を遊ぼう」2(イタリア編)

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「旅の絵本」の2作目はイタリアの旅です。明るい空の下、美しい風景、街並みが続きます。そしてその中に隠された遊び絵の数々……。
そして、この巻の大きな特色は、全体に「新約の聖書物語」がちりばめられていると言うことです。イタリアにはローマカトリックの総本山のバチカン市国があるからでしょう

」2
「表紙と裏表紙」「扉」 シーン1草原で
(p1〜2)
シーン2受胎告知
(p3〜4)
シーン3キリスト誕生
(p5〜6)
シーン4逃避行
(p7〜8)
シーン5水道橋
(p9〜10)
シーン6製材所
(p11〜12)
シーン7ヨハネによる洗礼
(p13〜14)
シーン8結婚式
(p15〜16)
シーン9マグダラのマリア
(p17〜18)
シーン10トレビの泉
(p19〜20)
シーン11塔の街
(p21〜22)
シーン12大聖堂
(p23〜24)
シーン13パレード
(p25〜26)
シーン14蚤の市
(P27〜28)
シーン15髪長姫
(P29〜30)
シーン16ヴェニス
(P31〜32)
シーン17造船所
(P33〜34)
シーン18最後の晩餐
(P35〜36)
シーン19最後の祈り
(P37〜38)
シーン20十字架上のイエス
(P39〜40)
シーン21旅立ち
(P41〜42)
「裏扉」


「表紙と裏表紙」
01)旅人は・・・北イタリアと思われる広々とした野を行きます。

旅人の手前にある教会は実際にはボローニャBOLOGNAにある教会です。
Chiesa di Santa Maria della Vita生命のサンタマリア教会です。
この教会には、1787年にTubertiniによって建設された大きなドームがあります。
礼拝堂には、十字架からおろされたキリストとそれを取り囲むthe Imploring Marys(哀願のマリア)など7人の実物大の美しい彫像群があります。作者は、Niccolo dell'Arcaで、テラコッタ(素焼き)の像です。

彫像群の、キリストを囲む6人の内女性が4人で、いずれもマリアです。冷静さを保とうとする2人の男性に比べて、それぞれに強烈な悲しみを表すマリア達の様子がとても印象深く劇的です。安野さんが、聖書物語をメインテーマにした2巻の表紙にこの教会を描かれた理由の一つは、この像の存在があるのだろうと思います。

小礼拝堂の中には、古代のたくさんの医療器具が展示されていて、Museo della Sanita e dell'Assistenza(「健康と介護の博物館」)と呼ばれています。
ちなみに、写真の奥に写っている長方形の大きな建物は、LA BASILICA DI S.PETRONIO聖ペテロニオ大聖堂)です。

Santa Maria della Vita(内部の写真あり)
http://www.ecs.soton.ac.uk/~yzw01r/italypic/bologna/b5.htm
BOLOGNAの紹介(AがSanta Maria della Vit・・哀願のマリアの像の解説があります)
http://www.noyesfamily.com/bologna/layers/layers_frame2.html
※ちなみに著者の安野さんはボローニャ国際児童書展グラフィック大賞を受賞されています。

表紙全体に、「ベリー公のいとも豪華なる時祷書(じとうしょ)」の中をからとられた情景が取り入れられています。

「ベリー公のいとも豪華なる時祷書(じとうしょ)」
フランス国王シャルル5世の弟ベリー公は無類の愛書家・美術愛好家で、約三百点の蔵書を所有していたが、その中でももっとも豪華で、中世末期を代表する傑作として名高いのが、この『いとも豪華なる時祷書』
ベリー公が所有している城と、各月ごとの当時の人々の様子が描かれており、その豪華さから「世界で一番美しい写本」といわれています。
このHPにとても詳しいです(各月の絵を見ることができます)
http://www.shajisitu.or.tv/c4.htm
http://www.christusrex.org/www2/berry/



1)表紙左下 牧草刈りは6月の絵『いとも豪華なる時祷書』
6月になると、そろそろ収穫が始まります。女性二人が牧草を刈っているシーンで、男たちが3人揃ってカマを振るっています。

2)近くの農家では、こどもがニワトリに餌をやり、
パラソルを出して、椅子に座って休憩中の人もいます。
これは、

3)右端中ほど 小麦の収穫と羊の毛刈りは7月『いとも豪華なる時祷書』
7月は小麦の収穫期です。主食のパンになるものなので、この収穫量が国民の胃袋を左右しました。その手前では羊毛の刈り取りが行なわれています。

4)左上 犬を連れた狩猟は12月『いとも豪華なる時祷書』
12月はイノシシ狩りです。冬枯れの森の中、勢子たちが犬を駆りイノシシを仕留めています(旅の絵本では、肝腎のイノシシが描かれていませんが・・)



裏表紙です
5)崖の上に建つ街はオルヴィエート
凝灰岩の上にそびえ立つていて『世界一美しい丘上都市』とか『天空の』呼ばれているそうです。崖が天然の城壁となっていて、周囲から守られています。1527年神聖ローマ帝国軍がローマを攻め、略奪と破壊をほしいままにします。これをサッコ・ディ・ローマ Sacco di Roma(ローマの劫掠)と言います。この時、法王クレメンテ7世はとらわれの身となりますが,ローマを脱出してこの地に籠城した歴史もあるとか。
崖の上の街オルヴィエートは土地には限りがあります。そこで、地下を掘り下げて巨大な空間が作られています。凝灰岩という、掘りやすい岩ということもあるのでしょうが、壮大な地下空間のようです
 現在では、崖の上には新しい建物を建築することが禁じられているようで、崖の下に新しい市街が広がっているようです。安野さんの絵でも崖下の町並みも描かれています。オルヴィエート駅は崖下にあり、観光客が崖の上に行くにはケーブルカーがあるようです。
大教会堂
この大教会堂の写真はトリップアドバイザーから
無料提供されています


