を持った夫婦は疲れたのでしょうか、階段に腰掛けています。
43)地図を出して、お巡りさんに色々質問しているのも、ご夫婦でしょうか。地図には何が書いてあるのでしょう?

44)子どもが4人電車ごっこをしています。この4人、パレード見物の中で凱旋門の近くを一列になって走っていました


45)女性が運河に落ちそうです。それを見ている男の子がいます。
ここの絵は、最初に出版された版では描かれておらず、改訂版で書き加えておられます。
これはヴェネツィアを舞台にした映画『旅情(SUMMERTIME)』 の キャサリン・ヘプバーン (Katharine Hepburn )です。8mmカメラで気になる店を撮りながら後ずさりしていたら、運河に落ちてしまうのです。子どもはヴェニスの案内をしているマロン少年です。このシーンはサン・バルナバ広場(Campo San Barnaba)で撮影しているそうです。
 ストーリーは、メロドラマですが、キャサリンの名演技が光ります。そして、映画の各シーンを彩るヴェニスの名所が美しく、この映画がきっかけでヴェニスを訪れる人も多いようです。旅の絵本のこのシーンに描かれている建物もほとんど、出てきます。
 コーギーさんという方の、ブログで、映画の各シーンと現在のヴェニスが対比されています。さすが、文化遺産です。50年たっても良く保存されています。
映画「旅情」の今を訪ねて
http://homepage2.nifty.com/nakanishi/eigatop.html

旅情の情報は、CinemaItalia (映画でイタリアを楽しむページ)の管理人さんから教えていただきました。
http://www.cinemaitalia.jp/

46)手品師の技を見るために、古風な服装をした人たちの人だかりができています。これはヒエロニムス・ボス『手品師』(『The Magician』からです。

手品師は、「カップと玉」をしています。のぞき込んで見入っている人がいます。その隙に後ろの仲間?がわざと知らん顔をしながら、財布をとろうとしています。
でも、一番前に潜り込んでいる男の子は、振り返ってみています。この事態に気づいているようです。
安野さんの絵では何も持っていませんが、元の絵では、この子どもが風車(かざくるま)?のようなものを持っています。
手品師の足下の猫(か?)の顔が元の絵では随分不気味です。(リンクしたHPを見てください)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Hieronymus_Bosch_051.jpg

ところで、一生懸命手品を見ていて、泥棒に気づいていない人ですが、元の絵では異様なことをしています。(一番大きくして見てください)口からカエルをはき出しているのです。すでに、一匹机の上にはき出しています。これは何だ?絵の題名は「いかさま師」とも訳されます。手品師をいかさま呼ばわりはあんまりだと思いますが・・・泥棒と組んでいるのならいかさま師でしょう。そして、カエルをはき出しているのが、より高度な手品だとすると・・これもいかさま師っぽいですね。
この、カエルをはき出すことについての考察が、下記のHPにあります。
蛙食文化 −法龍寺「食用蛙供養塔」−
http://www.kaeruclub.jp/report/houryuji/Stomacfrog.html

47)手品師を指さしている男の子の持っている、風車(かざぐるま)のようなものは、手品師の絵の中では潜り込んでいる子どもが持っていました。絵の中の子と同じ風車を持たせることで、絵の中の子どもと実は同一人物という考え方もできるかもしれません。隣の女の子に、泥棒について教えているようです。

同じような風車が、ブリブリューゲルの「子供の遊戯」「風車で槍合戦」という遊びにも使われています

48)少し離れて、買い物袋?を持った女性が見ています。
49)シルクハットの男性と一緒の女性も、手品が気になっているようです。そんなに見ていると、泥棒にあいますよ。

50)写真を撮りますと呼びかけている写真屋さんがいます。見本の写真を展示しています。中の一枚は、教会のドームを写しているようです。

51)写真屋さんが声をかけているカップルの男性の方は、海軍さん?

52)旅人の向側に描かれている建物は、スカルツィ教会(Chiesa degli Scalzi )です。
 ヴェネツィアの国鉄駅サンタ・ルチア駅を出てすぐ左にある教会で、ヴェネツィアに着いて最初に出会う豪華な教会ということになります。前には大運河(カナル・グランデ)と、運河に架かるスカルツィ橋があります。
 17世紀にB.ロンゲーナによって建設された教会です。写真のように2連の柱が特徴です。バロック様式の教会です。
http://oasis.halfmoon.jp/extphoto/ita_photo/99-006.jpg

