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前のシーン

シーン17(p33〜34)
0)旅人は・・・駅のある街にやってきました。
どこの駅がモデルなのでしょうか、頭端式ホームで、蒲鉾型の駅舎を持っています。ここは始発・終着になる駅で、文字通り、ターミナル駅のようです。

 写真は、前のシーンのホルステン門から歩いてすぐの所にあるリューベック駅です。どうも、下にも紹介した、塔の写真も含めて、リューベック駅がモデルだろうと思います。

forest-doorさんから
大きな駅が描かれています。
ヨーロッパではこうした屋根が高い駅舎が多いですね。堂々としていて、旅情気分を高めてくれます。
バカンスに行く人や、恋人や家族との別れを惜しむ人、出迎えにきた人、いろんな人のざわめきや足音、かばんを転がす音なんかが満ちあふれています。
この描かれた駅が実在の駅かどうかは分かりませんが、アーチ状の天井と窓を見ていると、駅舎を改修したパリ・オルセー美術館を思い出します。
吹き抜けで明るい光の、とても贅沢な空間の中、すばらしい作品に次から次へとお目にかかれる美術館です。


1)パレードのシーンの3)にいた赤と白の鞄を持った女性の二人連れと、2)の大きな荷物を脇に抱えている男性がここにいます。

2)鞄を持った二人に、ハンカチを振ったり両手を挙げている子どもが二人います。

3)その隣の男の人、屋根の上に片足をかけています。これでは、空中に浮いているのでしょうか。・・・だまし絵ですね。

4)軍服を着て、メガホンを持ち太鼓をたたきながら、社会鍋をぶら下げて寄付を募っている人がいます。「救世軍」の人のようですね
救世軍については
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%91%E4%B8%96%E8%BB%8D

5)三角屋根のお店は何の店でしょう?小さいけれど、紙切れのようなものをたくさんぶら下げているようですが。宝くじ売り場??キオスク??

5.1)駅のところに建っている8角形をしていると思われる塔があります。これはパレードのシーンで0.5)の棟と同じです。
  左の写真はリューベック駅の外観です。この塔が、絵本のモデルになっているのだと思います。

6)子どもが二人手をつないでいます。2)の二人の友達でしょうか
7)緑の帽子で、小脇に何か抱えているベルのようなものを振っています。新聞売りでしょうか?

8)緑の帽子をかぶった煙突そうじを頑張っている男の人がいます。
9)隣の屋根の所に酒屋さんの看板が掛かっています。パレードのシーンの7)の看板のようですが・・・グラスの中にだいぶ注ぎ込んであります
絵描きさん・・・書き換えたのかな。はしごを持った絵描きさんが、ペンキの缶を持って去ってゆきます。
10)窓にエプロンをした女の人が見えます。
11)紅白のテントの下は、オープンカフェになっているようです。当然、アルコールもでるんでしょうね。
12)隣は銅製?の鍋やヤカンを売るお店のようです。良いものを売っているのかたくさんのお客さんが集まっているようです。エプロンをつけて、ヤカンを持っているおばさんがお店の人なんでしょうか。?

13)おや、引っ越しのようです。牛車で運んできた荷物を下ろしているようです。おばさんが指揮しています・・・・シーン5の5)で荷物を積んでいた人たちです。

14)噴水の前で記念撮影をしている夫婦がいます。このステッキの男性は、シーン11の市庁舎の前10)で杖をついていた紳士では無いかという説もありますがいかがでしょうか?ちょっと体格が違うかな?
15)駅前に馬車と御者?が着ています。新婚旅行の二人がこの駅にきたのでしょうか、あるいは、さっきの引っ越し荷物は新婚さんたちのもので、ここが新居かな??