街の中心に描かれているのは大聖堂(ドゥオモ)です。ここのファサードはモザイクで埋め尽くされており、その美しさはイタリア随一ともいわれているそうです。 
この大聖堂のデザインを、シエナが真似したといいます。イタリアゴシックの壮大で美しい建物です。この大聖堂は、「ボルセーナの奇跡」の布(1263年ボヘミヤの聖職者がローマへの巡礼の帰途、ミサをあげていたところ、聖餅(パン=キリストの肉の象徴)からたくさんの血が滴り落ち、その下の布にしみこんだといいます)を、安置するために建築されたそうです。1290年に建築が始まり1380年に完成したようですが、その後も改修がかさねられて現在に至るようです。


5)表表紙の右上はオルヴィエートから見えるふもとの景色ではないかと思います。
  右の写真は、オルヴィエートからの写真です。

6)裏表紙の右端上 豚をつれて太らせているのは 11月『いとも豪華なる時祷書』
 11月は家畜を太らせて長い冬の食料に備えます。
 男は豚のためにドングリの実を落とそうと、棒を投げる構えを見せています。

7)5)の下になにやら女性のような人が立っているのは何???
※自己レスですが・・・よく見ると9月のブドウの収穫の遠景に女性が同じ格好で立っていました。

8)裏表紙右端中ほど 葡萄の収穫は9月『いとも豪華なる時祷書』
9月はブドウの収穫です。
低く植えられたワイン用のブドウを収穫しています。

9)麓の街、馬のいるところは、鍛冶やさんのようです
10)真ん中 狩にでかける貴族たちが8月『いとも豪華なる時祷書』
8月は狩りのシーズンです。
この絵の人々は鷹狩りに行くようですが、でも女性連れであることから、目的は・・・

11)左端中ほど 坂道をのぼっていくのは2月『いとも豪華なる時祷書』
2月は庶民の冬の情景が描かれています。旅の絵本では、遠景で馬を追って坂道を上ってゆく男の人だけが描いてあります。

12)洗濯物を干している庭には、猫?やニワトリ、縄跳びをする子どもがいます。
13)子どもの後ろの小屋はたきぎ置き場でしょうか。
  上の窓にはシャツが3枚ほしてあります。

14)裏の左下 小麦の種まきは10月『いとも豪華なる時祷書』
10月は小麦の種まきのシーズンです。
馬を使って耕して、種をまいています。弓矢を持った案山子を立てていますが、全く効果が無くて、小鳥たちがご馳走にありついています。

15)華やかな木の咲いている家では、ドアの脇に椅子が出ています。お花見用かな

16)右下 ブドウの木の剪定をしたり、牛で畑を耕しているのは3月『いとも豪華なる時祷書』
3月は農作業が始まる季節です。もうそろそろ春ですね。
農民がブドウの木の剪定作業をしています。
右では壺のように見えますが、男は種まきの準備をしています
手前では牛にスキを引かせて土を耕しています。


旅の絵本2表


「扉」

0)旅人は・・・花の咲く郊外を、馬を引いて歩いています。

この場所は、レオナルド・ダ・ヴィンチの出身地である、イタリア・ヴィンチ村(現在は市になっています)です。

左側に見えるのは、コンティ・グイディ城 Castello di Conti Guidiです。中央に高い塔のある城壁にオリジナルの姿が残っているそうで、ここは現在レオナルド・ダ・ヴィンチ博物館になっているそうです。

 右側に見える塔は、サンタ・クローチェ教会Chiesa Santa Croceです。ここには、ここにはレオナルドが洗礼を受けたとされる古い洗礼盤があります。

レオナルド・ダ・ヴィンチの名は、ヴィンチ村出身のレオナルドということのようです。この巻には、モナリザや最後の晩餐など、レオナルドの作品がでてきますが。個々の作品だけでなく、レオナルドの精神もまた、意識されているように思います。



旅の絵本2表

シーン1草原で(p1〜2)
01)旅人は・・・伸びやかに広がる丘陵地帯で、木陰の丸太でのんびりと休んでいます。馬もないし、歩き疲れたのでしょうか。

 
描かれている地域は、トスカーナ地方です。
その中でも2004年に世界遺産に登録されたオルチャ渓谷がモデルだろうと思われます。
この地はかって、塩分が多くしかも粘土質で、荒れ果てた土地でした。14世紀に、人々の営々とした努力によって、この美しい緑の大地となったのです。

1)谷間に家が建っています。風を避けるため、水を手に入れるため、どちらだろう?両方か。

これまで発表された6編の中で、旅人が歩いて現れるのは、このイタリア編だけです。
前編の中欧編が、歩いて去ったので、歩いて現れるのは、極めて合理的です。ここら辺の、合理性が安野流なんでしょうね。


シーン2受胎告知p3〜4)
0)旅人は・・・馬を手に入れています。木材を運ぶための3頭の馬の内、一頭の荷物を降ろしてもらって、譲り受けたようです。

1)馬が運んでいる木材は、p2に積んであるようです。転がってゆかないように、両サイドは、井桁状に積んであります。

2)聖書物語 左上の森の中・・・リンゴの木があり、ヘビがいて、アダムとイブがリンゴ(知恵の実)を食べてしまっています。こうして、人類の先祖は、エデンの園という楽園を追放されてしまいます。
forest-doorさんから
このアダムとイブのポーズからすると、これはミケランジェロによる、システィーナ礼拝堂天井画の創世記の物語「原罪と楽園追放」の一部をもとに描かれています。
システィーナ礼拝堂の天井画はミケランジェロがたった一人で4年間をかけて仕上げたといいます。来る日も来る日も高い足場で上をむいて描き続けたであろう彼を想像すると、その強い精神力にただただ、脱帽です。
何年か前に修復の様子をテレビでやってましたね。そのときのことが1冊にまとめられているのが、「システィーナのミケランジェロ」です。よみがえった色の鮮やかさに驚きです。

3)森の中には、p3の右はしに、オオカミがいます。
4)森の中p4のまん中に、箒にまたがった魔女がいます。
5)右隅には、ターザンが「あ〜あ〜」なんんてやっています。
3)4)5)は、いずれも森と関係が深いですね。