53)教会の前が、オープンカフェになっています。赤いネッカチーフの女性は、赤ちゃんを抱いて仕事をしています。
この女性は、聖母マリアを連想させます。スカルツィ教会の入り口の上部にはイエスを抱いた聖母マリアの像があるのです。(詳しくは、教会の写真をクリックして拡大写真を見てください。)

54)丸いテーブルに5人のお客さん。ウエイターがハンドバックを持った女性を案内しています。テーブルについているお客さんと同席を勧めているようですが、座るべきイスが見えませんけど。

55)花売りの少女がいます
56)教会へ向かっているように見える高齢の夫婦がいます。赤ちゃんを抱いている人が、案内しようとしているのは、この夫婦ではないでしょうか。

57)奥のテーブルにも、5人の人がいます。一番奥の男性はスパゲッティを食べています。イタリアは、やはりスパゲティですかね。
58)テーブルの右にも夫婦連れがいます。男性は右の方を指さして、奥さんに伝えようとしています。なにがあるのでしょうか?

59)アコーデオンを演奏する女性と、その前で両手を挙げて歌ってい男性がいます。8人の男女がこの歌に聴き入っています。どんな歌を歌っているのでしょう。やっぱり、カンツオーネでしょうか。

旅の絵本2表

シーン17造船所(P33〜34)



0)旅人は・・・ヴェニスの裏町にやってきました。
裏町には、最後に残されたゴンドラの造船所が描かれています。ヴェニスのサントロヴァーソ運河にあります。観光名所の一つになっていて、対岸から見ることができます。
http://inoue-h.hp.infoseek.co.jp/extphoto/ita_photo/99a-011.jpg


1)左端 テントの市場で、エプロンをした魚屋さんが魚をさばいて売っています。
こんな感じで、ヴェニスの裏町に実際にあるようです。
http://wadaphoto.jp/images/itaitiba.jpg

2)とろ箱を4つ重ねた手押し車や、ゴミ箱があります。

3)市場を訪れたお客さん達もたくさんいます。赤いネッカチーフをした買い物籠を持った女性は支払い中です。
4)コートを着て、帽子をかぶった後ろ向きの男性がいます。
5)男の人が見ているのは、アコーデオンを演奏している人でしょうか。
6)窓から顔を出して、屋根に布団?を干している人がいます。
7)車にとろ箱?を乗せて路地に入ってゆく女性がいます。
8)路地からは犬を散歩させている女性がでてきました。
9)路地の奥を二人連れが歩いています。
10)路地の上では洗濯物が干されています。窓からは、女性が顔を出して何か手をさしのべています。何??反対側の窓にだれかいて話しているのでしょうか。
ひょっとして、前のシーンで57)で指さしていた男の人が指さしていたのはこの洗濯物???

11)エプロンをして、箱に入った荷物を運んでいる男の人がいます。この人前のシーンでは、12)リアルト橋のたもとで同じように荷物を運んでいました。

12)まりつきをしている2人の女の子がいます。そのうちの1人は、運河にまりを落としてしまったようです。
ブリブリューゲルの「子供の遊戯」の絵にも「ボール遊び 」をする子がいます。この時代のボールはゴムがないと思うので・・・どんな素材でできていたのでしょうか?

13)竿を持った男の人が、運河に落ちたまりを拾い挙げようとしています。
14)運河には空のゴンドラを漕いでいる船頭さんがいます。

15)窓の上女性とが、ひもにつるした籠で果物を買っています。売っているのは、手押し車に商品を乗せています。こんな商売をしている人、ほんとにいるのでしょうか。
ブリブリューゲルの「子供の遊戯」の絵に「籠をぶらさげる」という遊びが出てきます。


16)青いパラソルの屋台はアイスクリーム屋さんでしょうか。男の子と女の子が買いにに来ています。
17)運河べりのベンチには男の人が3人話をしたり、新聞を呼んだりしています。
18)子どもが2人コマ回しをしています。安野さんここまでにもなわとび・竹馬・かけっこ・サッカー・馬跳び・平均台あそび・電車ごっこ・まりつきなどたくさんの遊びを書き込んでおられます。イタリアの子どもが実際にこんな遊びをしているのでしょうか。
 『安野さんはブリューゲルの「子どもの遊戯」に対抗して、できるだけ多くの遊びの様子を紹介したかったのでは』と、いっておられる方がおられました。・・・なるほど、そうなのかもしれません。
 
18)コマ遊びをする子ども達をパイプをくゆらせながら見ているおじいさんがいます。こういう人の存在って大切ですよね。
ブリブリューゲルの「子供の遊戯」の絵には二種類の独楽遊びが出てきます。
「投げ独楽(左)」「鞭独楽(右)」です。安野さんの描いた独楽遊びはどちらでしょうか?鞭独楽のようにも見えるのですが・・