16)ポーターさんが荷物を台車に載せています。それを見ている男女と子どもの荷物でしょうか。
17)木箱を台車から降ろそうとしています。左の人が指図しているようです。
18)旅人の向こう側にある、チューブを看板にしているお店は歯磨き粉のお店でしょうか
19)お店の前を乳母車を押すお母さんがいます。乳母車の中の赤ちゃんは立ち上がれるくらい大きいようです。車の中には荷物も載せています。
20)杖をついたおじいさんをエスコートしている女の子がいます
21)帽子を脱いで握手をしながら挨拶をしている人がいます。お別れの挨拶でしょうか、出会いの挨拶でしょうか。
22)旅人の手前に、窓から身を乗り出している女性がいます。右側の外階段を上がっている女性に声をかけているようです。
23)二軒の家の煉瓦の煙突が向かい合うように建っています。この煙突、屋根の向きや建物の壁の向きからして不自然な向きに立っています。そしてその向う筒状の煙突が1本あります。
24)ホームには一輪車で荷物を運ぶポーターさんがいます。
25)駅員さんが白い旗を持って立っています。
26)ホームの街灯の下でポケットに手を突っ込んでいると男性と両手に荷物を持った女性は、パレードのシーンの42)で門の右横で、横を向いている男性とパレードに背を向けて両手に鞄を持っている女性のようです。

27)赤い鞄を持った親子が歩いています。
28)駅員さんと話している男の人がいます。
29)列車の向こうに、カンテラを持った乗務員が歩いています。
30)機関車が引き込み線の方へ向かっています。
31)機関車の向こうにあるのは、給水塔でしょうか?。


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シーン18レーダー門(p35〜36)
0)旅人は・・・駅を離れた列車と共に、古い門の有る場所にやってきました。

forest-doorさんから
P.35-36にかけてページの中ほどに描かれている門はドイツ・ローテンブルクにあるレーダー門のようです。レーダー門は14世紀末に建てられていて、門の左右には税関と見張り小屋がありました。
ローテンブルクは城壁に囲まれた街で他にもクリンゲン門、ガルゲン門、シュピータル門、コボルツェラー門、ブルク門などがあります。これらの門をくぐって街に入るとそこには中世そのままの街が広がっています。

レーダー門の写真です。門と両脇の建物の屋根の形はそっくりです。バックの塔は、絵では下部だけ描かれて、廃墟の塔のように表されています。

1)p35の左下、エプロンをした女性が犬と散歩をしています。この女性、前(駅)のシーンの10)で窓の中に見えていた女性です。

2)酒屋さんの看板が掛かっています。ビンがほとんど空っぽになって、グラスが一杯になっています。 
2つ前のパレードのシーンで描かれ、次の駅のシーンで半分注がれ、この看板まで連続物になっていました。

3)赤ちゃんを抱いた人に、左側の女性が話しかけています

4)7人の人が道路工事をしています。一番左の人が左の方を指さして二人に話しかけています。「仕事が終わったら、そこの酒場に飲みに行こうか」なんて話しているのかな?
道路工事の現場では、なんだかいやに角々したものがごろごろしています。ひょっとしてこの道は石畳で、敷石を掘り出しているのではないかと思います。
ここの人達の動きですが、ミレーの「二人の掘る人」からではないかと思います。
この二人を、前からと後ろからに分けて描かれたのではないでしょうか
ついでにその左の人もミレーの「Digger Leaning on his Spade」絵からだと思います。

5)駐車場のマークがあって、新婚旅行の馬車が門の後ろに半分隠れるように駐車されています。
この馬車は最初にシーン10の11)に現れ、次の市庁舎のシーンの11)では馬が2頭になり、次の結婚式のシーンでは空き缶やヤカンを付けて新婚旅行用の馬車になり、次の城のシーンでは新婚旅行先で待機、シーン17駅のシーンで空き缶ははずして待機していたようでした、そして今はここに駐車中です。はて、御者と馬は何処へ行ったのでしょうか・・・

6)門の前に子牛を連れた男の子と女の子がいます。
7)二人の男がパラソルの下でお酒を飲んでいます。その上には酒場のはずなのに、Kingと書かれ、王冠と衣服をつけた王様がいます。二つ前のパレードのシーンにいた裸の王様が、だまされていたことに気がついて服を着た姿かな。

8)ロバに犬に猫にニワトリがいます。「ブレーメンの音楽隊」ですね。この4匹は、実際には上下に重なってはいないようですが・・・。犬だけはロバの上にのっかっているようにも見えます。だまし絵です。
「ブレーメンの音楽隊」のお話は(青空文庫)
http://www.aozora.gr.jp/cards/001091/files/42314_15929.html

9)大きなテーブルで「宴会中」です。ブレーメンの音楽隊では、夜に盗人達が飲んだり食べたりしているところを、4匹が協力して脅かしますが。今はまだ昼間だし、相手は泥棒でもないので脅しても・・・だめですが。

10)宴会?のテーブルを、自転車に乗って犬をつれてのぞき込んでいる男性がいます。
11)樽が二個とたくさん材木が置いてあります。樽の上の壁にSの字状の模様?あるいは道具のような物が有ります。これは、なんでしょうか?