6)新約聖書物語 建物の庭では、椅子に座る女性の前で、軽くひざまずいている人がいます。・・・大天使ガブリエルが、キリストの母マリアに神の子が宿ったことを告げています。(受胎告知です
現在のナザレの地での事とされています。天使は言います・・・
ルカによる福音書第1章から
0128> 御使がマリヤのところにきて言った、「恵まれた女よ、おめでとう、主があなたと共におられます」。
0129> この言葉にマリヤはひどく胸騒ぎがして、このあいさつはなんの事であろかと、思いをめぐらしていた。
0130> すると御使が言った、「恐れるな、マリヤよ、あなたは神から恵みをいただいているのです。
0131> 見よ、あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい。
0132> 彼は大いなる者となり、いと高き者の子と、となえられるでしょう。そして、主なる神は彼に父ダビデの王座をお与えになり、
0133> 彼はとこしえにヤコブの家を支配し、その支配は限りなく続くでしょう」。
0134> そこでマリヤは御使に言った、「どうして、そんな事があり得ましょうか。わたしにはまだ夫がありませんのに」。
0135> 御使が答えて言った、「聖霊があなたに臨み、いと高き者の力があなたをおおうでしょう。それゆえに、生まれ出る子は聖なるものであり、神の子と、となえられるでしょう。
0136> あなたの親族エリサベツも老年ながら子を宿しています。不妊の女といわれていたのに、はや六か月になっています。
0137> 神には、なんでもできないことはありません」。
0138> そこでマリヤが言った、「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」。そして御使は彼女から離れて行った。

forest-doorさんから

ルカ伝によれば、大天使ガブリエルがマリアのもとに来て言います。
「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる」戸惑うマリアにさらに
「マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。あなたは身ごもって男の子を産む…」と告げます。マリアは天使に
「どうして、そのようなことがありえましょうか。わたしは男の人を知りませんのに」と言うと
天使は答えます。
「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む…」

この劇的なシーンをたくさんの画家たちが描いていますが、絵にはいろんな象徴が描かれています。
例えば、白い百合の花はマリアの清純さを表しています。マリアは赤と青を身にまとっていますが、赤は神聖な愛を、青は天の真実を表しているそうです。そういえば、青いマントで描かれていることが多いですね!

初めて見た受胎告知の絵は大原美術館のエル・グレコの絵でした。こちら
本当に光と稲妻が走ったかのような劇的な瞬間。他の受胎告知の絵ではひざまづいて話しているシーンが多いのにグレコの絵では天使が舞い降りてきた一瞬をきりとった感じです。

処女であったマリアにとっては喜びよりも驚きと不安の方が先に来ると思います。グレコの絵にも満面の喜びと言うよりは、とまどいと驚きの表情です。

7)新約聖書物語 羊飼いに、古代風の衣装を着た二人が話しかけています。
キリスト教では、羊は弱く罪深い人間を象徴します(迷える子羊)。旧約聖書の世界では、大切な生け贄でもあります。いずれにしても大切な生き物です。
古風な二人も羊飼いのようです。天使から救世主(キリスト)の誕生を告げられて、探しているのではないでしょうか。
「旅の絵本の秘密」には、「モーゼの生涯」(ボッティチェリ画)とありました。

この二人、システィーナ礼拝堂にあるサンドロ・ボッティチェリ作「モーセの生涯の出来事」からでした。
全く気づいていませんでした。ボッティチェリの絵では女性のようです。やはり羊飼いでしょうか?モーゼの生涯のお話のどの部分でしょうか、おわかりの方情報をください。



8)庭にはニワトリが3羽
9)家の手前には、手押し車があり、つながれた犬が羊飼いの方を向いてほえています。やはり、少々異様な感じがするのでしょう。

旅の絵本2表

シーン3キリスト誕生(p5〜6)
0)旅人は・・・草原をさらに進んでいます。

1)ホークを担いだ夫婦が旅人とすれ違ったようです。この二人、ミレーの「仕事にでかける人」からです。安野さんは、ミレーが好きですね。
そして、この二人・・・晩鐘の二人の朝の姿ではないかという説があります。担いでいるホークも籠も晩鐘の画の中に描かれています。

女の人は、籐で編んだ篭をかぶっています。持つところがあご紐の替わりになって、帽子代わりになって、しかも手に持たなくてもよいわけです。

2)木下で女の子達が本を読んでいます。そこへ、腕時計を持ったウサギがやってきました。「不思議の国のアリス」です。この後の展開は、ウサギは穴の中へ駆け込みます。それを追ってアリスは不思議の国へ行くことになります。その穴も、ちゃんと有るようですね。

3)聖書物語 ベツレヘムの馬小屋でイエス・キリスト誕生です。聖母マリアが抱き、夫のヨセフ(聖書では、処女ですから遺伝子的には父ではないことになります)が、喜んで抱き上げようとしています。
 それにしても、何故馬小屋で生まれることになったのでしょう。当時、大規模な人口調査が行われたようです。イエスの母マリアとヨセフは登録をするためにナザレからはるばるベツレヘムまで旅して来たのです。旅先での出産です。
聖書には有りませんが、多くの生き物たちが祝福に集まっています。なんだか、仏教的発想のように思います・・・。牛に羊に犬、そして七面鳥までも来ています。キリスト生誕と来ればクリスマス。クリスマスには七面鳥の料理。早くも食べられちゃうのでしょうか。
ルカによる福音書第2章から
0201> そのころ、全世界の人口調査をせよとの勅令が、皇帝アウグストから出た。
0202> これは、クレニオがシリヤの総督であった時に行われた最初の人口調査であった。
0203> 人々はみな登録をするために、それぞれ自分の町へ帰って行った。
0204> ヨセフもダビデの家系であり、またその血統であったので、ガラリヤの町ナザレを出て、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。
0205> それは、すでに身重になっていたいいなづけの妻マリヤと共に、登録をするためであった。
0206> ところが、彼らがベツレヘムに滞在している間に、マリヤは月が満ちて、
0207> 初子を産み、布にくるんで、飼葉おけの中に寝かせた。客間には彼らのいる余地がなかったからである。


3)生まれている場面の向かいでは、子どもが興味深そうに見ています。そりゃそうでしょう。赤ちゃんが生まれるは、やたら動物は集まってくるは、ですから。

4)子どもの後ろの立木に、たくさんの棒か板が立てかけてあります。これは何??
5)梯子を掛けてある納屋があります。梯子の下のオレンジ色の丸いものは、カボチャですかね?ついでに、壁に掛けてあるのは・・・トウモロコシでしょうか。

6)井戸のところに、エプロンをしたおばさんがいます。はて、何をしているのでしょうか?最初は、洗濯かともおもいましたが、井戸でそのまま洗濯はしません。一体何してるのか?