19)ゴンドラの製造所では、ゴンドラ造りをしている男の人が二人います。
20)運河のふちで、ボール遊び?をしている男の人がいます。
21)運河に架かった橋の上には、カップルがいます。女の人は指さしているようです。
ヴェネチアにはたくさんの橋が架かっていてその数は約400とか。こんな橋もあるようですね。

22)繋留している船に乗って、橋の上にいる二人に手を振っている人がいます。
23)造船所の前をゴンドラを漕いでいる人がいます。

24)造船所の反対側では、ゴンドラより少し大きめの船を修理しているようです。運河を利用して荷物を運ぶための船のようです。

26)木をたくさん立てかけた建物があります。これは船に使うのでしょうが、スコップやセメント袋もおいてありますが・・これは何につかうのでしょうか??

27)船のそばにはドラム缶があって、その脇で棒を持っている男性が赤い服を着た人と話しています。
 この人、ピーテル・ブリューゲルの『牛群の帰り (The Return of the Herd) 』の中に描かれた、牛追いの一人が描かれているように思います。
 この絵からは、第1巻でシーン19風車(p37〜38)の10)に出てきています。

28)ドラム缶を転がしている人がいます。
29)たくさんの木材が平積にされています。ゴンドラ造りに使う木材を乾燥しているようです。実際のゴンドラ造船所にも、木材置き場があるようです。

30)特徴的な樹形の並木道があります。ヴェニスのどこにあるのでしょう?
31)電車ごっこをしている子ども達がいます。この子達、前のシーンでも同じ位置で電車ごっこをしていました。ただし、電車の向きが反対です。

32)塔の上で望遠鏡をのぞいている人がいます。何を見ているのでしょうか?
 窓から籠をつり下げての、果物売りでしょうか?路地の洗濯物でしょうか?

34)塔の下でも、洗濯物を干しています。なんだか遺跡の雰囲気ですが、どこかにこんな場所があるのでしょうか?

33)塔のある位置は、これまで他のシーンでも同じようなデザインの塔が書き込まれています。トレビの泉のシーン、大聖堂のシーン、そしてここです。

34)建物の陰に、手を挙げている男がいます。どうもあいては強盗のようです。強盗をしているのは、塔の街のシーンp22で横縞の男に話しかけていた男達のようです。

35)強盗の行われている建物の陰では、強盗に気づいた人が棒を持って助けようとしています。女の人はどうなることかと、心配しています。うまく救出できるといいのですが。

36)網をなおしている漁師さんが4人います。
 一番左側の人はロープに座ってなおしています。左から2番目の黄色の服の人、3番目の人も見えませんがロープに座っているのでしょうか。一番右側の人は立ち上がって作業をしています。網を干しているようです。
 4番目の男の人は、横縞のシャツを着ています。塔の街のシーンp22にもでてきましたが、第1巻で脱獄していた人です。塔のシーンでは強盗の相談だったようです。悪巧みの相談には乗らなかったようです。神のお導きでしょうか。

ところで、この4人ですが・・・・。
この巻の全体を通してのストーリーとして聖書物語があるとすると・・・
この4人はイエスの最初の弟子・・・ガリラヤ湖畔の漁師、シモン・ペトロアンデレ兄弟とヤコブヨハネ兄弟の4人を、象徴しているように思います。

マタイによる福音書に次のようにあります
4:17 その時からイエスは宣教を開始して,こう言い始めた。「悔い改めなさい! 天の王国が近づいたからだ」。
4:18 ガリラヤの海辺を歩きながら,彼は二人の兄弟,すなわちペトロと呼ばれるシモンとその兄弟アンデレが,海で網を打っているのを目にした。彼らは漁師だったのである。
4:19 彼は彼らに言った,「わたしの後に付いて来なさい。そうすればあなた方を,人を捕る漁師にしよう」。
4:20 すぐに彼らは網を捨てて彼に従った。 4:21 そこから進んで行くと,ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネとが,その父ゼベダイと一緒に舟の中で自分たちの網を繕っているのを目にした。彼は彼らを呼んだ。
4:22 すぐに彼らは,舟とその父を残して,彼に従った。

キリスト教の中で、十字架以外にも象徴となるものがあります。
さかな」:魚は、洗礼との関連において神を信ずる人=キリスト教徒を意味します。
また、キリスト教あるいはキリストの象徴でもあります。これは、ギリシア語で魚を意味する「イクテュス ichthys」が、〈イエス・キリスト、神の子・救い主〉を意味するギリシア語の五つの頭文字の組合せと一致しているからだと言われています。