12)屋根に煉瓦の煙突が2本と筒状の煙突が有ります。これは、一つ前の駅のシーンの23)の煙突と上部だけですが重なります。ここでは、筒状の煙突は鍛冶用の煙突になっています。

13)蹄鉄の看板が掛かっていて、ここは蹄鉄を替えるお店のようです、馬が新しい蹄鉄を付けてもらっています。この馬と手前の茶色の馬は新婚旅行用の馬車を引いていた二頭の馬のようです。御者もここに来ています。御者は茶色の馬を手放す相談をしているようにもみえます。

14)おじいさんをエスコートしている女の子がいます。この二人、駅のシーンで歯磨き粉の店の前にいました。二人の上に下がっている看板が何か不明です。

15)p36の右端にカバンを持った男と小太りの男が話しています。これは、駅のシーンのプラットホームで駅員さんと話していた男の人のようです。

16)門の横に3人の子どもがいます。持っていた赤い風船を離してしまったようです。風船は手の届かないところに行ってしまい、子ども達はただただ見上げるだけです。
 赤い風船といえば、1956年カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した『赤い風船(Le Ballon Rouge)』というフランス映画があります。まるで、風船に意志があるかのように振る舞う不思議な映画です。

風船遊びはいつからあるのでしょう。少なくともゴムの出現以降のこと思っていましたが・・・。ブリブリューゲルの「子供の遊戯」の中に風船遊びがありました。ただし、ゴム風船ではなくて、新鮮な豚の膀胱を膨らませるというものですが

17)旅人の向うに、踏切が揚がるのを待っている荷馬車がいます。
この荷馬車・・・何かの絵に描かれていたようにも思うのですが???不明です。

18)踏切のところで赤い旗を持って踏切番をしている人がいます。この人、駅のシーンでは25)で白い旗を持ってプラットホームにいました。

19)踏切番さんの後ろの小屋は番人さんの待機しているところのようです。ドアを開けたままにして出てきたようです。この小屋は、駅のシーンで29)のカンテラを持っていた人の前に有った小屋と同じ物ではないでしょうか・・・煙突が増えていますけれど。
 
20)蒸気機関車が走っています。「1977」のプレートはこの絵本が描かれた年の1977年を表しています。

21)汽車に乗った子ども達が手を振っています。その子達に線路脇からハンカチを振り手を振っている2人の子どもがいます。この二人は、駅のシーンでは)2)で女の人達に手を振っていました。

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シーン19風車(p37〜38)
0)旅人は・・・風車の有る農園の中を通り過ぎてゆきます。

1)風車を目指して馬にまたがり槍を構え、サンチョ・パンサを従えて、「勇敢」にも突撃しているのは、ドン・キホーテのようです。

1.5)風車の入り口の階段と扉は前のシーン18)の踏み切り番の小屋の階段と扉に重なります。

2)風車に粉ひきに向かうのでしょう荷車が向かっています。この荷車は、前の門のシーンの17)で踏切を待っていた荷車のようです。
 荷車の後輪がサイロの屋根にかかっているようです。すると、この馬車は空中に浮いていることになります。だまし絵です。

3)左端に、畑仕事をしている人と、子ども二人が手を振り合っています。子ども二人は、前のシーンで列車に手を振っていたハンカチを振り手を振っている2人の子どもと重なります。

4)畑では「おおきなかぶ」の一場面が描かれてます。
おじいさんが、甘い大きなかぶを作ろうとかぶを植えました。
そして、とっても大きなかぶができました。
おじいさんは「うんとこしょ どっこいしょ」と抜こうとしますが抜けません。
おばあさんを呼んで来て、おばあさんがおじいさんを引っぱって、おじいさんがかぶを引っぱりますが、それでもかぶは抜けません。
おばあさんを孫が引っ張り、それでも抜けないので・・ただ今、犬を呼んでいます。ロシア民話の「おおきなかぶ」です。
 駆け付けてきた犬は、前のシーンのブレーメンの犬でしょうか。
 脇に2列に植えられているのも、かぶのようです。普通サイズのかぶが5つ抜いてあります。

5)前の門のシーンの3)にいた赤ちゃんづれの二人のうち、左側の人がが赤ちゃんを抱いて、高い高いをしています。

6)馬を連れた男の人がいます。
7)畑の柵に腰掛けた子どもが二人います。男の子は何かを指さしています。何を???