7)井戸の向うには草を刈ったのでしょうか、小山が5つできています。
ブリューゲルの『干し草の収穫』に同じような草の山がありました。そして、同じ絵の中に、熊手のようなものを担いだ女性が描かれています。これは、1)のミレーの絵の農夫とも重なるように思います。

8)聖書物語 前のシーンにもいた古風な羊飼いが,現代の羊飼いに案内されて、キリスト誕生を目指してそこまで来ています。
ルカによる福音書第2章から
0208> さて、この地方で羊飼たちが夜、野宿しながら羊の群れの番をしていた。
0209> すると主の御使が現れ、主の栄光が彼らをめぐり照らしたので、彼らは非常に恐れた。
0210> 御使は言った、「恐れるな、見よ、すべての民に与えられる大きな喜びを、あなたがたに伝える。
0211> きょうダビデの町に、あなたがたのために救主がお生まれになった。このかたこそ主なるキリストである。
0212> あなたがたは、幼な子が布にくるまって飼葉おけの中に寝かしてあるのを見るであろう。それが、あなたがたに与えられるしるしである」。
0213> するとたちまち、おびただしい天の軍勢が現れ、御使と一緒になって神をさんびして言った、
0214> 「いと高きところでは、神に栄光があるように、地の上では、み心にかなう人々に平和があるように」。
0215> 御使たちが彼らを離れて天に帰ったとき、羊飼たちは「さあ、ベツレヘムへ行って、主がお知らせ下さったその出来事を見てこようではないか」と、互いに語り合った。
0216> そして急いで行って、マリヤとヨセフ、また飼葉おけに寝かしてある幼な子を捜しあてた

9)頭の篭に野菜?果物?をのせたお母さんの前を、乳母車を押しているのはおねいさんでしょうか。
 籠を担いだ女性は、7)で紹介した『干し草の収穫』の中にも描かれています。

ところで、雰囲気が南アジア風だと思うのですが???色遣いから受ける印象です。

10)聖書物語 アラブ風の人が3人馬でやってきています。
この3人は東から来た博士です。当時のユダヤの支配者であるヘロデ王のもとへ来て、、「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおられますか。」と尋ねたとされています。ヘロデ王は、キリスト=ユダヤを政治的・軍事的に救う者=世俗的指導者=ユダヤの王・・・という風に解釈しました。(この場合の王とは、精神的に救う者だったはずなのですが)自分の地位を脅かす者と考えこれを亡き者にしようと思います。見つかったら知らせるようにいいます。そうとは知らない、3人の博士は、祝福すべくベツレヘムの星をたよりに、馬小屋に近づいています。

11)このシーンにでてくる、建物は、これもブリューゲルの『干し草の収穫』にでてくる建物からヒントをえておられるのではないかと思います。
 絵の教会が、絵本では羊飼いの向こう側の家。絵の手前の家は、絵本では、キリストが生まれている馬小屋に似ています。井戸もあります。

旅の絵本2表

シーン4逃避行(p7〜8)
 0)旅人は・・・ジャガイモ畑(だと思うのですが・・)の横を行きます。
ジャガイモは、新大陸(アメリカ)からヨーロッパにもたらせたものです。聖書には一切記載が無いので、「悪魔の食べ物」とされていた歴史もあります。

1)聖書物語 馬に乗った母子と杖をついた男性が歩いています。
  エジプトへ逃げている、キリストとマリアとヨセフです。
  キリストを祝福した3人の博士は、天使のお告げがあって、ヘロデ王には報告せずに帰国してしまいました。そのことに気づいたヘロデ王はベツレヘムとその近辺の二歳以下の男の子をひとり残らず殺すよう命じました(ベツレヘムの嬰児殺戮)。これに対して、天使が夢でヨセフに現われてエジプトへ逃げるように警告します。そしてヨセフ一家はヘロデ王が死ぬまでエジプトに滞在し、ヘロデ王の死後イスラエルの地に戻ることになります。

左の絵は、ヴィットーレ・カルパッチョの作ですが、同様の主題で多くの絵が描かれています。

2)聖書物語 子ども達がローマ兵の扮装をして遊んでいます。
  キリストを捜してローマ兵がベツレヘム周辺を捜索している様子を表しています。
左の絵は、ヴォルテッラの作で、「ヘロデ王の嬰児殺戮/The Massacre of the Innocents」と題された絵です。これも同様の主題で多くの画家が描いています。

と考えいていましたが、
「旅の絵本の秘密」には、「ネロの虐待」(遊び風にかかれている・左下)とあります。
ヘロデ王にベツレヘムとその近辺の二歳以下の男の子をひとり残らず殺すよう命じられたのは・・・ローマ兵ではないのかも?
だったら、ネロがキリスト教徒を虐待した事を表しているのでしょうか。
それにしても、何故ここでネロの虐待?
キリスト教徒をローマ大火災の犯人として、虐殺したというのですが???

3)シーツを干しているエプロンのお母さんがいます。窓のところにも干してあります。
4)壁によかって、男の人が二人話し込んでいます。「このごろの政治は、むごいね・・・なんて話してるのかな。

5)庭では、ヒゲのおじいさんが笊を修理しながら、女性と話しています。
 ミレーの作品にでも出てきそうですが??