」:教会を意味します。・・・キリスト教徒をすくい上げるもの

ということで、キリスト教徒をすくい取る網を繕う人たちという意味もくわわるでしょう。
そうなると漁師は、単に上記4人だけでなく、使徒全体をさしていることにもなるのでしょう。
また、一番右側の人が脱獄犯=「罪を犯した人」と考えると、過去に犯した罪よりも、今の信仰こそを大切に考えるイエスの教えからして、人を捕る漁師の中にはいるのもふさわしいことのように思います。

旅の絵本2表


シーン18最後の晩餐(P35〜36)

0)旅人は・・・最後の晩餐が行われている場所へやってきました。糸杉でしょうか針葉樹のそばを悠然と行きます。

1)左下 農家の庭で鎌の手入れをしている人がいます。この人、一つ前に造船所のシーンで網を直していた漁師の1人です。左から2番目の黄色の服の人です。
 使徒の一人が、鎌の手入れをする。・・・収穫の鎌の象徴でしょうか。不毛のものを刈り取ってしまう鎌の象徴でしょうか?
 ブリューゲルの『干し草の収穫』の中に、鎌の手入れをする農夫が描かれています。この農夫を視点を変えて背後から描かれたのではないかと思います。

2)箕を使っている男性がいます。この人はやはり前のシーンで一番右で網を直している人と重なります。第1巻で脱獄していた人でもありますです。
さて、箕と言えば、「ルカによる福音書」に次のような一節があります。
洗礼者ヨハネがキリストについて次のように言うのです。

0316> そこでヨハネはみんなの者にむかって言われた、「わたしは水でおまえたちにバプテスマを授けるが、わたしよりも力のあるかたが、おいでになる。わたしには、そのくつひもを解く値うちもない。このかたは、聖霊と火とによっておまえたちにバプテスマをお授けになるであろう。
0317> また、箕を手に持って、打ち場の麦をふるい分け、麦は倉に納め、からは消えない火で焼き捨てるであろう」。

したがって、この人は、使徒の漁師の側面に加えて
神を信ずるもの(麦)と、神を信じないもの(から)を選別する行為の象徴にもなることになります。
別の見方をすると、最後の晩餐でイエスが語っていることと重ねれば・・・裏切りによって12使徒の栄光からはずされ、地獄の業火を呼び込む事になるユダが、ふるいにかけられた「から」ということでしょうか

3)犬をつれた子どもが箕を使っている男を見ています。
4)家の扉が開けてあります。閉まらないように石で押さえがいてあります
5)大きな瓶と、小ぶりな荷車がおいてあります。
6)女性がビンか瓶を運ぼうとしています。荷車に乗せるのでしょうか?

7)左下 シーツが干してあります。ヴェネティアのシーンで、屋根の上に干されていたシーツと重なるようです。乾いたようです。

8)左上 ここにも、シーツやステテコ?まさか!が干してあります。
 これは、前の造船所のシーンで屋根に干していた布団?や路地の洗濯物に重なるようです。

9)小屋の周りには、たくさんの木材がおかれています。これはなんのためでしょうか?

10)畑のあぜ道でまりつきをしている女の子が二人います。前のシーンでは運河の脇でまりつきをしていました。

11)籠に入った荷物を持ったおばさんが晩餐を見ています。
 このおばさん、水道橋のシーンや洗礼のシーンのデートをしている二人のそばにいたおばさんとかさなるのかな?

12)聖書物語 横一列に並んで食事をしています。レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」です。この絵は、ミラノのサンタ・マリア・デレ・グラーツィエ教会の食堂に描かれました。見事な遠近法で食堂の奥に本当にあるように描かれていて、ある位置から見ると完全にとけ込む構図になっています。(バーチャルですが見ることができます)一点透視法で描かれています。その消失点はイエスの額になっています。近年の修復作用の時、イエスの額に釘を売って線を引いた後がでてきたそうです。
 ダ・ヴィンチはあえて、横一列にイエスと十二使徒を横一列に並べています。多くの画家は、ユダをを反対側においたりしましたが・・・まさに観客を意識した構図です。
 ところで、教会の名前がまた、サンタ・マリアです。表紙に描かれたボローニャの教会も、フィレンチェの大聖堂も、ヴェニスの教会もサンタ・マリアでした

最後の晩餐(HAL9000公式サイト)
160-170億画素というとんでもない高精度の画像を見ることができます。部分を100%まで拡大すると、壁面の細かいひび割れまで見ることができます。
http://www.haltadefinizione.com/en/
http://www.haltadefinizione.com/magnifier.jsp?idopera=1(最後の晩餐
by forest-doorさん