8)ツルハシを持った男の人がいます。ツルハシは何に使ったのでしょう?。前の門のシーンの道路工事からの帰りでしょうか?。
 下に部分をのせた、『牛群の帰り』の絵の中にに、何か長い棒を担いだ人が描かれています。そこから来ているのかも知れません。


9)畑をトラクターで耕しています。
耕されている畑をよく見ると、なんだか模様が隠れていると思いませんか?
ただ、それが何か分かりません。
あるいは、これを、少し斜めから見ると、本当に凸凹しているように見えるので、安野さんはその効果をねらっているのかな? 芸が細かいですねぇ。

10)赤い帽子をかぶり杖を持った若者が、乳牛を小屋に連れ帰っています。
 この牛追いは、ピーテル・ブリューゲルの『牛群の帰り』からヒントをえたものではないかと思います。

11)豚小屋には、3匹の豚がいます
12)赤いチョッキの男の子が子牛を引っ張っています。子牛がなかなか言うことを聞かず苦労しています。この男の子と子牛は、前のシーンで門のところにいました。

13)荷車に乗せてたくさんの干草が運ばれています。右の方には、四角く押し固められた干草も有ります。

14)干草のところには、ホークを抱えてくつろいでいる男の人がいます。お疲れさまです。
15)飼料(?)を車に積んで運んでいる女の人がいます。
16)納屋にはトラクターが納められています。耕すための道具も有るようです。
17)煙突の8羽のニワトリに餌をやっている女性がいます。
18)煙突の横の壁に5本の棒が立てかけてあります。先がとがらせてあるのでクイとして使うのだと思うのですが、何処に使うのでしょう。

19)台車の上には牛乳の缶がのせられています。飼っている乳牛から絞った物でしょう。それを若い男女が馬車に運んでいます。ところで、このは、前のシーンの蹄鉄屋さんにいた馬のようです。農場に転職したんですね。
ところで、この馬が新婚旅行の馬車の馬だとすると、この若い男女・・・実は新婚の二人が、仲良く働いている姿というのも有りかなと思います。

20)p38の道に、男の人が3人と犬が描かれています。これはクールベの「出会い(こんにちは、クールベさん)」という絵画からです。
ミレーの作品の中にこの絵にヒントをえて描かれたと思う作品があります。クールベさんそっくりの人に道案内をする羊飼いの画です。

美術愛好家のブリュイヤスが召使いを連れて、右の人物、クールベを出迎えているところを描いた絵です。
安野さんはクールベがお好きなんでしょうか…1巻だけで、何作品も登場してます。
by forest-door


21)赤い風船が飛んでいます。これは、前のシーンで子ども達が手放してしまった風船のようです。


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シーン20再び森へ(p39〜40)

0)旅人は・・・「黒い森」の迫る農場から草原へ向かっています。

1)黒い森のお花畑には、道草を食っている赤ずきんちゃんと、それを森蔭から伺っているオオカミがいます。
グリム童話の世界です。本来、グリムの話の舞台は、このように鬱そうとした森が街の周囲に広がっている自然条件ですね。
 それが、今では開発のためにヨーロッパの森はほとんど失われてしまいました。その上、酸性雨のために、広大な面積の黒い森が枯れてしまったと言います。現在はどうなっているのでしょうか?

2)若者が馬を引いて牛乳を集めて回っています。シーン19の19)の続きのようです。

3)少女が柵の扉を開けて、牛乳を集めている若者を見ています。知り合いなんでしょう。
 彼女は手が口のところに行っていますが、飴をなめているのでしょうか?指をすっているのか? 

4)犬が走っています。「ブレーメンのおんがくたい」の犬で、「大きなかぶ」でも駆け付けていた犬のように思います。

5)エプロンを着けたおばさんが牛乳缶を2つ用意して馬車を待っています。
 それにしても、前のシーンの農場に比べて、牛乳缶が少なすぎるように思いますが??