6)ジャガイモ畑(だと思う)が描かれています。まず耕して、植え付けて、大きくなったら、みんなで収穫する・・・・。作業手順の全てを一枚の絵の中に書き込んでしまう。日本の絵巻物の伝統を受けつく安野さんでした。
ジャガイモの収穫の様子は、ジュール・バスティアン=ルパージュの「10月、じゃがいもの収穫」(Saison d'octobre, recolte des pommes de terre)(左の写真)を参考にされたのでは無いかと思います。
 馬を使って耕している様子は、・・・・

7)一輪車に荷物を積んでいる夫婦がいます。モデルになった絵がありそうですが、心当たりのある人はいませんか。
多分ミレーの作品だろうと思います。あるいは、晩鐘の二人の足下にある手押し車と同じなので、安野さんが晩鐘からインスピレーションを得ての創作の可能性もあります

8)荷車の有る家から袋を下げ杖をついた男性がでてきています。
これは、フランスの農民画家ジュール・バスティアン=ルパージュJules Bastien-Lepageの、「Le Mendiant (英:The Beggar) 」からです。彼はクールベの影響を受けた人のようです。

旅の絵本2表


シーン5水道橋(p9〜10)

0)旅人は・・水道橋の遺跡のある所へやってきました。
 
こんな風に観光地でないところにも残っているようです。


水道橋はローマ時代に作られたものと思います。水源地から街まで水を供給するためにものです。古代にここまでのものを作ってしまうところに、ローマの強大さを感じます。
貴重な遺跡だと思いますが、橋の下に小屋のようなものを建ててしまっています。水道橋の事は知りませんが、現実にこんな事があるので、安野さんは描き込んだのだろうと思います。
 世界遺産に認定されているような遺跡でも、人が住んでしまっているという例もあります。私の知っている古墳群(日本)の中に、ほとんど崩壊してしまっている古墳があって、その周辺が、近世になってその周辺が墓地になってしまっています。その墓石の一つは、なんと壊れた石室の中に作られています。側石と鏡石(奥の石)だけになってしまっていて、それと気づかず、むしろ格好の場所と思えたのでしょう。
 この絵の小屋を建てた人も、ガード下の気分で雨風がしのげてちょうど良いと、作ったのでしょう。

1)水道橋を左の方だけ見ていると、手前の壁の部分が水平に見えます。向こうの壁がそこに立っているように見えます。ご丁寧に、草を生やしてあります。微妙に色合いを変えてあるのでどこからと断定できないのですが、ちょうど旅人のあたりからでしょうか?安野さんのしかけた、だまし絵のようです。

2)左 家を建築中です。
 日本の木造建築の建て方と異なり、まず煉瓦を積んで壁を作るようです。その壁を土台にしながら、屋根などを作ってゆくようです。煉瓦を積む人、材料を運ぶ人、屋根を作る人、図面を持って打ち合わせをする人がいます。
 図面を持つ人の後ろにあるのは直角を出すために道具のようです。ドラム缶には何が入っているのでしょうか? セメントとセメントをこねるためのタライとスコップ。屋根に積む瓦も準備できています。瓦は丸瓦のようです。
 煉瓦積みの壁をよく見ると、窓や隣の部屋との間のドアになるところは木材を使って上の煉瓦が落ちてこないようにしてあります。つっかい棒もしっかりとしてあります。
安野さんの物作りに対する深い関心を感じさせられます。

3)木の所にオオカミがいます。
このオオカミ、シーン2(受胎告知)の時には、森の中に隠れていました。やはり、森や木の所にオオカミはいるということでしょうか。

4)オオカミの視線の先には、豚が3匹います。藁の家に木の家そして手前の家にくっついた煉瓦の家もあるので、『3匹の子豚』のお話からのようです
 このような話の常道ですが、一番弱い立場の末の弟が、知恵があり最善の選択をする。話を聞く子どもたち(通常弱い立場)を、勇気づける内容です。

5)オオカミに気づいた少年がいます。
 気づいて指さし→大急ぎで走って→大人達のところへ報告しています。それが一枚の絵の中に、描かれています。3人の少年ではなく、一人の少年の時間経過を表しているわけで、絵巻物に使われてきた手法ですね。
これは、イソップのお話で「羊飼いと少年」(通称:オオカミ少年)を、イメージさせます。
「旅の絵本の秘密」には、「イソップ寓話集」の狼が来たと言ってうそをついている少年(中央)とあります。

ちなみに、この少年、第一巻のシーン14監獄前で脱獄犯を衛兵に通報している少年と重なっているように思いますが・・・。

6)少年が懸命に報告しているのに、大人達は全く動じる風もなくノンビリしています。「オオカミ少年」ですからねえ。もう慣れっこになってしまって、またいつものようにウソだろう・・・・といった感じで、相手にしていません。・・・本当にいるのに。
この人達、ボーリングのような遊びをしています。
ただ、ピンの数が9本しか有りません。「九柱戯」という遊びです。ドイツやオランダで行われていた、遊びです。これが、19世紀にアメリカに伝わりボウリングになったようです。
ここに描かれている人達は柵の外の人や馬や林そして後方の建物(宿屋?)まで含めて、オランダの画家ヤン・ステーンが描いた「宿屋の外で九柱戯をする人々」の中に描かれています。それにしても、何の違和感もなく描き込む安野さんの技術はすごいですね。

forest-doorさんから

さて、スキットルって?と思って調べたらボウリングの原型となった遊びだと分かりまた。9本のピンをひし形にならべ、ボールを転がして倒したピン数を競う遊びです。そのため、「ナイン・ピンズ」「九柱戯」とも呼びます。ドイツやオランダで行われていました。これが19世紀にアメリカに伝わって、10本のピンになり、ボウリングとなったということです。何で1本増やしたんでしょうね?計算が面倒だったからかな?
ちなみにボウリングでストライクを2回だすとダブルなのに、3回連続で出すと「トリプル」ではなく「ターキー」といいますよね。安野さんてば、ちゃんとこのターキー(七面鳥)をこのスキットル遊びのそばに描いてるんですよ!しゃれてるな〜
で、なぜ、3回連続ストライクがターキー(七面鳥)というのか調べてみたら、面白い説が3つありました。
1つめは、ボウリングが伝わったころアメリカでは七面鳥料理が人気で 、ストライクを3回連続して出したお客に七面鳥をプレゼントしたのがきっかけ、というもの。(一番ありそうな話ですね)
2つめは、七面鳥が羽を広げた形がストライクマークを3つ重ねた形に見えるから。 (う〜ん?見えるかな〜?)
3つめは、ボウリングが伝わったころのアメリカにはインディアンがいてその中の弓の名人が一本の矢を放ったら3羽の七面鳥をしとめたのをオランダ人が見たのがきっかけ。
へたっぴいの私にはターキーどころか、ダブルでさえも夢の夢…でも、ほんとにターキーに成功して七面鳥料理がでてきたらおもしろいな(^^)