ミラノのサンタ・マリア・デレ・グラーツィエ教会の食堂の壁に描かれた絵です。第二次大戦中に爆撃を受けたのにこの絵の壁だけ無事だったとか。
1999年にようやく終わった洗浄によって、イエスの口が開いていたことが分かりました。最後の晩餐はイエスが12使徒の中の1人が私を裏切る、と予言したときの絵ですから、イエスの口が開いているということは今まさに言葉が発せられた瞬間なのでしょうね。また、テーブルには魚料理が並んでいたことも分かりました。
弟子たちは3人ずつのグループで動きをつけ、画面の中心、イエスに視線があつまるように一点透視図法で描かれています。


13)子どもが晩餐を見ています。絵を鑑賞しているかのようにも見えます。

14)晩餐のバックの家のの屋根には天窓があるようです。なぜか細長い煙突が二本立っています。なぜ、二本なんでしょう。

15)7頭の牛を追っている夫婦?連れがいます。杖をついている男性は疲れたのか頭をたれています。なにか元になる絵がありそうな雰囲気です。ミレー?
 ピーテル・ブリューゲルの『牛群の帰り (The Return of the Herd) 』で、牛の行列の後ろを付いて歩いている二人かも知れません。
と考えていましたが・・・・・
前にも出てきた、ジョヴァンニ・セガンティーニ(Giovanni Segantini)の遺作となったアルプス三部作の中の『自然(La Natura)』からだろうと思います。視点や構図は違うのですが、たぶん間違いないと思います。セガンティーニの絵では左の端で反対方向に牛を追っている男の人がやはり頭を下げて歩いています。そして、安野さんの絵では並んで歩いている女性は、この絵では二頭の牛を引いて歩いています。このように、視点を変えて描き直すのは安野さんお得意のことですね。


16)野原の真ん中で草刈り鎌を持って立っている男性がいます。この人、前のシーンの27)で棒を持っていた男性と重なります。

旅の絵本2表


シーン19最後の祈り(P37〜38)
0)旅人は・・・最後の晩餐を終えて、最後の祈りをしているイエスの所へやってきました。

1)左下 旅人の後ろに、入り口に腰を下ろして刺繍をしている女性がいます。
 この巻、何度も刺繍する女性がでてきます。

2)家の脇にはドラム缶が4本あります。何に使うのでしょうか?

3)煉瓦を焼いている工房があります。左の端では、煉瓦用の土をこねている人がいます。この人、棒を持っている姿が前のシーンで草刈り鎌を持って立っていた姿と重なるように思います。(位置が違うのですが・・・裏に描かれています・・・右左逆になっているのも細かい技か)

4)トタン屋根の下の作業は、粘土を細長い四角に作って、これから小さく切り分けるのでしょう。
5)右の煙突の立っている小屋は煉瓦を焼く窯のようです。燃料の木はたくさん蓄えてあります。前のシーンの洗濯物の小屋の所にあったたくさんの木はこの燃料用だったのでしょうか。

6)牛車にできあがった煉瓦を積み込んでいます。
7)乱雑に積んである煉瓦は失敗作でしょうか?
8)土管も焼くのでしょうかたくさん積んであります。
 手前の折れ曲がった土管がなんだかわざとらしく感じます。77とか78に見えます。1978年を意味しているようにも思われます。そうなると、この絵本が描かれた年ということですが、どうでしょうか。
'77を表しているのかも知れません。発行年とは違いますが、この絵を描いたときの年と考えればつじつまが合います。

8)聖書物語 煉瓦工場の向こう側、左端で祈っている男性がいます。ゲッセマネの園で祈るイエスです。

9)聖書物語 イエスの右に眠り込んでいる男達がいます。イエスに眠らずに待っているようにいわれたにもかかわらず、寝てしまった弟子達です。

10)おばさんがロバを連れています。このロバはイエスがエルサレムに入るときに使ったロバでしょう。

11)子ども達がローマ兵の格好をして遊んでいます。この子達はシーン4逃避行でも遊んでいました。これは、イエスを捕まえに来た兵ということです。

12)積まれた煉瓦の上に雄鳥がいます。これは、最後の晩餐の時に、イエスによって「あなたは今夜、鶏が鳴く前に3度私のことを知らないだろうと」予言されペテロが、この後イエスが捕まった後、様子を見に行っ家で、イエスとの関係を3度否定した直後に鳴く雄鳥のイメージではないでしょうか。