6)乳牛が赤い帽子の若者に連れられて、小屋から草原にでかけています。シーン19の10)にいた、若者と乳牛ですが、それぞれの牛は180度向きを変えて描かれています。
若者は、前シーンでは持っていなかった、水筒を肩から掛けてています。p40で2頭並んでいる手前の牛はカウベルを着けています。前のシーンでは反対側になるので、着けていたかどうかが確認できませんが。

7)p39の左テーブルのうえで丸太を切っている人がいます。後ろの壁際に積み上げている様子からすると薪ということでしょうか?
まっすぐ積み上がっていますが、端が崩れないように、ちゃんと押さえの棒が打ち込んであります。さすが、安野さんきっちりしています。

8)荷車にたくさんの麦わらを、おろしています。前のシーンでも干草(麦わら?)を降ろしている人がいました。どんなところから持ってくるのでしょう?

9)黄色に塗装されたトラクターを修理(?)している男性がいます。

10)牛小屋には、風見鶏が揚がってますが。庭にいるニワトリのようにも見えます。ちょっとだまし絵。ニワトリ言えば前のシーンでは9羽のニワトリが餌をもらっていました。

11)ドラム缶が2本。その脇にはトラクターで使う道具が置いてあります。
トラクターで使う道具は、前のシーンで実際に畑で使われているものと、やはり前のシーンで赤いチョッキの子の背後の小屋の前に有る物と、ここにある物と同じ物でなく、それぞれ描き分けられています。それぞれの使用目的が具体的に分かると良いのですが。

12)赤いチョッキの子が子牛にニンジン(?)を与えています。

13)橋の上には肉をくわえて、水の中に映った自分の姿を見ています。イソップ寓話の「欲張りな犬(犬と肉)」ですね。
イソップの話だと、この後、水に映った犬がくわえている肉も欲しくなってほえてしまいます。そして自分のくわえていた肉までも失ってしまいます。・・・過度の欲張りをいさめる教訓です。「影をつかんで、実体を失う・・・それは、幻影を求め、実際の幸福を危険にさらす者たちの宿命である。」ともありました。
 安野さんがこの場面に、この教訓を持ってきたのはそれなりの意味があるのだろうと思います。背後にはミレーの絵の世界が広がります。その姿は、過度の欲望を抑え、しっかりと大地に足を着けた敬虔な農民の姿ですから。

14)麦わらの山とそれを運ぶ荷車そして落ち穂拾いをする人達。ミレーの「落ち穂拾い」の世界です。

落ち穂拾いは、背景にある荷車に山積みされたわらに象徴される「正規の」収穫にたいして、その収穫が取り残した物(落ち穂)を拾い集めるという厳しい生活を象徴します。しかし、そのことは貧しい人々に落ち穂拾いを権利として認めていた事をも意味します。イソップの欲張りな犬(それは、私たち自身かも知れません)のあり方と、対比される生き方のようにも思います。

8)の藁や前のシーンの干しわらは、ここから持って着ていたようです


15)羊の群と羊飼い脇には牧羊犬がいます。ミレーの「羊飼いの少女」です。

16)赤い風船は空高く昇って彼方へ消えゆこうとしています。

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シーン21晩鐘(p41〜42)

0)旅人は・・・旅の友であった馬をおいて、静かに夕焼けの中を去ってゆきます。
 
1)子どもが二人去りゆく旅人に手を振っています。
 この二人は、駅のシーンで二人の女性に、門のシーンで汽車に乗っている子どもに、風車のシーンで畑のおじさんに、と手を振り続けていた二人です。
万感の思いを重ねて、去りゆく旅人に手を振っているように感じます。
「旅の絵本の秘密」には、二人のこどもは旅人に向かい「シェーン、カムバーク」と言ってるのだそうですが・・・アメリカ編の間違いではないでしょうか?

2)空一面に染まった夕焼けの中を鳥たちが帰っています。
空を飛ぶ鳥たちも、ミレーの絵に似たものが有りました。

3)静かに祈る夫婦がいます。ミレーの「晩鐘」です。

何とも簡潔で広々とした世界です。ページごとに本当にたくさんのエピソードを詰め込んできた安野さんが、この簡潔さです。ひたすら晩鐘の持つメッセージに深く共感しながらこのページの表現があると思います。ミレーの晩鐘は、その背後に広がる村の静けさを十分に感じさせるものです。安野さんの絵は、この情景の中に祈る二人を小さく描くことで、その広がりと静けさを強調しています。それはある意味ではミレーの晩鐘を超える表現になっているようにも思います。