この、スキットルの前身と思われる遊びがブリブリューゲルの「子供の遊戯」の絵にもでてきます。「指骨遊び」という遊びです。

7)柵の外の木には、巣箱が描かれています。これは、安野さんの創作のようです。

8)小屋にはトウモロコシが干され、入り口には桶とスコップが置かれ、庭にはニワトリとヒヨコが餌をついばんでいます。
桶の所の壁(?)がウロコ模様です。壁ではなく中に積まれた荷物の表現かも知れませんいずれにしても謎です?安野さんのことですから、適当に描かれたものではないはずです。

9)「九柱戯」の右側の小屋・・・屋根に梯子が架けられていて、屋根は板張りでしょうか、トタン屋根でしょうか?黒い丸いものが置いてあります。黒いものは、風で飛ばない用に置かれた石ではないかと思うのですが??

10)荷車とカボチャ(?)があります。
 小屋と梯子とカボチャとトウモロコシ・・この組み合わせシーン3(キリスト誕生)の中にもありました。何か意味があるのでしょうか?カボチャは復活祭のイメージからキリストと関連づけられるのか?梯子は・・天国への階段??強引すぎますかね

11)ここにもニワトリと七面鳥がいます。七面鳥はシーン3のキリスト誕生を見守っていました。やはりキリストとの関連でしょう。

12)十字架を脇に置いて、何かしている子どもがいます。
 二人の子どもがしているのは、お墓作りです。映画「禁じられた遊び」のシーンです。
禁じられた遊び (1951) 監督: ルネ・クレマン Rene Clement
http://homepage2.nifty.com/e-tedukuri/JeuxInterdits.htm
1940年6月、南仏の田舎。機銃掃射で両親を失い、さまよっていた5歳の少女ポーレットは、少年ミシェルと出会い彼の家に連れていってもらう。ポーレットのために死んだ子犬の墓を作るミシェルから、死んだものはこうやって葬る事を教わったポーレットはミシェルといっしょに次々とお墓造りをしていった……。墓作り・・・大人には理解できない禁じられた遊びです。このことが原因で二人は引き離されることになるのですが。大人たちは・・・戦争を続け本物のお墓を作り続ける・・・美しくも悲しい反戦映画です。

 十字架は、当然キリストがらみということで、七面鳥やカボチャ等を含めて、この一帯がキリストとの関連づけられているように思います。

13)水道橋の向こうからサルを背負い楽器を持ったおじいさんとバイオリンを持った少年と犬がやってきます。
「家なき子」の3人です。
家なき子(いえなきこ、Sans famille)はフランスの作家エクトール・アンリ・マロ作の児童文学(1878年)です。
 身寄りのない少年レミが旅芸人のおじいさんに引き取られ、いろいろなところを旅する冒険小説。幾度も映画化され、日本でのアニメ化も多い。
※日本では「家なき子レミ」としてレミを少女にしたアニメがあるのですが、原作ではレミは少年です。原作の翻訳をここで見ることができます。
http://www.aozora.gr.jp/cards/001047/card42924.html
http://www.aozora.gr.jp/cards/001047/card42925.html

14)p9の右下の家に荷物を運び込んでいる女性がいます。何を持っているのでしょうか?

15)スカート姿の娘さんの後から手紙(ラブレターのようです)を渡そうと近づいている青年がいます。

16)整然と木が植えられています。何の木なんでしょうか?

17)牛の引く荷車があります。荷物は木の束のようです。どこへもってゆくのでしょうか。?

18)荷車へ積み込もうとしている男性と、こちらへ積んでと指示している女性、背負って運んでいる男性がいます。
 薪を背負っている人の画は、ミレーの作品に有ります。ミレーの絵では女性ですが。

19)木の束は、右の方に積んであります。まだまだ、5〜6束くらいありそうです。この束は、右端の家の軒下に積んである木を持ってきているのでしょうか?

旅の絵本2表

シーン6製材所(p11〜12)
0)旅人は・・・小川のそばに作られた製材所など、物作りの盛んな所を旅しています。

1)製材所があります。動力源として水が使われていて、その仕組みがよく分かります。
  上流の川から木製の樋で引いてきた水を受け止める仕掛けがあります。水が一杯になると、左側の重しに勝って右が下がってゆくのだと思います。それに連れて、支点近くに据え付けられた帯鋸がゆっくりと下がってゆきます。下がりきると水はこぼれます。すると今度は左側の重しが勝って、一気に左が下がります。このとき、帯鋸が上に動きます。てこの原理で、重しの動きより動き幅が小さくなる分、大きな力を発揮して木を切ることができるのでしょう。・・・鋸の歯が上の方までつけてありますが・・・上では切ることができないはずですが???
 重しの下には、床を衝撃で床を痛めないように板が二重に敷いてあります。

2)小屋の左には斧で薪割りをしている人がいます。
  この場面・・・どこかの絵で見たような気もするのですが??

3)背負子に荷物を背負って、手にはカバンを持った女性と、女の子が製材所に向かっています。製材所で働いている男の人の、奥さんと娘さんで、お昼の食事を持って来ているのかも?