13)右下の建物はカフェのようです。左側の丸テーブルではトランプをしています。
セザンヌの「カード遊びをする男たちThe Card Players」です。
オルセー美術館の所蔵だそうです。
http://www.ibiblio.org/wm/paint/auth/cezanne/players/

14)右のテーブルでは、本を読んでいる女性がいます。ゴッホの「アルルの女」(ジヌー夫人)L’Arlesienne(Madame GINOUX)です。オルセー美術館にも同名の絵がありますが、本を持った絵はメトロポリタン美術館にあるようです。
オルセー美術館にもゴッホの同名の絵がありますが、そちらは本を持っていないようです。

15)散髪をしています。見ている子どもは順番待ちでしょうか。散髪をしているのはお父さんかも知れません。

16)二頭立ての荷馬車があります。
洗礼のシーンで炭を積み、結婚式のシーンで引っ越しの荷物を運んでいた荷馬車のようです。

17)藁の山の上に鶏が上っています。こちらは雌鳥のようです。
18)馬車の向こうの建物ですが、大きな建物ではありませんが、不釣り合いなアーチ状の出入り口があります。何かの門のようにも見えます。屋根の上には鐘があります。

19)壁に赤い箱が、ポストでしょうか。

20)クロスボウを担いだ男と子どもが歩いています。
ウィリアム・テルと子どもだと思います。蚤の市にもリンゴに刺さった矢がありました。
http://www.tell.ch/legend.htm(スイスの英雄・・William Tell英文)
さて、ウィリアム・テルだとして、なぜここに描かれているのでしょうか。
クロスボウから十字架をイメージします。十字架を担いで歩く・・・となると、刑場であるゴルダゴの丘に向けてエルサレムの街を、茨冠をかぶらされ十字架を背負って歩かされたイエスを連想させようとしているのではないでしょうか。

21)丘の上からなにやら降りてくる人たちが見えます。ルノアールの「草むらの中の坂道」の絵からです。1875年頃の作品でオルセー美術館所蔵とのことです。
丘はイエスが処刑される、ゴルダゴの丘をイメージさせます。

http://servus-a.hp.infoseek.co.jp/painter/Renoir/012_2.jpg

旅の絵本2表

シーン20十字架上のイエス(P39〜40)

0)旅人は・・・古代の3本の石柱が建つ海岸にやってきました。

 ローマに、古代ローマ時代の遺跡が集まる広場があります。フォロ・ロマーノ(伊:Foro Romano)と呼ばれます。ここにあるカストル・ポルックス神殿の柱の遺跡です。

by forest-doorさん
フォロとは公共広場のことで、フォロ・ロマーノは古代ローマの中心地でした。 「すべての道はローマに通ず」といわれたその道はここ、フォロ・ロマーノに通じていたのです。
そう考えると旅人が歩んでいる道が紀元前のローマに通じているかのように思えてきます。そして道はまたどこかへと続いているのですね


1)左下 なんだかアジア風の人たちがいます。どうも稲刈りをしているように見えます。イタリアにも稲作はあるそうですが・・・。
イタリアはヨーロッパ随一の稲の生産国です。米を使った料理もたくさんあります。生産量の半分は輸出しているくらいです。
 生産の中心は、トスカーナなどイタリア北部です。
 イタリア映画に『苦い米(Riso Amaro)』1949年度制作の作品があります。もっとも、労働の内容は田植えシーンです。そして、働く女性たちの着ている物は、スカートではなくショートパンツですが。
 今は、機械化や農薬の使用によって、映画のような田植えシーンは無くなってしまっているようです。

2)旅人の手前に糸を紡ぐ女性がいます。こんな風に全くの手仕事で糸を紡ぐのは大変でしょうね。
右の絵は、ミレーの絵です。この絵と同じように糸を紡いでいます。
左の絵は、イタリア編で何度か出てきた、ジョヴァンニ・セガンティーニ『風笛を吹くブリアンツァの男たち』です。
この絵では、椅子に座っていますし向きも逆ですが・・・こちらが見本だろうと思います。

3)隣のイスの男性は、紡ぐ女性を見守っています。
この男性も、『風笛を吹くブリアンツァの男たち』でバグパイプを吹く男の手前に座っている男からだろうと思います。

4)戸口の所においてあるのは、またカボチャとトウモロコシのようです。

5)籠に入れた大きなビン?が有ります。水入れでしょうか。隣の先の曲がった棒は何でしょうか?