この最終シーンに深い意味をもたせようと安野さんが色々と積み上げていたことに気づきます。
@子どもたちの手を離れ、次第に空へ気持ちを誘う赤い風船
A繰り返し繰り返し、手を振り続ける二人の子ども
Bミレーの絵・・・・落穂広い、羊飼いの少女
Cこのような心の準備の上で、最後に晩鐘の絵
D晩鐘の教会の位置には、旅人が描かれています。晩鐘を鳴らす教会の位置に旅人を配置。祈る二人は、その晩鐘の中で祈っている。
このように見てくると、安野さんが第1巻に込めた深い意味が感じられます。
ますますこの絵本が好きになりました。

forest-doorさんから

あとがきから、著者の安野さんのことばを紹介したいと思います。

「道はどこまでもつづいておりました。丘を越え、川を渡り、果てもない緑の牧草地に添っておりました。いたるところに森や泉がありました。森には鹿が棲み、流れにはマスが泳いでおりました。
… そのような市から市、国から国へ、迷いながら、はるばる旅をしました。
…私は見聞をひろめるためではなく、迷うために旅に出たのでした。そして、私はこの絵本のような、一つの世界を見つけました。
 それは、公害や、自然破壊など、誤った文明に侵されることなく、どこまでも緑のつづく、つつましくも美しい世界だったのです。」

「旅の絵本」 1巻には全頁にわたって緑が描かれています。街中であっても、木がゆったりと葉をひろげています。この絵本を見ていて、時間がゆったりながれているような、木々をゆする風の音が聞こえてきそうな気がするのは、そんな緑のおかげだったのかなと思います。

そして「つつましくも美しい世界」の言葉に、はっとさせられます。「つつましさ」ということが最近、忘れさられているような気がしてしょうがありません。物質的に豊かになるために、人は自然に対してのみならず、同じ人に対しても傲慢になってしまっているかのように思えます。
「つつましくも美しい世界」、そんな世界はこの絵本の中だけなんでしょうか…
いや、きっとまったくなくなってしまったわけではないと私は信じています。
そうですよね、安野さん…


ミレーの3大名画(晩鐘、羊飼いの少女、落穂拾い)についてのHPです
http://www.ntv.co.jp/millet/midokoro/2-1.html
この第1巻は、全編に渡ってクールベとミレーの絵が参考にされています。とりわけミレーの絵が多いです。最初のシーンがミレーの「グレヴィユの断崖」を参考にされているとすると、最初も最後のシーンもミレーということになります。有名な絵だけではなく、今回初めて見た(意識した)絵がたくさんありました。ミレーは農民の生活の細部までも描いた人ですから、とりわけ田舎の生活を描くときには大いに参考にされたということでしょう。次のイタリア編にも何度も出てくるので、安野さんがミレーを大好きだということもあるのでしょう。

さて、第1巻(中欧編とされています)の最後のシーンは、馬をおいて歩いて去っていきます。これまでの全7作品の内、歩いて去ってゆくのは、中欧編だけです。どこへ去ってゆくのでしょう。行き先は、第2巻のイタリア編の北イタリアだと思いますから、ここは、東フランスのあたりということでしょうか。
2011年に山川出版から発刊された安野光雅のムック本が有ります。
そこの中では、このシーンは、フランスとされていました。

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「裏扉」
旅人が橋を右から左に渡ってゆきます。
どこか見覚えの有る絵です。最初の扉に描かれていた絵と同じです。
でも、何か変です、何か違います。
扉の絵と見比べてみましょう。

左右が逆になっています。扉が物語の中に入って行こうしているのなら、この裏扉は、物語の世界から出て行くということでしょうか。

これは、扉の作品を「裏焼き」にして使っているのだと思いますが、楽しい演出です。
「旅の絵本の秘密」には、INとOUTの表現だと書いてあります。
※「裏焼き」は。フィルムの裏表を逆にしてプリントしてしまうというもので、仕上がった写真は左右が逆になります。石川県の各地で使われていた白山を紹介するポスターやパンフレットで、裏焼きの写真を長く気がつかずに使っていて、ニュースになっていました。文字などと違って風景などは裏焼きに気づきにくいものです。


ドイツの城・大聖堂・町並みなどなど膨大な情報があります、この旅の絵本に描かれている風景が・・・・
http://hvanilla.web.infoseek.co.jp/

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