4)原料の木材が野積みされています。丸太なので、ころがらないようにしっかり杭で押さえてあります。製材した板も、間にスペーサーを置いてちゃんと積んであります。

5)荷車と白い牛が二頭います。
 この雰囲気と、構図からして何か元になる絵があるように思いますが・・・??
セガンティーニの作品ではないかと思います。あるいは、複数の作品からイメージが再構築されているのではないかと思います。


6)鍛冶屋があります。石炭(コークスかも?)がたかれていて、
金床(かなどこ) を置いてハンマーを持って作業をしているおじいさんがいます。 このシーンもどこかの絵で見たような気がするのですが、不明です。
小屋の外には石炭置き場があり、スコップや運搬用のバケツと手押し車がしっかりあります。

7)鍛冶屋の庭では、テーブルの上で車輪を直しています(作っている?)
槌ややっとこなど、工具もしっかり描かれています。

8)三人がかりで大きなハンマーを使って加工しています。小さく描かれていますが、力強い構図です。実は元になる絵があります。
スペインを代表する画家ゴヤの作品「鍛冶場(The Forge)」が、元の絵です。

9)家にはドアの所に片方の車輪が置いてあります。窓の下にはビン入りの箱があります。これは何??・・・ワイン??

10)ビンの脇には、猫が一匹。・・・何をしているのでしょう。

11)樽作りの工房があります。多分ワイン用の樽だと思います。
  樽に使う板は直線ではなくカーブしていなければなりません。そのための専用工具らしきものを使って加工しています。

12)カーブさせた板を使って金属製のタガ(帯鉄)をかけている人がいます。

13)槌を使ってタガを調整している人がいます。完成間近?後ろには色々なサイズの帯鉄がつるされています。完成した樽も三つ。

下のHPで樽作りだけでなく、ワイン作りの工程も見ることができます。
http://www.fujikonishi.co.jp/notre_vignoble/le_rapport_de_junko_arai/main2.html
サントリーのHPでウイスキーの樽ですが詳しいです
http://www.suntory.co.jp/whisky/museum/know/jukusei/koubou/koutei2.html
色々な工具も見てみましょう
http://www.japandesign.ne.jp/HTM/REPORT/paris/12/index2.html

14)庭には、樽に使う板が並べてあります。乾燥させているようです。

15)お母さんアヒルの後ろを五匹の雛がついて行きます。カモの仲間はこうして、卵からでて最初に見たものの後を本能的について歩くようになっています。中の一匹だけ雛の色が違うようです。これは「みにくいアヒルの子」のお話からですね。
アンデルセン原作の童話。1843年発表。
 アヒルの群の中で生まれたひな鳥が、他のアヒルの子に似ていないからという理由でいじめられる。周りのアヒルからあまり辛く当たられるので逃げだし、他のところでやはり醜いといじめられながら一冬を過ごす。疲れ切ったひな鳥は、殺してもらおうと白鳥の住む水地に行く。いつの間にやら大人になっていたひな鳥はそこで初めて、自分はアヒルではなく美しい白鳥であったことに気付く、という物語

ここで、菊池寛の翻訳したお話を読むことができます。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000019/card42386.html

16)麦藁(干し草?)の山があります。牛の餌か、牛小屋の敷き藁でしょうか。
 藁の山にフォークがあり、ニワトリが乗っかっています。
 このニワトリは、ひょっとしてみにくいあひるの子に出てくるニワトリかな?

17)家の側面には、藁を保管する場所が作ってあります。外にこぼれないように、板で押さえてあります。運ぶための篭やフォークが置いてあります。

18)とても縦に細長い小屋があります。扉も細長いですね。いったい何の小屋でしょう??

19)シーソーで遊ぶ子どもたちがいます。
ブリブリューゲルの「子供の遊戯」の中にもシーソー(樽揺らし)をしている子がいました。

20)子ヤギが2頭仲良くしています。
子ヤギの所の柵は出入りできるように扉がもうけてあります。

21)牛が6頭のんびりしています乳牛のようで、しっかり乳房が描き込まれています。
色からすると、ジャージー種だと思います。イギリスのジャージー島原産の牛です。一般的なホルスタイン種に比べて、小ぶりで乳量も少ないのですが、乳脂肪率とタンパク質含有率が高いという特徴を持っています。
このシーンは、北イタリアのアルコ生まれのセガンティーニの「アルパインの牧草Pascoli alpini」からかもしれません。アングルは違うのですが、牛の雰囲気と配置がよく似ているよう思います。

22)旅人の所に、樽が6個あります。こんなところで何に使うのでしょう???

23)T字路のところで、おばさんが二人おしゃべり中です。片方のおばさんはバケツを持っています。何を運んでいるのでしょう。足下には牛乳缶が3本あります。荷車もあるので、これでどこかへ運んでゆくのでしょうか。集めに来る人を待っているのかな。
さて、その荷車ですが、これもセガンティーニの「ウォータトラフの牛Kuhe am Wassertrog」の荷車ではないかと・・

24)製材所の動力源の水と小川が合流して流れてゆきます。川岸は石垣でしっかりと造られているようです。川はどこへ流れてゆくのでしょうか??

25)洗濯桶手元に置いて、シーツを洗っているおばさんがいます。随分無理な格好で洗っています。大丈夫かな。

26)川の中で何かしている男性がいます。小魚でもすくっているのでしょうか?(どじょうすくい?まさか!)あるいは、砂金取り??あんまりそんな状況でもなさそうですけど。

27)小川の向こうに、果樹と思われる木が飢えられています何の木でしょう?