6)聖書物語 左上 十字架にかけられた男性がいます。ゴルダゴの丘で十字架の刑に処せられたイエスです。イエスの人としての生はここに終わります。しかし、キリスト教は、総ての人の罪を背負って神の子であるイエスが十字架にかけられることで、罪深き人々が贖罪されるという信仰です。十字架上の死は、キリストによる救済の始まりでもあります。

7)浜に揚げられた船の脇には赤ちゃんを抱いたお母さんがいます。水揚げをしている船の方を見ています。
 幼子を抱く女性と来れば、聖母マリアをイメージします。そういえばヴェニスの教会の前にも赤ちゃんを抱いたお母さんがいました。
 聖母マリアだとすると、ゴルダゴの丘に駆けつけた聖母マリアをも表しているのではないでしょうか。さらに、赤ちゃんがイエスだと考えれば、ピエタという見方もできるかも知れません。

8)隣の杖を持った男性は、母子とともに水揚げを見ているようです。
 聖書物語で考えると、アリマタヤ出身のヨセフではないでしょうか。アリマタヤのヨセフは、使徒すらも逃げ出した状況で、死刑になったイエスの遺体をひきとって、墓を用意し、亜麻布に巻いて、香料と共に葬ったのです。

9)彼らの後ろの家には、不似合いなアーチがあり中は暗いようです。
 これは、イエスを葬った墓(イエスの時代は洞窟)を表しているのでは無いでしょうか。
 洞窟とくれば、世界遺産になっているマテーラの洞窟住居が気になります。ひょとすると、洞窟住居がモデルかもしれません。

10)大きな籠が二つあります。魚を入れるのでしょうか。とろ箱は別にあるようですが。

11)ここにも女性と子どもが水揚げを見ています。
12)さて、海です。船着き場には大漁の漁船がついて水揚げをしています。

13)浜では、漁師が網の修理をしています。
 「網」はこの場面では、より強く教会を象徴するのではないかと思います。この網は、どんなにたくさんの魚(信者)を取り込んでも・・破けることが無いのです。網を繕う人は、十二使徒そして、後に続く教会を守る人たちをも象徴するのでしょう。

14)船が2隻繋留してあります。
 世界中へキリスト教を広めるために「人を捕る漁師」(=使徒)が乗るものです

このシーンが、聖書物語の最後のページのようです。十字架上の死で、終わるのではなく始まると考えると、このページに描かれたものにもっと大きなメッセージが込められているように思います。
2つのメッセージを読みとってみました。(妄想かも知れませんが・・・)

○1つはイエスの「復活」です。
 十字架の刑の後、イエスは復活を果します。

そして、新約聖書のヨハネによる福音書に以下のようにあります
2102> シモン・ペテロが、デドモと呼ばれているトマス、ガリラヤのカナのナタナエル、ゼベタイの子らや、ほかのふたりの弟子たちと一緒にいた時のことである。
2103> シモン・ペテロは彼らに「わたしは漁に行くのだ」と言うと、彼らは「わたしたちも一緒に行こう」と言った。彼らは出て行って船に乗った。しかし、その夜はなんの獲物もなかった。
2104> 夜が明けたころ、イエスが岸に立っておられた。しかし弟子たちはそれがイエスだとは知らなかった。
2105> イエスは彼らに言われた、「子たちよ、何か食べるものがあるか」。彼らは「ありません」と答えた。
2106> すると、イエスは彼らに言われた、「船の右の方に網をおろして見なさい。そうすれば、何かとれるだろう」。彼らは網をおろすと、魚が多くとれたので、それを引き上げることができなかった。
2107> イエスを愛しておられた弟子が、ペテロに「あれは主だ」と言った。シモン・ペテロは主であると聞いて、裸になっていたため、上着をまとって海にとびこんだ。
2108> しかし、ほかの弟子たちは船に乗ったまま、魚のはいっている網を引きながら帰って行った。陸からあまり遠くない五十間ほどの所にいたからである。
2109> 彼らが陸に上って見ると、炭火がおこしてあって、その上に魚がのせてあり、またそこにパンがあった。
2110> イエスは彼らに言われた、「今とった魚を少し持ってきなさい」。
2111> シモン・ペテロが行って、網を陸へ引き上げると、百五十三びきの大きな魚でいっぱいになっていた。そんなに多かったが、網はさけないでいた。
    ・・・・・・以下略

聖書のこの部分ににインスピレーションを得て安野さんはこのページを描かれたのではないでしょうか。

○2つ目はキリスト教の世界宗教化です。
 キリスト教で「魚」は神を信じる人々(キリスト教徒)を意味します。
 指導者イエスの死を乗り越えて、より大きな世界に広がってゆくキリスト教を象徴していると思います。ユダヤ民族のみという限られた漁から、民族と地域を超えて大きな海で多くの魚を捕ることになるのですから。そしてそれはまず、ローマ帝国です。
 安野さんが、この海岸のシーンに海に接しないローマの遺跡をあえて置いたのは、ローマ帝国への宣教を象徴しようとの意図だろうと思います。
 ただ、安野さん以外にもローマの遺跡を海岸に描いた画家がいました。クロード・ロラン(Claude Lorrain)です。フランスの古典主義の画家で生涯の大半をイタリアのローマで過ごした画家です。理想風景を追求する画風で風景を、理想的な風景を描いたようです。右のイタリア海岸風景と題された作品で、海岸にローマ遺跡を配置しています。この発想を安野さんも参考にされたかもしれません。
 この絵で石橋のところに、座っている女性と立って笛を吹いている男性がいます。性別も逆ですしやっていることも違うのですが、2)の糸を紡いでいるところの二人はこの絵にヒントがあるのかな。
また、右の絵の石柱と木立の間に見えているのは、シチリア南部の街アグリジェント(Agrigento)の世界遺産神殿の谷(Valle dei Templi)だとおもいます。谷と名付けられていますが、丘陵にあります。

旅の絵本2表


シーン21旅立ち(P41〜42)
0)旅人は・・・馬を残して海にこぎ出してゆきます。
  旅人の目指す先は第3巻のイギリスです。

1)馬は石造りの灯台?の所に残されました。この草原の海岸はイタリアのどこにあるのでしょう。背景のシルエットも含めて、何か特定できる所があると思うのですが。不明です。
 左の写真はイタリア南部のソレント(Sorrento)です。『帰れソレント』で一躍世界的な観光地になった所です。海岸の様子は違うようなのですが、安野さんが描かれたソレントの絵の遠景のスカイラインが旅の絵本とそっくりです。得意の合成かもしれません。
灯台のような建物がある海岸はどこにあるのでしょう??


「裏扉」
この巻でも、表扉の鏡絵が描かれています。

ダビンチ村の景色を 見ながらイタリアの旅を振り返ってみます。
この巻のテーマは「聖書物語」であるといえますが、マリアの物語の要素を強く持っているように思います。
安野さんはこの巻の表紙に、世界遺産の宝庫のようなイタリアで、世界遺産に指定されているわけでもなく、それほど有名でもないボローニャBOLOGNAにあるChiesa di Santa Maria della Vita(生命のサンタマリア教会)を持ってきました。

 この巻は、実にたくさんのサンタマリア教会が描かれています。

・表紙のボローニャにChiesa di Santa Maria della Vita(生命のサンタマリア教会)
・塔の街にアッシジのBasilica di Santa Maria sopra Minerva(ミネルヴァの上に建てられたサンタマリア聖堂)
・フィレンッチェに Cattedrale di Santa Maria del Fiore(花のサンタマリア大聖堂)。
・パレードのページに分割してフィレンチェの Basilica di Santa Maria NovellaS(サンタマリア物語聖堂)
・ヴェネチアに Basilica di Santa Maria della Salute(健康のサンタマリア聖堂)
    Chiesa degli Scalzi(スカルツィ教会) も、La chiesa di S.Maria di Nazaret(ナザレのサンタマリア教会)というようなのです
そして、描かれてはいないもののダビンチの最後の晩餐のあるのは、
・ミラノの Chiesa di Santa Maria delle Grazie(ありがとうのサンタマリア教会)の修道院


そして、教会の名称としてはサンタマリアが使って無くても、教会の屋根や玄関に大きく聖母マリアがある教会が多く取り上げられています。これは、マリア信仰の広がりを意味するのかも知れませんが、安野さんがある程度意図的に選ばれた結果ではないかとも思うのです。

そして、
サンタマリアは、聖母マリアだけを意味すると思っていましたが、マリアには多様なマリアが存在するわけです。聖書の中には多くのマリアが登場し、同じ名前であるだけに混同もよく起こって、専門家でも意見が分かれるようです。
Santa Maria della Vita(生命のサンタマリア)教会の礼拝堂に有る the Imploring Marys(哀願のマリア)という群像には、4人のマリアがでてきます。

イエスの活動を支えたのは12使徒(男性)だけでは無かったことは、カソリック教会もはっきりと認めている事実です。マグダラのマリアは聖人ですし、カソリック教会の公認では無いものの福音書もあります。マリアだけでなく、女性が果たした役割は決して小さくないわけで、安野さんはそのことをそれとなく示したかったのではないかと思うのです。


旅の絵本2表