28)干し草の山が3つあります

29)小川に架かった一本橋に両方から山羊が来て譲り合わずにさあ大変。
これは、ラ・フォンテーヌの寓話の「二匹の山羊」というお話から描かれているそうです。
「細い川に橋はたった一枚の板、橋の真ん中あたりで相手に譲ろうとせず、後へ退かぬそのために二匹とも谷川へどんぶりと。」
というお話だそうで、動物の姿をかりて、人間を風刺しているようですね。
ラ・フォンテーヌはイソップなどのほかの作品から題材を得て寓話を仕立てたそうです。

「旅の絵本の秘密」には、イソップ寓話集から「道をゆずらない橋の上の山羊のあらそい」からだとあります。

旅の絵本2表

シーン7ヨハネによる洗礼(p13〜14)
0)旅人は・・・ヨハネによる洗礼を受けるキリストの場面にやってきました。

1)聖書物語 前ページより川が流れ来ています。そこでは洗礼者ヨハネによって洗礼を受けるキリストがいます。
 イエスは自らが宗教活動にいるにあたって、先輩の予言者であるヨハネの洗礼を受けます。聖書によれば、ヨハネはイエスの威厳に打たれて、一端は断りますが、イエスの希望で洗礼を施すことになります。この後、イエスは荒野の40日と呼ばれる修行をします。

2)2頭の馬と鋤を使って畑を耕す二人の男がいます。
  これは北イタリアのアルコ生まれのスイスの画家セガンティーニの「The Plow(耕作)の絵からです。

by forest-doorさん
セガンティーニは大原美術館で「アルプスの真昼」を見て、とてもひきつけられました。
澄みきった空の青が印象的でその澄んだアルプスの空気や光までもが絵から伝わってくるようです。何度か行き過ぎてはまた、絵の前に戻り…を繰り返し、アルプスの草の1本1本までが細かく描かれているのに見入ってしまいました。
セガンティーニは山に魅せられ、そこに生きる人々を描き、晩年には象徴主義的な作品を描くに至りました。サン・モリッツのセガンティーニ美術館には未完の大作「生」「自然」「死」が収められています。
彼の略歴を見ていると7歳で母を失い、その後父に捨てられて12歳で感化院へ。そうした子ども時代からの寂しさ、孤独感といったものが、後年の作品に影響を与えているのかなと思えます。

シーン4逃避行の7)のはこの馬と同じようです。

3)炭焼きをしています。まずは材料になる木をピラミット状に立てて積み上げています。

4)積み上げた木に土(?)をかけて空気を遮断しています。

5)完全に火が回って炭化した後、棒を使ってかき出しています。
煙突のようなものが見えません、これでうまくいくのでしょうか??

6)できた木炭を袋詰めにしている女性がいます。
 この一連の工程は、同時進行しているのではなくて、異なる時間のできごとを同一画面に表現していると思われます。

10)ページの上のところでは、十字架を掲げて埋葬しています。
 シーン6水道橋の「禁じられた遊び」は、墓作りの遊びでしたが、ここでは本当の埋葬です。たくさんの人が集い悲しんでいます。
これはクールベの「オルナンの埋葬」の絵からです。庶民の葬儀を等身大以上の大きさで描くという、当時としては非常識の内容です。

by forest-doorさん
クールベの絵の「オルナン」とは人名ではなく地名で、クールベの生まれ故郷でした。(^^;
そして、この絵は万国博覧会に展示を拒否された問題作として知られています。
神々や英雄を描く代わりにこのような大作に田舎町の葬式に集まった名もなき人々を描いたのは、当時では考えられないことだったからです。
出る杭は打たれるといいますが、でもクールベは打たれっぱなしではないんですよね。
出展拒否にもめげず、博覧会会場の近くで「ギュスターヴ・クールベ作品展」と銘打って個展を開いています。
それまで、画家1人きりの個展とは慣習としてなく、初めて開催された個展といわれているそうです。

11)右の木の下では、スケッチをしている男の人がいます。安野さんでしょうか?
 いや、埋葬のシーンを描いているのですから、クールベさんかな。

12)ホルスタイン種の乳牛が6頭のんびりしています。シーン6の牛の配置と全く同じです。
右の2頭と牧場の柵は、何かの絵であったと思うのですが、元の絵が思い出せません。

13)牧場の隅には、牛のための干し草の山があって、ここではフォークが刺してあります。

14)牧場の納屋には荷車が格納してあります。これで干し草をはこんだりするのでしょう。納屋の外に、壺のようなものが見えます、何に使うのでしょうか?
この荷車も、セガンティーニの『Wassertrog』に描かれている荷車とそっくりです。

15)二頭立ての馬車で袋詰めの荷物が着いています。袋の感じからすると、炭焼き場から木炭を運んできたのでしょうか?

16)荷車を窓から眺めている女性がいます。

17)荷車から荷物を下ろして運ぶ男の人とそれを指示している女性がいます。この二人、シーン5では、同じ体勢で木を積んでいました。

18)箕を持って立ている人がいます。この人も、シーン5では同じ体勢で木を運んでいました。
 そして、この人、ミレーの絵の「箕をふるう人」です。
切手にもなっていました。

19)荷物が運び込まれている小屋は、水車小屋のようです。とすると、運ばれているものは、炭ではなくて小麦の可能性もあります。

20)小麦袋(炭袋?)の前にある筒状のものは何でしょう?

21)小川の脇には桶があって、水が入っています。小川に降りられるように、階段が作ってあります。そこにいるアヒルは、みにくいアヒルの子が、一匹になって泳いでいるのかな。まだ白鳥にはなっていないません。

22)水車小屋の向こうに、猫とニワトリとアヒル(みにくいアヒルの子)がいます。イジメに耐えかねて牧場を抜け出して、おばあさんの家のネコとメンドリと一緒にいるときのようです。ここでもあまり親切にはされません。
と考えていたのですが、
「旅の絵本の秘密」には、「いぬとにわとり」(石井桃子作・左、水車のそば)とあります。
ところが、この話・・・登場するのはおばあさんとイヌとニワトリのようなのです??
旅の絵本はネコにしか見えません・・・それにアヒルが出てこないようなのです(絵本を確認していないので、お持ちの方は情報ください)
ネコについては、石井さんがこの話を書くきっかけになったエピソードはネコの話だったそうですからいいとしても・・・??

23)右下の家の所では若い二人がデート中です。シーン5でのラブレターで、うまく心が通じたようです。

24)デートに興味があるのか、窓から子どもがのぞいています。

25)家の中へ荷物を運び込んでいる女性がいます。シーン5で同じ格好で荷物を運んでいました。

26)p13の森の中にがいます隠し絵です
どんな意味があるのでしょうか?


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